「iPodの父」が支援するAdvanoの駆動時間を10倍にするバッテリー部品

ルイジアナ州ニューオリンズ拠点のスタートアップであるAdvanoは1850万ドル(約20億円)を調達して、シリコンスクラップを原料にした今よりも強力で小さくて長持ちするバッテリー部品を製造しようとしている。

そのテクノロジーは、ルイジアナのスタートアップが著名なアクセラレーターであるY Combinatorへの参加を許されるほどで、戦略パートナーである三井金属と「iPodの父」として知られるデザイナーで、スマート・サーモスタット会社NestのファウンダーでもあるTony Fadell(トニー・ファデル)氏の注目を浴びるにふさわしいほどの革新だった。

三井のSBI Material Innovation Fundとファデル氏の投資会社であるFuture Shapeに加えてPeopleFund、Thiel Capital、Data CollectiveおよびY Combinatorが計1850万ドル(約20億円)を出資して、Advanoの製造能力拡大とシリコン負極材料の販売を支援する。

「シリコンをリチウムイオン電池に付加することで駆動時間を10倍にできる。『バッテリー不安』が解消されたところを想像して欲しい。電気自動車は増え、CO2は減る。しかし、そのための4つの重要な課題である材料の膨張、サイクル寿命、コストおよび迅速な製造スケーラビリティーを同時に解決できた者はいない」とファデル氏は声明で語る。「Advanoのバッテリー技術者たちはその取り組みに最初に成功した。Advanoが持つ複数の技術を応用した斬新なアプローチによって、製造メーカーが必要とするバッテリーのカスタマイズを可能にする。さらに彼らは、持続可能なシリコンを原料にすることで、あらゆるものを電化するという我々の変遷が環境に与える影響とも戦っている」

Advanoは、最新の材料科学プロセスを活用することでシリコンスクラップの再利用に成功した。Advanoのファウンダー・CEOであるAlexander Girau(アレクサンダー・ジロー)氏はルイジアナ州のテュレーン大学在学中に初めてこの技術を開発した。

Sila Nanotechnologiesをはじめとする他社も、膨大な資金を投入してバッテリー製造にシリコンを活用する方法を開発している。

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基本的にバッテリーは、電流が送り込まれる「正極」、電気を伝える「電解質」および電流が送り出される「負極」からなる。リチウムイオン電池の場合、正極は一般にグラファイトで作られるが、グラファイトには充電量に関係する制限がある。グラファイトの代わりにシリコンを用いることで、バッテリーが蓄積できるエネルギーが増え、必要な材料が減り、その結果コストとサイズを小さくできる、とAdvanoは言う。

ジロー氏は、分子工学の研究を開始すると、まず遺伝子治療に取り組んだ。最初に開発したテクノロジーは、ナノ粒子の表面機能化を生み出し、粒子にまったく新しいふるまいをさせるものだった。

革新的だったのは、その生物学研究を材料科学とバッテリー開発に持ち込んだことだ。機能性ナノ粒子をつくり、シリコンに付加するためには通常いくつかの段階が必要だが、CEOによると、Advanoはそれを一段階プロセスで行う方法を開発した。

Advanoにとっての鍵は、反応性ナノ粒子をシリコンスクラップが破砕される時にシリコンに付加することだ。このプロセスを用いることで、同社は機能性シリコンの製造が可能になったとジロー氏は説明した。

「どんなリチウムイオン電池の性能も改善できる。我々はまず消費者向け電池メーカーと仕事をしている。生産量が少なく、早く顧客に届けられるからだ」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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