「Starlink衛星通信端末は製造コストの半値以下で提供」とマスクCEO、黒字化までもうしばらく時間がかかりそう

Starlink(スターリンク)が黒字化するまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。この衛星ネットワークを利用して世界中に高速ブロードバンドを提供するというSpaceX(スペースX)のプロジェクトは、顧客にベータ版キットを約500ドル(約5万5300円)で販売しているが、実際にはそれ以上の製造コストがかかっていると、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは米国時間6月29日のインタビューで語った。

このベータ版キットには、顧客が衛星に接続してブロードバンドアクセスを可能にするユーザー端末(アンテナのようなもの)が含まれている。「率直に言って、現時点ではその端末で損しています」と、マスク氏は語った。「この端末のコストは1000ドル(約11万500円)以上するので、当然ながら私がその費用を補助しています」。SpaceXではそれと同じ機能を持ちながら、より低コストで製造できる次世代端末の開発に取り組んでいると、マスク氏は続けた。

このプロジェクトに対するSpaceXの全体的な投資額は、当初は50億〜100億ドル(約5530億〜1兆1055億円)の間になると見られていたが、長期的には300億ドル(約3兆3164億円)に達する可能性があるとのこと。それは同社が今後も改良を続け、携帯電話通信網の技術に対して競争力を維持していくためだと、マスク氏は語った。

バルセロナで現地時間6月29日に開催されたMobile World Congress(モバイルワールドコングレス)のバーチャル基調講演で、このように語ったマスク氏は、Starlinkの現在の状況について他にも詳細を述べている。このプロジェクトは今後12カ月以内に50万人以上のユーザーを獲得できる見込みで、約12カ国で運用されており、それは「毎月増えている」とのこと。

SpaceXは衛星バージョン1.5の打ち上げも間近に控えているが、これはレーザーによる衛星間リンクを備え、高緯度や極地での継続的な接続を可能にする。来年にはバージョン2の打ち上げが予定されており「性能は格段に向上する」とマスク氏は強調した。

望遠鏡で観測すると光の筋に見えるStarlink衛星(画像クレジット:SpaceX)

このプロジェクトでは、2つの大手通信会社との提携に取り組んでいるというものの、マスク氏はその社名を明かさなかった。

Starlinkは、SpaceXが成し遂げた再利用可能なロケットの飛躍的向上抜きには考えられないプロジェクトだ。「しかし、まだ私たちは、Starship(スターシップ)の開発によって、これを次の段階へと進化させる必要があります」と、マスク氏はいう。この新型ロケットは、迅速に再利用できることを目指している。つまり現在の航空機のように、一度の飛行を終えたら地上でそれほど時間を要せず、すぐに再発射が可能になるということだ。

Starshipは、月面に基地を建設したり火星に都市を建設するというマスク氏のビジョンの鍵となるものだ。SpaceXでは今後数カ月以内に、Starshipによる初の軌道への打ち上げを試みたいと考えていると、マスク氏は語った。SpaceXは、Starshipの打ち上げシステムと地上との間で「高データレートの通信を実証する」ために、Starlink端末を新しい宇宙船に搭載して飛行させる承認申請を、連邦通信委員会(FCC)に提出した。

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カテゴリー:宇宙
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画像クレジット:Mobile World Congress

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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