「WOVN.io」がスマホアプリ対応版の多言語化ツール「WOVN.app」提供開始

ウェブサイトの多言語化をたった1行のコード追加で実現するツール、それが「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」だ。サービスを運営するWovn Technologies(旧ミニマル・テクノロジーズ)は7月30日、スマホアプリに対応した多言語化ツール「WOVN.app(ウォーブンドットアップ)」のベータ版提供を開始した。

Wovn.ioについてはTechCrunch Japanでも何度か紹介してきた。2014年秋に開催したTechCrunch Tokyo 2014 スタートアップバトルでは、PayPal賞、マイクロソフト賞を獲得。既存の1言語のサイトがあれば、簡単に多言語化できる点が特徴だ。言語ごとにページを用意したり別サーバを立てる必要はない。

Wovn.ioでは、翻訳したいページのURLを管理画面に入力すると、翻訳すべきテキストが抽出され、リストアップされる。テキストは機械翻訳で一括して翻訳することが可能。またリストの1つ1つを任意で訳すこともできるので、誤訳を修正することや、固有名詞や意訳など独自の翻訳コンテンツを用意することもできる。サイト内で共通して頻出する用語は用語集に登録することで、同じ言葉に翻訳してくれる。

対応する言語は約30言語。翻訳先の言葉が分からず自分で校正できない場合は、管理画面からプロの翻訳者に直接翻訳を依頼することができる。1語5円、通常24時間から48時間で翻訳が可能だそうだ。

翻訳が完了したら保存・公開を行って、サイトとWOVN.ioを連携させる。サイトとWOVN.ioとの連携は、1行のコードをHTMLに追加するだけ。JavaScriptのコードスニペットのほか、PHPやRubyのライブラリなどにも対応している。

料金体系は、ページ数やPV数を制限し、基本機能を無料で利用できるWOVN.ioと、大規模サイト向けに個別見積りで機能拡張にも対応する、有料版のWOVN.io PRIMEの2通り。エイチ・アイ・エスや東京急行電鉄など大手を含む1万以上の企業で導入されているという。

Wovn Technologies代表取締役の林鷹治氏によれば「一般向けの公開サイトだけでなく、企業内のワークフローシステムなど、日本に在住して働く外国人向けの利用も増えている」とのこと。カスタマイズが可能な有料版は、テーマパークのチケット予約サイトなどでの利用事例もあるそうだ。

小売やチケット販売などで有料での利用が伸び、売上ベースで前年比400%を超える勢いだと林氏は言う。その背景について「多言語化SaaSはニーズが高い。(サイトなどの)プロダクトが大きければ大きいほど、多言語化は困難だ」と林氏は説明する。

「多言語化では翻訳費用だけでなく、システム対応費用も発生する。WOVN.ioを使えば、1つのシステムで言語を切り替えて国際化することができ、開発コストを下げることができる」(林氏)

既存サイトに後付けで多言語ページが用意できるWOVN.ioでは、大規模サイトで従来発生していた数千万円単位の開発コスト、数カ月単位の開発期間を圧縮できる。「大きな組織ほど効果が評価され、大きな予算で利用してもらっている」と林氏は述べる。

「CDNサービスのAkamaiや、DBをベースにソフトウェア製品を出すOracleのように、大手企業の多言語化されたサービスの後ろでは、実はどれもWOVNが動いている、という状況に持っていきたい」(林氏)

そうした構想を強化すべく、今回新たに投入されることになったのが、スマホアプリ向けの多言語化ツールWOVN.appだ。

若年層を中心に、PCよりスマホなどスマートデバイスの存在感が増していること、スマホ内ではブラウザよりスマホアプリのほうが利用時間が長いという調査もあり、WOVN.ioを利用する顧客からもアプリの多言語化についての相談が増えていたという。そこで開発されたのが、WOVN.appだ。

7月30日よりクローズドベータ版として、まずはiPhoneアプリ用SDK(Swift)を提供開始。今秋には正式版としてローンチする予定だ。

「モバイルアプリは言語のローカライズをするだけでも、いちいちApp StoreやGoogle Play ストアに申請が必要だが、SDKをアプリに組み込むことで、WOVN.ioと同様に管理画面から翻訳ができるようになる」(林氏)

対応する言語はWOVN.ioと同じく、約30言語。これから開発する予定のアプリだけでなく、リリース済みのアプリに組み込むことも可能だ。「EC」「予約」「ニュース・メディア」「SaaS」「交通」などあらゆるアプリに組み込むことができるという。

「アプリの多言語運用は本当に大変。翻訳データをエンジニアに渡してビルドしてアップし、ストアへ申請する、ということをアップデートの度にやらなければならない。特にECサイトなど(コンテンツの多いプロダクト)では大変で、独立した部署や別会社を作るぐらいの体制で対応しなければならない。そうした企業でWOVN.appを使えば、運用コストが下がるのではないか」(林氏)

林氏は「WOVN.appは動的アプリの多言語化に強いサービスだ。まずはウェブサイトとアプリの両方があるプロダクトから、利用をお勧めしたい」と話している。

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TechCrunch Japan

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