【コラム】創業者は自らのアイデアを自分から切り離す必要がある

ファウンダーはみんな、自分の会社が自分たちなしで繁栄することを願っているが、その意識に基づいて行動することの覚悟は、昨今の市場で交わされる最もぎこちない会話の1つである。結局のところ、ファウンダーへの賛美(および彼らをロックスターのように扱うマスコミの変わらぬ習慣)には一定の正当性がある。ビジョンを持つ人たちは、本質的に興味深い人間であり、人が他人の家に寝泊まりしたり小鳥がさえずるようなアプリで日々生の意見を公表したりすることに賭けるほど狂気に満ちている。

この緊張感、ファウンダーをスタートアップ成功の導き手として位置づけると同時に、あらゆるビジネスにとって長命の鍵は継続にあるとことを認識させる社会の緊張感こそ、最近、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が発信した数行からなるTwitter(ツイッター)退職のツイートが私の目を引いた理由だ。

「企業が『ファウンダー主導』であることの重要性についてはさまざまな意見があります」とドーシー氏は書いた。「結局それは著しく制限的で、『単一障害点』であると私は信じています。この会社が創業時のことや創業者から離れられるように、私は懸命に取り組んできました」とドーシー氏は付け加え、「企業は自立して、ファウンダーの影響や指示を受けないことが極めて重要」で彼が信じていることを付け加えた。

ドーシー氏は、私がそれ以来ファウンダーや投資家に話し続けている話から会話を始めた。アイデアをファウンダーのアイデンティティから切り離し、会社が本質的に創設者とつながっていると感じないようにすることが、会社にとって健全である。ただし帰属についての真剣な会話が必要だ。

2021年11月、私はファウンダーと創業チームメンバー、アドバイザー、投資家、エンジェル投資家、および初期従業員の間の当事者意識とインセンティブの違いを明確化することの重要性について書いた。今週は、支配構造が時間とともに変化すること、そしてファウンダーの肩書がある日「無担当副社長」になるかもしれないと理解することが、なぜ重要なのかについて話す必要がある。

雑草時代を忘れる

「ある時点で、ファウンダーは『無』担当副社長(VP of nothing)になります」とFloodgate(フラッドゲート)のパートナーであるIris Choi(アイリス・チョイ)氏がTechCrunch Equityポッドキャストの最新回で述べた。「最初はプロダクト責任者でありエンジニアのトップであり、一般社員であるともに、未解決問題を収拾し、隙間を埋める人物でもあります」。

アイデンティティクライシスは企業が成長ステージに入ったときに始まる。そしてファウンダーは、徹夜組を引っ張る向こう意気の強いエンジニアから、有能な人材の採用と「列車が間違いなく定刻に発車」することに責任をもつビジョナリーへと変わっていく。

「ある程度、ファウンダーの地位を雑草より高める必要があります」とチョイ氏はいう。

Fractional(フラクショナル)の共同ファウンダーStella Han(ステラ・ハン)氏は、最近Y Combinator(Yコンビネーター)を卒業し、シードラウンドで数百万ドル(数億円)を調達した。彼女のビジネスは、他人や友人がオーナーシップを手に入れやすくすることがすべてで、それは社内でそれを実行する方法について、共同ファウンダーとよく話し合わなければならないことも意味していた。

「共同ファウンダーになると、非常にアクティブにプロダクト業務を実行しますが、リーダーたる幹部は、他の人々に権限を与えて手綱を握り、行動を起こして会社を成長させるのが仕事です」と彼女は語る。「オーケストラの指揮者が必要な時、重要なのはそのビジョンとそのマジックを伝え、チーム一丸となって経験を作り上げ、聴衆と消費者に届けることです」。

会社のスケールが大きくなるにつれて、有能なファウンダーを中心にスマートな幹部チームを作り始めることに問題はないが、そのアイデアを考えた人物に向かって、そろそろ別のCEOに席を譲る時期がきたというのは逆説的だ。言い換えれば、まだ身を引く準備が出来ていない時何をするのかだ。

結局それはインセンティブアラインメントに行き着く、とハン氏は考える。

「エゴは人間の大きな部分であり、おそらくそれが、自分にとって正しいと思えるけれど会社全体にとってはそうではない行動を起こしてしまう理由でしょう」と彼女は話し、ファウンダー(および既存あるい新しく入ってくる幹部全員)は「全員が合わせるべき、より総合的で大局的なインセンティブが何であるか」を見つけ出す必要がある、と付け加えた。

そして、ファウンダーは「重要な場面で苦境に陥ったとき、自らの身を遠ざけて全体にとって最良のことをする」必要があるとハン氏は語った。

会社の中で権力の分散化をやりやすくするためには、投資家が小切手を書くやり方にも大きな変化が必要だ。現在は、アイデアを持っていて、そのアイデアによる功績を認められることが、起業家にとってベンチャーキャピタリストに売り込む最も効果的な手段だ。そのインセンティブに代わるものは何か?

デューディリジェンスをひとひねりする

「あらゆる会社が、スターチームを集めて次のPayPal Mafia(ペイパル・マフィア)になるエコシステムを作るスターファウンダーを欲しがっています」とHum Capital(ハム・キャピタル)のCEO・共同ファウンダーであるBlair Silverberg(ブレア・シルバーバーグ)氏はいう。「このビジョンを達成した会社はほとんどありません。その理由は、新しいビジネスを始めたりそこに参加した時、チームが何をするか、起こした行動がビジネスにどんな結果をもたらすのか、自分たちが生んだ勝利の所有権を関わった個人がどう受け取れるのか、それらが明確になっていないからです」。

シルバーバーグ氏は、Web3.0の約束をいくつか説明した。そこではプロセスを形式化することで、ビジネスの各部分を誰が所有し、誰が実行するかを透明に見通せるようにすることが求められている。しかし起業家たちは、変化が起きるためには、それが主流派になるまで待つ必要はないと考えている。

「すぐれた実績をもつヘッジファンドマネージャーのコンセプトは、ビジネス運営の世界でも十分考慮に値します」と彼はいう。「もし同じような実績が存在する世界を作れたなら、ビジネスだけでなく人々のレベルでも、社会の資産を適材適所に使うことができます」。そして、2021年11月に書いたように、アイデア経済においては、勝利したビジネス戦略を誰かが思いついたかの証拠が重要になる(法的にも財務的にも)。

ただし、Zoomでの売り込みの中で。成功する会社(個人ではなく)に賭けたいアーリーステージ投資家は、共同ファウンダーの雇用する能力、考えを変える能力、そして立ち去るべき時期が来たことを理解する能力を推進する必要がある。

アーリーステージフィンテックファンドであるVentureSouq(ベンチャー・ソウク)のゼネラルパートナーSonia Gokhale(ソニア・ゴケイル)氏は、自分が投資する際にも、1人のファウンダーではなく、共同ファウンダーの会社を探す、なぜなら予定外の事態が起きた時のリスクを分散できるだけでなく、1人が他方を埋め合わせられるのはよいことだからだと語った。

「当社の創業チームの多くは、2人のファウンダーがうまくやっていけるかどうかに焦点を合わせたデュー・ディリジェンスに時間をかけています。相性はどうか?シナジーはあるか?直感を受けるか?」と彼女はいう。「そして、少しでも不安を感じたら、それは赤信号です」。

企業が自立することは不可欠だというドーシー氏の意見は、あらゆるファウンダーがいつか会社を去らなくてはならない、という意味とは限らない。むしろ、Sounding Board(サウンディング・ボード)のChristine Tao(クリスティン・タオ)氏が指摘していたように「優れたリーダー」の自覚だけでよいのかもしれない。

「CEOもただの人間です。そして私たちのアイデンティティの多くが会社に没頭しているとしても、私たちは完璧ではありません」と彼女はいう。「企業は進化し、変化していくるので、違うリーダーシップが必要になることもあります」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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