【コラム】地球を救い、利益を上げるために地球の最大の課題に投資する

それを持続可能性と呼ぼうが、ESGまたは気候技術と呼ぼうが構わないが、お金を稼ぎながら良いことをしようとする動きが世界を席巻していることは間違いない。

ブルームバーグによれば、世界の持続可能性への投資資産は、2020年には35兆3000億ドル(約4000兆円)に増加している。これは「世界をより良い場所にする」ことで利益を得ようと管理されている3ドル(約340円)分に対して約1ドル(約110円)分に相当する。

こうした資金がベンチャーキャピタルに流れ込む中で、世界は地球を温暖化の摂氏1.5度以内に保つために、気候関連の最も困難な問題のいくつかを解決しようとしている。PwCのレポートによると、投資家は緊急性を感じているようだ。気候技術への投資が、2013年から2019年の間に、VC全体よりも速いペースで成長している。

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なお、この記事では「インパクト投資」という用語が、社会的責任投資(SRI)や環境、社会、ガバナンス(ESG)といった他の用語とおおよそ同じ意味で使われていることをお伝えしておく。本質的に「インパクト」とは「世界をより良い場所にする」ことだ。

しかし、そこにはインパクト投資の問題がある。見る人の目に良いものが映っている場合、正確には何が良いものなのだろうか?

例えばフィリップ・モリスは年間7000億本の紙巻たばこを製造していながら、投資家を惹きつけるESG目標を目指して努力している。目眩しの論理、だが要点はおわかりだろう。

Hans Taparia(ハンス・タパリア)氏はこれを美しく説明している

多くの投資家の考えに反して、ほとんどの格付けはESGファクターに関連しているだけで、実際の企業責任とは何の関係も持っていません。代わりに、彼らが測定するのは、ESGファクターによって企業の経済的価値がリスクにさらされる度合いです。例えば格付け会社が、ある会社に対して、その会社の汚染行為が適切に管理されているかその会社の財務価値を脅かさないと見なした場合には、重要な排出源でありながらも高いESGスコアを付与する可能性があります。

手に入るのは測定したものだけだが、公的公正の世界では、その測定がひどい誤解を招く可能性がある。それでも個人投資家たちは、巧みな「ESGファクター」のマーケティング活動を受けて、そのファンドに投資するだろう。

だが、最大のインパクトを与えるために最善の努力をしている本物の投資マネージャーたちもいる。

インパクトを示すために、そうしたマネージャーはIRISなどの標準的な測定フレームワークを採用している。しかし、インパクト測定を適用するのは非常に難しいことで知られている。それらはまた、測定すること自体が非常に難しく、多くは本質的に主観的であり、それらを改善しようとするソリューションと比較して測定するのに費用がかかるのだ。

さらに、肯定的な結果を生み出す複数の要因が存在する可能性があり、それらの結果を改善する際の特定の原因や結果を識別することはしばしば不可能だ。その結果、マネージャーは次善の策に頼ることになる。すなわち行動や実装を測定するのだ。しかし、目立つ指標を変化のための指標ととり違えてしまうことは容易に起こり得る。

例えば遊んでいる子どもたちが回転させることによって、地下水を汲み上げるメリーゴーランド装置のPlayPumps(プレイポンプス)は、その好例だ。PlayPumpsの設置数、それを使用している子どもの割合、もしくは汲み上げられた地下水の量は、コミュニティがポンプのおかげで、きれいな水にアクセスしやすくなっているどうかを必ずしも示していなかった。

これらはそれでも変わらずに財務実績を提供しなければならないファンドマネージャーや企業経営者による発表であることを忘れてはならない。

ドルの価値とは異なり、影響の測定は曖昧で真の基準がないため、投資家が投資ポートフォリオの社会的影響を比較したり、相対的なパフォーマンスを評価したりすることはより困難になる。これにより、パフォーマンスベースの出資をインパクト測定と結び付けることもほぼ不可能になる。

インパクトは具体化するのに時間がかかり、多くの場合、ファンドまたは会社による影響の範囲外にある。四半期ごとを生き抜く金融の世界では、選択を行う必要がある場合には、ドルを最大化することが常に簡単な選択となる。

それでもインパクトが存在できる特別な場所がある。それはマネージャーと企業の間のインセンティブが一致し、特定の測定値はそれほど重要ではなく、測定期間が真の違いを生むのに十分な長さで考えられるような場所だ。

そうした特別場所とは?アーリーステージのベンチャーグループだ。

Creative Venturesでは、インパクトを機会を見るレンズとして使用している。インパクトが大きければ大きいほど、問題も大きくなり、市場機会と経済的利益も大きくなる可能性があることを私たちは理解している。

インパクトは問題がある場所に存在するからだ。高度なインパクト測定に悩まされている世界で、私たちのアプローチは、EVのコストが20%低く、40%遠い場所まで行くことができる世界を想像している。ガンを治せる世界。すべてのデータセンターのエネルギー消費量が半分になる世界。

そして、これらの企業の1つだけが成功しただけでも、世界がはるかに良い場所になるとは思わないだろうか?

編集部注:本稿の執筆者Champ Suthipongchai(シャン・スティポンチャイ)氏は、労働力不足、医療費の増加、気候危機の影響に取り組むスタートアップたちに投資する、ディープテックVCであるCreative Ventures(クリエイティブ・ベンチャーズ)の共同創業者でゼネラルパートナー。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文: Champ Suthipongchai、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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