【コラム】失望させられる投資家の8つの典型:創業者が投資家のアーキタイプにはまってしまうのを防ぐ方法

筆者は先に、すべての資本が平等に創出されているわけではないこと、そして私たちが超潤沢な資金調達の時代に生きていること、多くの点で創業者にとって今までで最高の時代であることを論じた記事を執筆した。

このような環境では、どの投資家も、独自の価値をどのように付加できるかについてよく練られたピッチを持っている。高成長スタートアップの創業者であるということは、これまでに経験したことのない多くの状況に遭遇することを意味しており、ビジネスを構築する際にパートナーとなる投資家を選ぶことは鍵となる決定事項である。このコンテキストでは、排他的な付加価値の約束が深く共鳴する。

驚くべきことに、ほとんどの創業者は、投資家から受け取る実際の価値が必ずしも約束されたものと同じではないことに気づく。筆者はすばらしい投資家たちと仕事をする機会を得てきた。彼らは創業者たちと優れた思考パートナーシップを築いている。彼らは企業の軌道を変える決断をする上で非常に価値があり、有能な人材を惹きつける力を持ち合わせている。

ベンチャー投資は見習い的なビジネスであり、私は偉大な投資家から学ぶ機会を得るたびに謙虚になる。しかし、創業者たちと話をしてみると、彼らが選んだ投資家たちは、資金提供後にさまざまな典型的行動を示しているようだ。そのすべてが価値を付加するのでなく、価値を損なうものとなっている。

創業者たちが価値の約束を越えたものを見据えるのを手助けするという精神に基づき、創業者たちが投資を受けた後に経験する投資家との関係の一般的な典型についていくつか掘り下げてみよう。創業者も投資家も、ユーモアのセンスを持ってこれらの典型を読み解いて欲しい。「シリコンバレー」にまつわる秀逸のエピソードのように、効果を意識した誇張も多少含まれているが、それほど多くはない。

失望させられる投資家の8つの典型

ナルシスト:ナルシストは完全に自己中心的であり、自分たちのファームがいかに優れているか、そして自分たちがいかに優れているかなど、すべてが常に自分たちに関するものである。彼らは自分自身に夢中になっていて、創業者たちが実際に何を求めているのか、何を必要としているのかを理解するために時間をかけることはない。ナルシストの中には全盛期をとっくに過ぎてしまっていて、単に過去の成功に乗じようとしているだけの人もいるかもしれない。あなたのスタートアップに価値をもたらすことはないだろう。

ハンマーを持った子ども:この投資家は「私がGoogleにいたときはこういうことをやっていた」とか「Airbnbの役員だったとき、こんなことをやった」などとアドバイスする。彼らはハンマーを持っていて、目にするすべての問題は、打ち付ける釘のように見えている。その針は一様で、彼らが自身のプロフェッショナルなキャリアで経験した意義深い経験の中でしたことと同じ方法で打てると思っている。彼らには、問題にアプローチし解決する方法が他に10通りあるかもしれないという視点が欠けている。特に破壊的な「幹部をクビにする」ハンマーを持っている投資家もいる。

知ったかぶり:ミーティングに参加しているが、創業者を含めて誰の意見も聞きたくないと思っている投資家だ。「私は彼らのシリーズCの前にFacebookに投資している。ゆえにあらゆる答えを持っている」。創業者や他の取締役会メンバーを尊重していないため、重要なリレーションシップと取締役会の力学を損なっている。また「OKR」や「経常収益」といった彼らが特に好む特効薬を、そのビジネスや状況に適しているかどうかを理解せずに持っている可能性もある。

人の言いなりになる人(別名おべっか使い):この投資家は、決してあなたに厳しいメッセージを伝えることはない。彼らは次の会社への推薦を望んでいるので、常に創業者と友達になろうとする。ミーティングにふらりと立ち寄り、ディナーや豪華なスキー旅行に招待してくれる。しかし、難しい局面になると「創業者が望むものは何でも正しい答え」という姿勢を取り、思考のパートナーとはならず、価値ある視点をもたらすこともない。

サービスルーター:分厚いRolodex(ローロデックス:回転式名刺ホルダー)を持つ人を求めているなら、サービスルーターがある最適な場所に来たことになる。CFO、またはセールスマネージャーが必要?サービスルーターは人を教えてくれるが、卓越性を目指すこともなければ、例えば新しいセールス担当VPにどんな良さがあるか創業者が理解するのを助けることもない。サービスルーターはポートフォリオ企業間の再循環を得意としている。問題は、その人材はある企業では良い仕事をしたかもしれないが、あなたのスタートアップには適さないということだ。

Needy Ned(ニーディ・ネッド、誰かの注意を引こうと飽くなき追及をする人のこと):この投資家は、その過程で彼らが付加価値を生み出しているかどうかに関係なく、あなたの会社が行うすべてのことに関わろうとするので、あなたをイライラさせるだろう。これは、彼らが取締役会に参加した最初の会社ということかもしれないし、彼らはベンチャーファームの若手であるかもしれない。あなたが自分のビジネスの運用上の詳細をすべて話していないのに、彼らが驚いて憤慨したとき、Needy Nedを相手にしていることがわかるだろう。Needy Nedのもっと厄介なバージョンは、単に関わりたいということに留まらず、創業者の手からハンドルを奪おうとして、自分たちのやり方で物事を進めようとする人だ。

数字に執着する人:この投資家にとって、ビジネスは大きくて複雑なスプレッドシートであり、すべては数または比率にまとめることのできるものだ。彼らは通常、プライベートエクイティ、投資バンキング、または成長投資に由来しており、一般的に、レベニューチャーン、ARRや「マジックナンバー」といった用語を使用する。しかし困ったことに、彼らは数字の背後にあるストーリーを理解しておらず、数字を動かすために何が必要なのかも把握していない。

ドライブバイ(次の場所へ移動したり別のことをするために手短に済ませる意):投資家があなたのところに資金を送ってきた後、あなたの邪魔をしないように望むなら、ドライブバイはあなたのために存在している。彼らはマシンを取引している。あなたとの取引が成立する前であっても、すでに次の取引を行っている。2年が経過する頃には、彼らは他に10件の取引を完了しており、創業者や企業としてあなたに興味を持つことはない。取締役会に1、2回出席するかもしれないが、出席中はメールをチェックして、最新の取引を確定させるだろう。

創業者への私の思い

残念なことに、創業者たちは日々このような典型にはまっている。あなたが資金調達の選択肢を検討する際、留意すべき点をいくつかお伝えしたいと思う。

人はファームよりもはるかに重要である。ブランドを買うのではなく、人を手に入れよう。その人に対してデューデリジェンスを行って欲しい。創業者たちと話し合い、投資家があなたに提供するリファレンスを、あなた自身のバックチャネルを使って掘り下げる。あなた、共同創業者、既存の取締役会の間でパーソナリティとスタイルが一致していることを確認しよう。さらに、投資家の知識と過去の経験がビジネスと一致していることを確かめることが重要である。

その人とファームの両方があなたのビジネスを本当に理解していることを確認する。これを評価する良い方法の1つは、彼らがあなたのプロダクトにどれだけ勤勉であるか、そして彼らがサードパーティによって行われたコールトランスクリプトをレビューするのではなく、個人的に顧客と話をしているかどうかを調べることだ。投資家が、投資前にあなたが築き上げているものを真に理解するための時間を取らない場合、投資後にそれを理解し、さらに重要なことに、価値ある思考パートナーになる可能性はどのくらいあるだろうか?

誰もが好天時の船乗りである。ただし、失敗や小さなミスがあると(拙著『Anticipate Failure』で指摘しているように、それは間違いなく起こる)、最悪の行動が彼らの醜態を助長してしまう。重要な決定を下す必要があるときや、状況が厳しくなったときに、その人がどのように行動するかを検証しよう。検証手段としては、その投資家に自分たちの投資先の中で最も業績の悪い会社を紹介してもらい、うまくいっていないときに彼らがどのように行動していたかを直接聞く方法がある。

付加価値のエビデンスをチェックし、定量化が可能な方法でタームシートに記入する。彼らが人材採用を支援すると言ったら、最初の2四半期の目標を書いてもらう。彼らが顧客を支援できると言ってきたら、彼らが追加することにコミットする収益額を正確に尋ねてみよう。もし彼らが、自分たちのブランドが独立系取締役を惹きつけるというのであれば、彼らが配置した取締役に話を聞いてみて欲しい。

時間をかけて投資家との相性を見つければ、優れたものを構築するチャンスを最大化することができる。取締役会の中でたった1人の悪い投資家であっても、あなたの成功の可能性を大きく損なう可能性があり、残念ながら私はそのようなことを何度か見てきた。

約束や評価、小切手のサイズに惑わされないようにしよう。これらは一時的なものであり、その輝きから生まれるシュガーハイは長くは続かない。目標に目を向け、投資家を賢く選定して欲しいと願っている。

編集部注:Lak Ananth(ラック・アナント)氏は、グローバルなベンチャーキャピタル企業であるNext47の創業CEO兼マネージングパートナー。10億ドル(約1155億円)の評価額を超えて成長を支援した複数の企業の役員を務めている。

画像クレジット:nitiwa / Getty Images

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(文:Lak Ananth、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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