【コラム】女性ファウンダーにとって資金調達は悲劇的に困難である

「資金調達は女性ファウンダーにとって悲劇的に困難であり、黒人女性ファウンダーにとってはいっそう困難だ」。

これは大胆かつ、批判的でさえある発言だ。(私のような)スタートアップを率いる女性にとって2022年がどうなるかを思案する議論のなかで私が発した。

デベロッパーツール分野でごく稀な黒人女性CEOの1人として、私はテック業界で起きている大きくて集団的な社会問題についてコメントを求められることがよくある。荷が重いことではあるが、こうした問題を提起することの意義を認識し、できるかぎり発言している。しかし、断固とした答えを言いたい気持ちの一方で、私は多くの疑問を抱えている。

技術革新 < 社会的発展

テクノロジーの世界では、次のデジタル製品に関わり、業界レベルの製品を形作ることでって先行者利益を得ることを誰もが切望している。これは、資金調達を目指しているときには特に重要だ。そして、私たちはデベロッパーツール分野で目覚ましい転換をいくつか目撃してきたが、VC支援による資金調達の状況を踏まえると、私は時として、テクノロジーの成長と我々が真に必要としている社会的発展とをまぜこぜにするリスクに晒されていることが心配になる。

偉大な女性デベロッパーファウンダーは何人もいる。Jeli(ジェリ)のNora Jones(ノラ・ジョーンズ)氏、Thistle Technologies(シスル・テクノロジーズ)のWindow Snyder(ウィンドウ・スナイダー)氏、Launch Darkly(ランチ・ダークリー)のEdith Harbaugh(イディス・ハーボー)氏などの名前が挙がる。すばらしい女性エンジェルやVCもいる。この人たちは私が業界のリーダーと目している女性たちであり、資金を求め、あるいは与えることの障壁を乗り越えながら、自分たちの信念を貫いてきた人たちだ。

開発ツールの分野で名を成そうとする女性たちの努力にも関わらず、現実はといえば開発ツールの世界は圧倒的に白人男性が支配している。その性別と人種の基準に当てはまらない我々が注意を引くために必要なエネルギーと時間は、往々にして持続可能ではない。

女性が成功するために戦わねばならない今の状況を認識し、公平な場を作る必要があり、そのためにはいくつか厳しい質問を投げかける必要がある。

真剣に受け止められるための戦い

私たちは、自分たちと同じような外見の人たちから資金調達できるようになりたい、違いますか?しかしながら女性投資家の多くは、彼女たちが支援したい女性ファウンダーと同じくらい、真剣に受け止めてもらうために戦っている。もし私たちがみな同じ社会的制約に直面し、自分たちの正当性を証明するために戦っているなら、おそらくリスクに対して同じ嫌悪感を持っているだろう。

このことは、女性投資家が、特に女性ファウンダーへの投資において、小さなリスクを選び、その結果同等の男性投資家よりも扱えるファンドが少なくなる、という悪循環を呼ぶ。

リミテッドパートナーは女性VCをもっと支援すべきであり、ファンドは男性に与えるのと同じ柔軟性と自由度を女性にも与えるべきだ。女性VCたちがパートナーへと昇進し、意味のある小切手を手早く書けるようになるべきだ。

私自身、社会的な力を得た女性エンジェルやVCたちが力を合わせて女性ファウンダーを支援した目覚ましい結果を目の当たりにしてきた。彼女たちが作りだしたコミュニティや姉妹愛的な感覚には、業界を変える潜在力がある。これこそ、我々がしっかりと掴み拡大していく必要があるものだ。

根深い心理的障壁を乗り越えるための戦い

今日、女性はファウンダーとしてもVCとしても、資金調達ラウンドを進めるプロセスで積極性が低いという根強い思い込みがある。女性ファウンダーの私は、同等の男性ファウンダーの方が多額の資金を早く確定させる能力があると言われてきた。女性の方がリスクを嫌い、プロセスを進めるのが遅く、要求が少ない、という意味だ。

では、何が女性たちをためらわせているのか?答えはおそらく最も明白なものに違いない。私たちは実際、資金調達プロセスの中で却下されるリスクがより大きい。さらに私たちは、概してVCコミュニティとのつながりが少なく、そこにある「VCのルール」(何をして、何を言い、どう振る舞うか)は複雑で直感に反するものが多い。良いコードを書くための明確なガイドラインのようなわけにはいかない。

数字との戦い

たとえば出資者候補が1000人いて、自分たちようなテクノロジーを提供している会社に焦点を当てているのはそのうち10%だけだったとする。さらに、自分たちのいるステージに投資するのはそのうち2%だけで、そのうち自分たちと同じ哲学をもっているのは5%にすぎない。そして、実際に話ができるはそのうちの何パーセントかにすぎない。さて、そういう議論に踏み入ろうとして、最終的には人が人に売り込むのだということを踏まえると、物足りないことの多い交渉に照準を合わせなくてはならない。

あなたは次の10年、自分のビジネスをこの投資家に託すことになる。つまり、あなたはよい数字を残そうとする一方で、同時にVCの履歴や性格や考えも理解しようとしている。以前はどのようにお金を出していたのか?相手の過去のビジネスに共感しながら、自分たちのビジネスが投資に値することを説得できるのか……30分以内に?

では、女性はどうやって資金を勝ち取れるのか?

シンプルな答えはこうだ。自分たちだけではできない。プロフェッショナルな努力がみなそうであるように、資金探しは社会のネットワークの力を利用することが理想だ。女性は生まれながらにしてベンチャーキャピタルの世界で成功するために必要なものをすべて身につけている、といえるならこんなによいことはないが、女性にはは基本的ネットワークや性別、人種の広がり以上の仲間と支援が必要だと私は信じる。

利害関係者全員が女性のために戦うゲームに参加して、有色人種の女性たちが遭遇する困難に焦点を当てる必要がある。働く女性ファウンダーと女性投資家たちの潜在的危険を生き残りのマインドセットで認識し、彼女たちが資金獲得の議論に参加し、強い力で会社を売り込むために必要なコーチングとガイダンスを提供するべきだ。

簡単にいえば、資金調達の両側にいる女性たちの能力と可能性を無条件で信じる必要がある。

そして、世界中のファウンダーと投資家に向けた私の最後の質問はこうだ。

私たちの戦いに加わる気持ちはありますか?。

編集部注:本稿の執筆者Shanea Leven(シャネー・レブン)氏は、デベロッパーを支援し、開発チームによるコードベースの理解を高めるためのデベロッパープラットフォームCodeSee(コードシー)の共同ファウンダー兼CEO。

画像クレジット:wakr10 / Getty Images

原文へ

(文:Shanea Leven、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。