【コラム】快適なメタバースの実現に欠かせないバーチャルライフの基本的構成要素

Meta(メタ)のミッションは、仕事、ソーシャルメディア、ゲームなどの異なる環境をシームレスに接続し、人々が仮想空間で実質的に生活して働くことができるようにすることだ。

これは明らかに、私たちのネットワークに重大かつ持続的な影響を与えるだろう。単に不具合なく絶えず接続されている必要があるというだけではなく、完全に没入型のコンテンツを4Kや8Kでシームレスに、低遅延かつ最小のラグでストリーミングすることが求められているのだ。

再起動、OSやアプリケーションのロード時間、ネットワークの混雑など、我々がシームレスな仮想環境にいると感じられなくなるような、あらゆる要素に気を散らされることなく、ある体験から別の体験へと移ることができなければならない。

これらを実現することを考えると、バーチャルライフとは火星に移住するのと同じくらい難しいことのように思える。

しかし、新しいバーチャルワールドへの旅を、摩擦のないものにすることは可能だ。そのためには、バーチャルライフに必要な基本的な構成要素を、確実に積み上げる必要がある。

今の私たちには、メタバースを快適に住める場所にして、バーチャルな自分たちが単に生存できるだけでなく繁栄できる場所にするチャンスがあるのだ。

帯域幅が重要

メタバースを大規模に展開するには、多くの帯域幅が必要だ。水が生命体の構成要素であるように、帯域幅なしに我々がメタバースで機能することはできない。メタバースでは、膨大な帯域幅をむさぼるアプリケーションのさまざまな要求に応えることができる高性能な接続性が必要だ。

そのような帯域幅が広く普及し、かつ手頃な価格で利用できなければならない。今のところ十分なサービスを受けていない、あるいは接続されていないコミュニティをサポートするためには、そのことが必要だ。仮想世界のビジョンは、誰もが平等に創造と探求の機会を得られることが中核として語られることが多い。しかし、メタバースでそれを実現するためには、まず現実の世界での接続性を確保する必要がある。

低遅延は空気のように必須

帯域幅は1つの重要な要件だが、相手のアバターが反応するまで数秒、あるいはそれ以上の時間がかかるようでは、メタライフは一気に苛立たしい不快な場所になってしまう。我々はすでに、スポーツのライブストリーミングやオンラインゲームで遅延にイライラすることがあるが、仮想世界に完全に没入しようとすると、この問題はさらに悪化する。

リアルタイムな反応が求められるネットワークでは、通信の遅延を減らし、信頼性を向上させるエッジコンピューティングのような技術がますます重要になってくるだろう。

仮想ハードウェア:メタバースのインフラストラクチャ

誰もが経験したことがあるはずだ。ハードウェアが壊れ、それを修理しなければならない。その間、我々はそのハードウェアによる機能がなくても、生き延びられるようになる必要がある。しかし、メタバースではこのようなことは起こり得ない。あるいは少なくとも、起こるべきではない。なぜなら、メタバースで必要とされる機能の多くは、仮想化された機能を利用するようになるべきだからだ。

インフラストラクチャ機能は、仮想マシンやコンテナコンセプトで展開し、アプリと同様、ネットワーク上で大規模かつリアルタイムに展開できるようにすることが鍵となるだろう。ルーティングやスイッチングといった従来のネットワーク機能は、完全に仮想化する必要がある。これらの機能は、簡単にアップデート、アップグレード、パッチ適用、デプロイできることが求められる。

ソフトウェア・インテリジェンス:メタバースの首長

私たちがメタバースで迅速かつシームレスに活動できるようにするためには、メタバースがソフトウェアで定義されていなければならない。それは、地方の自治体や議会が、道路の補修やゴミの撤去、交通の流れの制御をリアルタイムで行えるようにすることと同じだ。これらは一般的に、我々が知らないうちに現実の生活の中で行われていることで、それが機能しなくなってはじめて、何が起こったのかと思うような事々だ。

プログラム可能なソフトウェアの能力によって機能する自動化とAIは、ネットワークの展開を高速化し、よりアクセスしやすく、適応性の高いものにするための鍵を握る。

適応性の高い仮想プログラマブルネットワークは、物理的なトラックロールを必要とせず、障害を特定して自己回復することができる。また、計算能力、ストレージ、帯域幅などのリソースを、メタバース内の十分に活用されていないエリアから引き出して、一時的に他の部分の活動を活発化させたり、必要に応じて自動的に元に戻すこともできる。

今後数年間、私たちはメタバースについての話をたくさん耳にすることになるだろう。しかし、いかなるユースケースの革新も、必要なネットワークの革新なしには実現しない。ソフトウェアで制御された、大容量かつ低遅延の接続性を提供する適応型ネットワークは、将来のメタバースにとって、現在のクラウドアプリケーション以上に重要な基盤となるだろう。

かつてFacebookとして知られていたアーティストが、人を温かく迎えるメタバースを構築するための構成要素はすでに存在している。そして、メタバースの出現を利用しようとする技術開発者たちの中で期待される技術革新の高まりにより、このようなテクノロジーが進化し続けることで、Metaはますます多くの世界構築ツールを手に入れることになる。

つまり、 バーチャルユニバースを構築することは簡単ではないが、適切なネットワークインフラへの投資と技術革新によって、現実に近づけることは確かに可能なのだ。

編集部注:本稿を執筆者Steve Alexander(スティーブ・アレクサンダー)は、ネットワークシステムとソフトウェアを提供するCiena(シエナ)のSVP兼CTO。同社は世界中のオペレーターやコンテンツプロバイダーと提携している。

画像クレジット:NJankovic / Getty Images

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(文:Steve Alexander、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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