【スタートアップバトルへの道】「審査員は優しかった」2018 Finalist / JobRainbow #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。毎年最大の目玉は、何と言っても設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、JobRainbow代表取締役CEOの星賢人氏と取締役COOの星真梨子氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備、登壇したときの印象などについて話を聞く。

リベンジ目指し気合い入れて臨んだ

2016年創業のJobRainbow(ジョブレインボー)は、LGBTに特化した求人情報サイト運営や、企業・行政機関向けにLGBT研修・コンサルティングを行う、LGBT採用の支援スタートアップだ。東京大学大学院に在学中に起業した星賢人氏(以下、賢人氏)がバトルへの出場を決めたきっかけは、建設スタートアップ助太刀の代表取締役社長兼CEOである我妻陽一氏から「資金調達や人材採用を進めるにはピッチイベントに出場するといい」とアドバイスを得たことだった。

我妻氏には、賢人氏の旧知の友人で、助太刀で取締役COOを務める大塚裕太氏からの紹介で出会ったそうだ。「JobRainbowが進める事業に深く共感してもらった」(賢人氏)とのことで、2018年6月にシードラウンドで5000万円の資金調達を実施する際にも、ジェネシア・ベンチャーズ代表の田島聡一氏を引き合わせてくれたという。我妻氏のアドバイスを参考にし、国内の主要なイベントへの出場を決めた賢人氏。「中でもTC Tokyoへの出場は特に勧められた」と振り返る。

助太刀はTC Tokyo 2017スタートアップバトルでファイナリストに選ばれ、審査員特別賞をはじめとする3賞を受賞している(当時の社名は東京ロケット)。賢人氏は「我妻氏には、資金調達については他のイベント出場も効果があるが、TC Tokyoでは優秀な人材に出会えるので絶対に出た方がいい、と聞いた。優秀な初期メンバー集めはスタートアップにとって重要だ。メディア露出が増える点もメリットと聞き、応募を決断した」と話している。

TC Tokyoより前に行われた別のイベントでは、セミファイナルまで進出したものの「油断もあって」(賢人氏)ファイナルには進出ならずとなり、「すごく悔しい想いをした」という賢人氏。TechCrunch Tokyoでは「リベンジを目指す」意味もあって、「気合いを入れて臨んだ」と語る。

「想い」だけでなくビジネス視点も強化

他のピッチイベントにも出場していたことから「資料はおおむねできていた」という賢人氏らだが、内容はTC Tokyo開催直前までブラッシュアップしていた。実はJobRainbowでは、TC Tokyo初日のプレゼンテーションは賢人氏が行ったが、2日目のバトル決勝では星真梨子氏(以下、真梨子氏)がプレゼンターとなっている。

「2日目は私がフランス大使館でスピーチをする予定があり、決勝には出られなかったので、真梨子にバトンタッチすることになった。決勝では時間も5分と長くなる。初日に盛り込めなかった内容や“驚き”も入れ、感情の流れも考えながら、2人で内容をいろいろと練った」(賢人氏)。

こだわった点はビジネスサイドからの視点を強化した点だという。賢人氏は2018年3月まで学生だったということもあって、TC Tokyo出場までは、事業への“想い”を重視したプレゼンを行ってきた。「学生向けのビジネスコンテストでは想い重視でも評価されてきたし、2016年の起業当時は『LGBTのための事業をやっている』というだけで驚きをもって見られた。しかし2018年になると、それだけでは驚かれなくなった。TC Tokyoでは、審査員やオーディエンスがビジネスとしてのポテンシャルを見極められるようにする必要があった」(賢人氏)。

そこで賢人氏らは、聞き手にとって身近なテーマから、自分たちの事業がビジネスにどう直結するかを訴えることにした。「それまではいつも、自身の体験を起点に、LGBTが抱える課題と当事者がやっている事業だということを説明していた」という賢人氏。TC Tokyoでは、誰にとっても身近な、職場でよくある「彼氏彼女はいないの?」「結婚しないと一人前じゃない」といった発言を拾い、冒頭で紹介した。

「企業の中で毎日のように何気なく行われている発言で傷つくLGBT当事者がいる、と示すことで、(聴衆を)ドキッとさせたかった。それをスライドの最初のインパクトとして持って来た」と、新たな展開の工夫について話す賢人氏。真梨子氏も「以前はLGBTは13人に1人います、といったプレゼンをしていたが、時代が変わってそれが周知され、当たり前に聞こえるようになった。もっと『自分が聞かなきゃいけない話なんだな』と思われるようにしたかった」と話している。

「周りにいる人の、日常にある言葉をピックアップし、それがLGBTにとって居づらい環境をつくっていることをまず説明した。その状況が現実にどのくらい起きているのかを統計で示し、課題への解決策を出し、数字でマーケットのポテンシャルを示す流れにした。話していく中で、聞き手の頭にスッと入った感触があった」(賢人氏)。

イベントで生まれた顧客や投資家とのつながり

準備はギリギリまで行い、直前まで練習したという賢人氏と真梨子氏。実際にスタートアップバトルに登壇してみての感想も聞いてみた。初日のバトルに参加した賢人氏は「こだわってプレゼンをつくり、今までの流れと違う形で話す初めての機会だったので『どう受け止められるだろうか』と気合いが入っていた。結果、いい感じに話せた」と語る。

一方、2日目に登壇した真梨子氏は「TC Tokyo前のイベントでファイナルに残れなかったこともあり、決勝に進出できる自信がそれほどなかった」とのこと。このため賢人氏が担当した初日の3分バージョンと比べると、5分バージョンはそこまで作り込んでいなかったそうで、初日が終わってから追加すべき点を賢人氏と話し合い、内容を詰めたという。

「私たちの説明したい内容は盛りだくさんなので、時間内に終わらせることを心がけた。今までに小さなコンテストへの出場はあったが、TC Tokyoのような大舞台は初めてで緊張した」(真梨子氏)。

これまでのコンテスト出場では、ワイヤレスのピンマイクを使ったプレゼン経験がなかった真梨子氏だが、舞台袖でマイクを付けるスタッフとしゃべって打ち解けることで、落ち着いて話せたと述べている。

「審査員にはエンジェル投資家の千葉さん(Drone Fundジェネラル・パートナーの千葉功太郎氏)やマネックスの松本会長(マネックスグループ取締役会長の松本大氏)といった有名な方々がいて、どんな質問がくるか、たくさんのオーディエンスに魅力を伝えきれるように回答できるか身構えていたが、最初に松本さんから『質問ではなく、これは応援です』と言っていただき、本当にうれしかった。その後の鋭い質問のいくつかについても『プレゼンで入れ込めなかったけれど、質問で答えられれば』と想定していたことを、きちんと聞いていただけたので、やりきれた感じ。見ていた友人からも回答を評価されて、肩の荷が下りた」(真梨子氏)。

賢人氏も「審査員は優しかった」と話している。「プレゼンが伝わらないと質問もブレる。準備をきちんとして、会場や審査員の温度感に合わせて、伝わるプレゼンができなければ答えにくい質問が出るようになる。TC Tokyoではクオリティの高い質問がもらえたので『伝えたいことが伝えられたな』と感じた。ただ私はかなり早口でしゃべってしまった。私と真梨子、味が違う2人で出られたのはよかったかもしれない」(賢人氏)。

マネックスグループはその後、JobRainbowの顧客としてサービスを利用しているという。「TC Tokyoをきっかけにつながることができた顧客や投資家もたくさんいる。出場して本当によかった」(賢人氏)。

後半では、出場後の社内外の変化、その後の事業や組織のアップデートと今後の展望などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。社会人など一般向けの「超早割チケット」(2万円)、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)の計4種類。また、超早割チケットは8月末までの販売となり、9月からは「前売りチケット」(3.2万円)の販売に切り替わる。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。