【レビュー】FightCamp、データドリブンな「パンチ」でワークアウト!

身体が痛い……。

座っていられないほどの痛み、というわけではない。「よし、長年無視していた筋肉を鍛えたぞ!」という感じ。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの低迷から抜け出そうとしている今、これは良いことだ。

原因はPeloton(ペロトン)のサイクリングではなく、コネクティッド(接続された)ホームジムの分野に新たに登場した製品である。その名も「FightCamp(ファイトキャンプ)」。名前が示すとおり、パンチングバッグとスマートトラッカーに接続したグローブがセットになったホームエクササイズシステムで、ボクシングとキックボクシングに特化している。

FightCampを1カ月以上使ってみた筆者としては「汗をかくワークアウトで、定期的に行えば体幹、バランス、スピード、ボクシングの基本的なノウハウを向上させることができる」と言って(書いて)も差し支えないと思う。ボクシングをやってみたいけれどもボクシングジムや総合格闘技センターに行くのは怖い、という人にも、誰からもジャッジされない安全な方法を提供してくれる。

成り立ち

FightCampが何であり、何をするものかを理解するために、その由来を振り返る価値はあるだろう。FightCampは、コネクテッドホームワークアウトシステム「FightCamp」が発売される4年前の2014年「Hykso(ヒクソー)」として設立された。その後の4年間、同社が開発したフィットネストラッカーは、オリンピックの出場経験もあるボクシング選手によってテストと改良を繰り返した。米国、カナダ、中国を含む複数のオリンピックボクシングチームがこのトラッカーを使用し、史上最高クラスのボクサーであるManny Pacquiao(マニー・パッキャオ)も初期のユーザーの1人だった。

これらのアスリートたちはすでに最高レベルのボクサーだったので、データにはユーザー層の違いによるレイヤーが存在せず、トラッカーはただトラッキングして大量のデータを蓄積していた。

しかし、おもしろいことが起こった。創業者かつCEOのKhalil Zahar(カリル・ザハール)氏によると、ボクシングのコーチたちが自分たちの顧客にFightCampを使い始めたのだ。

ザハール氏はこのコーチたちを「架け橋になってくれた」という。ここからFightCampのアイデアが生まれた。「私たちは、コーチと一緒にワークアウトをするだけでなく、ボクシングのテクニックを自宅で学べる初心者向けのプログラムを構築して提供しようと考えました」と同氏は話す。

オプション

FightCampには3つのハードウェアパッケージがある。Connectは439ドル(約5万円、ホリデーシーズンは399ドル[約4万6000円])、Personalは1219ドル(約14万円、ホリデーシーズンは999ドル[約11万5000円])、Tribeは1,299ドル(約15万円)である。また、月額39ドル(約4500円)のサブスクリプションに登録する必要がある。iOSアプリや最近追加されたAndroidアプリで1000以上のクラスやドリルなどのコンテンツにアクセスすることができる。ボクシングのパンチだけでなく、キックボクシングなどのワークアウトもあり、すべてのセッションの最後に腹筋やプランクなどの体幹トレーニングを行うようにアプリを設定することも簡単だ。

Connectパッケージはすでに自分のサンドバッグを持っているユーザー向けで、デジタルパンチトラッカーとクイックラップだけが付属している。筆者が試用したPersonalパッケージには、パンチトラッカー、クイックラップ、グローブ、自立型のサンドバッグ、バッグリングが含まれる。その当時はマットも付属していたが、残念ながら現在は付属しないそうだ。

Tribeパッケージはその名のとおり複数人で使用するもので、パンチトラッカー、クイックラップ×2、自立式バッグ、ヘビーワークアウトマット、プレミアムボクシンググローブ×2、バッグリング、キッズボクシンググローブが含まれる。

セットアップ

画像クレジット:Kirsten Korosec

Personalパッケージの箱は2つ。巨大な段ボール箱にはサンドバッグと台座が入っていて、もう1つの箱にはパンチ数とパワーを記録するパンチトラッカー、クイックラップ、マット、グローブが入っている(現在はマットは含まれない)。

サンドバッグの設置とパンチトラッカーの準備は簡単だ。しかし、サンドバッグはかさばり、置き場によっては少々厄介である。筆者は普段の生活の邪魔にならず、テレビが近くにあるゲストハウスに設置した(詳細は後述)。

マットを敷いたらバッグを乗せる台座を設置する。台座には水や砂を入れる。筆者はゲストハウスの中に外からホースを引き込んだので、設置にかかる時間が大幅に短縮された。そうしないと、水の入ったピッチャーや砂の入ったバケツを持って何度も往復することになる。大変だが、その分運動にはなると考えれば良い。

失敗したのは最初に台座を正確な位置に置かなかったことだ。台座に水や砂(あるいはその両方)を入れてサンドバッグを乗せると、台車がなければ動かせなくなる。

台座とバッグをテレビと反対になるように置いたのが失敗だった。これを直したら、トレーニングの質が格段に向上した。

長所と欠点

画像クレジット:Kirsten Korosec

長所は、上の写真にあるパンチトラッカーが広告で謳われているとおりに機能し、本当にすべてのパンチを追跡してくれることだ。アプリも使いやすく、米国ボクシング協会認定コーチやNASM認定パーソナルトレーナーが指導するワークアウトが豊富に用意されている。

筆者が特に気に入ったのは、ボクシングやキックボクシングの指導に合わせて、体幹のエクササイズを確実に行える設定である。また、シャドーボクシングのクラスもあり、サンドバッグやグローブ、クイックラップ、トラッカーが届く前に、ボクシング用語や基本的なパンチ、ジャブなどを学ぶことができるのも魅力的だ。

FightCampにはユーザーが嫌がるかもしれない欠点もいくつかある。

1つはシステムの大きさである。狭いアパートでは、バッグが貴重なスペースを占めることになり、それを良しとしない人もいるだろう。広い家やガレージがあれば、このシステムはいっそう魅力的に思えるかもしれない。筆者の場合はスペースがあったので、この点は問題なかった。

筆者が感じた主な欠点は、近くにテレビがないと、画面を見なくてもついていけるぐらいワークアウトを覚えなければ、インストラクターにきちんとついていくのが難しいということである。

実際の内容は明確でわかりやすい。コーチは、ユーザーがモチベーションを維持できるように身振りとインストラクションを適切に組み合わせて指導してくれる。筆者もとても勉強になった。

しかし、覚えるのは簡単ではない。テレビの画面を見ることができなかった最初の頃は、動画を止めて前の動きを何度も再生する必要があり、スムーズに進めることができなかった。

テレビの画面を見えるようにしてトレーニングを連続して続けられるようにしたら、より簡単についていけるようになった。正確な動作を見なくても何をすべきかがわかり、1-2-3といわれたら「ジャブ、クロス、フックだ」とわかるようになった。

また、自分のフォームが正しいのかどうかがわからない。パンチトラッカーやアプリにはそのようなフィードバックを提供する機能がないからだ。筆者のように汗をかきたいだけの人には関係のないことかもしれないが。

今後の展開

ザハール氏とFightCampは、コンテンツだけでなく、フォームに関するフィードバック機能の付いたトラッカーや、もっとゲーム化されたワークアウトなどへの拡張を計画している。

「あなたの身体をゲームのコントローラーにすることが基本的なコンセプトです」とザハール氏。「トラッカーは身体をコントローラーとして使えるようにするためだけのものです」。

FightCampでは手首に装着したパンチトラッカーから取得したデータを使って、他のユーザーと競争したり、進捗を確認したりすることができる。ザハール氏は、将来的には足にもトラッカーを付けたいと考えている。

同氏は次のように話す。「その後はユーザーが触れるものすべてに拡張して、コネクテッドフィットネスアクセサリーにしたいと考えています」「縄跳び、バトルロープ、ケトルベル、ボックスジャンプなど、ワークアウト中のあらゆる動きに応じて報酬が得られるようにしたいと思います」。

つまり、FightCampを器具だけのワークアウトシステムにはしたくないということだ。同氏は「トラッカーや、サンドバッグを必要としないコンテンツを追加することで、その目標を達成することができる」という。

すでにFightCampは無料コンテンツを強化している。同社は最近、毎週100以上の無料ワークアウトを提供すると発表した。「Tracker optional(トラッカーはオプション)」と表示されたこれらのワークアウトは、無料かつトラッカー不要で、シャドーボクシング、リカバリー、ストレッチ、キックボクシング、自重エクササイズがメインである。最近追加されたAndroidアプリはまだベータ版なので、現在のところ、これらの無料ワークアウトはiOSアプリでのみ利用できる。

画像クレジット:FightCamp

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。