【レビュー】iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

MacBook Airなどと同じM1チップを採用し、5Gにも対応したiPad Proの発売が迫ってきています。発売に先立ち、筆者も実機を試用することができました。パフォーマンスの高さやディスプレイの美しさは別の記事に譲るとして、ここでは、シリーズ初となる5G対応に関してあれこれレビューしていきたいと思います。筆者が今回、もっとも注目していたのもこの機能です。
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と言っても、ユーザーが何か特別なことをする必要はありません。セルラー版を購入して、5Gに対応するキャリアのSIMカードを挿せばOK。ドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアの場合、スマホのメイン回線と組み合わせることができる「データプラス」などのいわゆるシェアプランがあるため、料金的にはそれを利用するのが手っ取り早いでしょう。2枚目のSIMカードは1枚目と容量をシェアする形ですが、主回線が無制限の場合、30GB前後の制限があります。

設定項目は、ほぼほぼiPhone 12シリーズと同じ。「設定」の「モバイルデータ通信」で「通信のオプション」を選ぶと、「データ」と「データモード」で5G接続の挙動を変更することができます。前者のデータは、5G対応のSIMカードを挿すと、常時5Gが有効になる「5Gオン」と、自動で5Gをオフにすることがある「5Gオート」を選択可能。何らかの理由でオフにしたい時には、「4G」を選択すればOKです。

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

「データモード」は、5G接続時にコンテンツの画質を自動的に向上させるための項目です。初期設定では、データ容量を節約するためか、「標準」になっていましたが、「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5Gで接続している際に、FaceTimeやビデオの画質が向上します。おそらくこの初期設定は、キャリアや加入しているプランによって変わるはずで、iPhoneと同じだとすると、KDDIの無制限プランに加入している場合は、デフォルトで「許容」になると思われます。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

設定をオンにしていると、高画質化するコンテンツは、以前より増えています。この機能をプッシュするKDDI関連のサービスが多い印象ですが、スポーツコンテンツでおなじみのDAZNも、動画品質の自動アップグレードに対応しています。試しに、編集長とWi-Fi環境下でFaceTimeを使って雑談してみましたが、肌の質感までよく分かるほどの映像で、通常のFaceTime以上に臨場感が高いと感じました。試用したiPad Proは、12.9インチと画面サイズが大きいため、迫力はiPhone以上。スマホ以上に、5Gエリアで通信することの重要性を感じました。

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

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そのメリットを体感するには、5Gのエリアが広い必要があります。現時点では残念ながら、4Gのように全国くまなくというわけではありませんが、KDDIやソフトバンクについては、以前とは様相が変わってきています。4Gから5Gへの周波数転用を開始したからです。iPad Proには主にソフトバンクのSIMカードを挿していましたが、筆者の事務所がある渋谷では、様々な場所で5Gがつながります。路上はもちろん、よく行くカフェや事務所の喫煙所(屋外)も、5Gのエリアになっていました。

転用のため、通信速度に関しては4Gとそこまで変わらず、数十Mbpsという場所も多々ありましたが、上記のような、画質向上機能がオンになるのはメリットの1つと言えるでしょう。逆に、周波数転用を現時点では導入していないドコモは、5Gにつながったときの速度には以下のように、目を見張るものがあります。一方で、元々の5Gの周波数は4.5GHz帯や3.7GHz帯と非常に高く、屋内浸透もしにくいのが難点。KDDIやソフトバンクのように、とりあえず入ったカフェの中で5Gを使うというシチュエーションには、なかなか出くわさない印象があります。

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

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【レビュー】iPad Pro 2021はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台(石野純也)

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

iPad Proの利用シーンや、上記のように5Gでコンテンツの画質を向上させる機能があることを踏まえると、やはり転用であっても、エリアが広い方が嬉しいのではないでしょうか。いくら高速でも、スマホと違って、iPad Proを路上で使うことはあまりありません。最近は、駅などで歩きタブレット(!)をしている人を見かけることもありますが、あくまでレアケース。カフェなどに入って、Webや動画を見たり、ビデオ会議をしたりするシーンの方が、シチュエーションとしてリアリティがあります。

そもそもの話として、通信速度ではなく、4Gか5Gの区分だけでコンテンツの品質を分けてしまうのはどうなのかという議論もありますが、同様の機能はiOSだけでなく、Androidにも採用され始めていて、業界標準になりつつあります。特に腰を据えてじっくり使うiPad Proでは、その恩恵が大きいため、ドコモは屋内対策をぜひともがんばってほしいと思いました。ただ、iPad Proは作成した動画をアップロードするといった用途も考えられるため、ほか2社も転用だけに頼らず、Sub-6のエリア整備は強化してほしいところです。

ここまで、あえて名前を挙げていませんでしたが、4月にiPhoneの取り扱いを開始した楽天モバイルも試してみました。オチのように使ってしまうのは大変恐縮ですが、残念ながらiPad Proは、同社の5Gには非対応のようです。楽天モバイルのeSIMプロファイルをインストールしてみたところ、iPhone 12シリーズを取り扱っていなかったころと同様、設定メニューに5Gの文字が現れませんでした。

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

選択できるのは4Gのみで、アンテナピクトの表記は「LTE」になります。また、APNは入力なしで通信できましたが、空欄のままだとインターネット共有(テザリング)の設定も表示されません。これは、楽天モバイルがiPad ProやiPadを取り扱っていないためだと思われます。キャリア設定も降ってこなかったため、取り扱いを開始するまで、同社の5Gはお預けということになりそうです。段階制の料金プランは、サブデバイスとしてのタブレットと相性がよさそうなだけに、今後の展開に期待したいところです。

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

M1チップを搭載したiPad Pro発表。Thunderboltに5G対応

M1搭載の新 iPad Pro vs 前世代比較。12.9インチ版はLiquid Retina XDR搭載

(文:石野純也、Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。