【レビュー】Rivianから待望の電動トラック、2022 Rivian R1Tにはたくさんのお気に入り機能と工夫が溢れている

Rivian(リビアン)は、初めての試みで、ピックアップトラックのゴルディロックスを作った。

Rivian R1T電気トラックは大き過ぎず、小さ過ぎない、適正サイズのトラックだ。ロッククローリングやオフキャンバー走行を難なくこなす。ダートでも数秒で時速約96kmに達し、後輪のスリップも発生しない(ただし、オプションでドリフト効果を発生させることもできる)。また、曲がりくねった山道でコーナーを攻めても車体が横揺れすることもない。

内装も外装も間違いなく最高級の仕上がりになっている。が、Rivian R1Tは決して見かけだけの軟弱なクルマではない。

リビアンのデザイナーとエンジニアは、あらゆる面で形と機能を両立させることで、見せ掛けだけのクルマにならないように配慮している。さらに驚かされるのは、タイダウンフック、エアコンプレッサー、コンセントといった装備の場所などから、多くの社員が、キャンプ、マウンテンバイク走行、あるいは買い物などの日常的な作業に至るまで、実際のさまざまな条件下でこのクルマをテストしたことが伺える点だ。

こうした努力の結果、季節を問わず、あらゆる用途に使えるクルマになっている。そして何より、運転していて楽しい。

記者向けの3日間の試乗で、最終製品仕様に近いR1Tは、誰もこんなクルマが必要だと気づいていなかった、そんな電気トラックであることが分かった。

といっても、すべてが完璧だと言っているわけではない。ハードウェアの細かい部分やソフトウェアユーザーインターフェイスなど、改善して欲しい点はいくつかある。1つ指摘しておくと、おそらくペン立てなのだろうが奇妙な切り込みがあるのだが、これはワイヤレス充電パッドによって間違いなくすぐにホコリがたまるだろう。

はっきり言っておくが、このクルマを詳細にレビューするにはもっと時間をかけて試乗してみる必要がある。とはいえ、全体としてRivian R1Tには好印象を持った。

画像クレジット:Kirsten Korosec

リビアンがR1Tで実現したことは簡単ではない。

名のある自動車メーカーにとって、消費者の欲しいものリストを予想して、すべての要望を実現していくのは難しいことだ。量産しながら適切な仕上がりを維持するのはさらに難しい。リビアンは、最初の電気トラックを米国市場に投入して、ドライバーが欲しがるトラックをきちんと製造することを目指す絶好の立場にある。

リビアンは消費者の要望と運転のしやすさという点では期待に答えていえるが、生産と配送というさらに2つのテストに直面している。

リビアンはこれらの目標に向かって前進している。リビアンブルーの車体を持つ最初のRivian R1T電気ピックアップトラックは、今月始め、イリノイ州Normal(ノーマル)の同社工場の組み立てラインから排出され、創業10年を超える同社と創業者兼CEO RJ Scaringe(RJ・スカーリンジ)氏にとって画期的な出来事となった。

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2009年にMainstream Motors(メインストリームモーターズ)として創業した同社は2年後にリビアンに社名を変更し、この2年間で、社員、支援者、パートナーの数が急増し、爆発的な成長を遂げた。

リビアンは数年間ひそかに事業を展開した後、2018年、ロサンゼルスのモーターショーで完全電気自動車R1TトラックとR1S SUVのプロトタイプを発表した。

その後、リビアンは数十億ドル(2019年以来105億ドル)を調達し、イリノイ州ノーマルの工場を拡張し、数千人(8,000人以上)の社員を雇用し、アマゾンを法人顧客として獲得した。最近では、ひそかにIPOを申請している。また、イリノイ州の工場の他にも、カリフォルニア州のパロアルトとアービン、ミシガン州プリマスにも工場があり、英国支社もある。

基本概要

画像クレジット:Kirsten Korosec

筆者が試乗したR1Tは、グレイシャーホワイトのLaunchエディションで、Pirelli Scorpionの全地形対応タイヤを履いていた。価格は約7万5000ドル(約833万円)だ(1075ドル[約12万円]のコンテナ取扱料金を除く)。

特性のバッジが付いてくるLaunchエディションはもう購入できないが、リビアンの「Adventureパッケージ」トリム(7万3,000ドル[約811万円]より)は装備という点でLaunchエディションとほぼ同じだ。例えばLaunchエディションとAdventureエディションは、どちらもオフロード向けアップグレードが標準装備されている。具体的には、強化されたボディー底面シールド、デュアルフロントバンパーけん引用フックとエアーコンプレッサー、内装アクセント、100%リサイクルのマイクロファイバー天井材、Chilewich(チルウィッチ製)フロアマットなどだ。

R1Tの特徴は、バッテリーパック、駆動装置、扱いやすい独立型空気サスペンション、保温性の高い下部構造などで構成されるスケートボードアーキテクチャーだ。このスケートボードシャーシには上記のすべての装備が組み込まれている。つまり、このスケートボードに異なるボディを乗せることができる。これにより、柔軟性とコスト効率性が向上し、同じ基盤を使用して車を量産できる。

その結果、重心が低く、68立方フィート(約28リットル)の積荷スペースが確保された。積荷スペースは、デザイナーとエンジニアがさまざまな身長の顧客に配慮して設計したものだ(下の2階層の前方トランクはそうした例の1つだ)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

パワートレインには、135kWhのリチウムイオンバッテリー、全輪駆動用の4台のモーター、835馬力 / 最大トルク1,231.25N・mのシングルスピードトランスミッションが搭載されている。これらの数字によって、パワー、パフォーマンス、カーブで加速したときの安定感といった利点が得られる。

リビアンがクワドモーター駆動(前輪軸と後輪軸にデュアルモーター駆動ユニットを搭載)を設計した経緯は説明しておく価値があるだろう。というのは、筆者はその設計が重要な理由を身を持って体験できたからだ。4台のモーターはそれぞれ独立にドルクを調整するため、さまざまな条件下でトラクションを制御できる。筆者が試乗したのは未舗装の悪路だった。クワドモーター駆動により、状況に応じて、最もパワーを必要としている車輪にパワーを伝えることができるため、スリップを防いだり、車両の回転を制御したりできる。

車両の温度管理とバッテリー管理システムにより、車両は最大11,000ポンド(約5トン)をけん引でき、直流急速充電速度は走行距離140マイルの場合200kWで20分の充電が必要となっているが、どちらも試すことはできなかった。この2点については、数日間試乗できる機会がきたら試してみようと思う。

サーキット

画像クレジット:Kirsten Korosec

記者向けの試乗会は全員デンバー国際空港をスタート地点として開始された(ただし筆者は飛行機が遅れたため同時にスタートできなかった)。空港から州間ハイウェイ70を100マイル北上し、ロッキー山脈の東側地域に入り、ブレッケンリッジ(テンマイル・レンジにある人気のスキーリゾート)を最終地点とする(今回の旅費と宿泊費はリビアンではなくTechCrunchが負担してくれた。リビアンはトラックと食事を供給してくれた)。

筆者は、 Rivian R1Tに試乗するのを、次の日まで待たなければならなかった。

翌朝早く、Rivian Camp Kitchenで屋外での朝食をとり、安全性チェックと簡単な説明を聞いた後、いよいよコースでの試乗が始まった。

初日の大半はオフロードだが、舗装されたマウンテンハイウェイも面白そうだ。最初のルート(スワンリバーのノースフォークに沿って走りディアー・クリークとセントジョン・トレイルに接続するコース)は、ロッククローリング、難しいV時型の切り込みのある区間、険しい上りと下りで構成されている。スピードの出せるダート・ロードもあるので「ラリー」モードを試すこともできた(詳しくは後述する)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

ドライバーは、古い鉱山採石場だったモンティズマを通過し、ハイウェイ6(ラブランド・パス峠を越える曲がりくねった舗装道路)に入る。初日の最後はドライバーによって走行距離に差が出た。トラックに乗車した筆者と他の記者たちが選んだ午後のルートは、ラブランド・パス峠を2回越えて、キーストーン、スワン・ロードを通過して最終地点に到達するルートだった。

翌朝、記者たちは再度空港まで試乗車を試すことができた。今回の初めての試乗は計約270マイルにおよぶ3日間の旅だった。

ハンドリングとパフォーマンス

画像クレジット:Rivian

オフロード区間の走行時は、4輪独立の空気サスペンションが真価を発揮した。ドライバーは、多目的、スポーツ、オフロード、節約、けん引などの複数のモードからいずれか1つを選択できる。オフロードモードには、さらに、オフロードオート、ロッククロール、ラリーなどのオプションが用意されている。ドリフト走行モードも用意されているが、今回はテストしなかった。

最低地上高、ダンピング、再生ブレーキを制御するペダルマップ、車両のサスペンションは、走行モードに応じて調整される。例えば節約モードでは、車高は約8インチ(約20cm)だが、オフロードでは14.9インチ(約37cm)にまで調整できる。

オフロード走行では、急斜面の登り下り、浅瀬走行も行った。地上高と、34度のアプローチ角、25.7度のブレイクオーバー角(斜路走破角)、29.3度のデパーチャー角により、車体が地面をこすったり、つっかえたりすることは一度もなかった。特に大きな石を避けて進もうとしていたら(他の車両ではごく普通のテクニック)、リビアンの社員がそのまま乗り越えるようアドバイスしてくれたことがあった。言われるとおりにやってみると、まったく問題なかった。

画像クレジット:Rivian

オフロード走行中に突然発生した唯一の問題は、同乗者の窓の開閉がときどき遅くなったり、止まってしまうことだ。これは量産仕様の車両では問題になるだろうが、ちょっとした誤作動の類で、あと数週間で実際に顧客に納車されるまでには修正されていることを望みたい。

このクルマのさまざまなモードでのパフォーマンスは期待どおりだったが、インターフェイスが原因で、モード切り替えが若干もたつく感じがした。これについては、以下で詳しく説明する。

ユーザーインターフェイス

画像クレジット:Rivian

内装はテクノロジーと物理構成要素のバランスが非常によくとれている。フロントガラスのワイパーとギヤセレクターの操作はレバーに組み込まれており、中央の車載インフォテインメント・システムから操作しなくてよいのはありがたい。また、ハンドルには親指操作の2つのトグルスイッチが装備されており、音量、1曲飛ばし、電話応答制御、Alexa音声アシスタントを制御できる。また、先進の運転補助機能もいくつか用意されている。

先進の運転支援システム(ブランド名Driver+)がアクティブ化されたときに使用される運転者監視システム(カメラ)も用意されている。ドライバー用ディスプレイは仕様に組み込まれているもので、わずかな重要情報(速度、ナビゲーションマップ(必要な場合)、レンジなど)のみが表示される。

運転席の右側中央には矩形の中央タッチパネルがあり、クルマに関して必要なほぼすべての情報が表示される。その中には、物理的なボタンやノブでも操作できればありがたいと思える項目もいくつかある。とはいえ、良い点を挙げると、インフォテイメントシステムでは、面倒なホーム画面ボタンを省略して、必要な項目がすべて画面下部に固定的に配置されている。これにより、ほとんどの機能を直感的に見つけて操作できる。

画像クレジット:Rivian

普通のドライブなら「どうしてもっとボタンとノブで操作できるようにしないんだ?」などと愚痴をこぼすこともないだろう。だが、急な石だらけの斜面を登るときなど、換気口の向きを変えるのに、いちいちタッチパネルをタップして小さなドットを動かして自分の顔に風が当たるように調整するのは何とかならないのかと思わず声に出して愚痴ってしまった。また、ガタガタ道や曲がりくねった道を走行しているときに回生ブレーキのレベルを変更したいとも思わなかった。

こうしたぎこちなさの中には慣れれば解消されるものもあるだろう。それでも、リビアンのユーザーが物理的なノブや換気口を掴んで操作できることを望んでいるのではと思うような機能もいくつかある。エアコンはその最たるものだ。

ソフトウェアは思ったとおりに動作した。今回試乗したトラックでは、が反応が遅くてもたつくことはなかった。携帯電話は簡単にBluetooth接続して音楽を再生できた。ただし、リビアンの車載システムにはApple CarPlay やAndroid Autoはインストールされていない。

リビアンはソフトウェア中心型でクラウドベースのアーキテクチャーの利点を享受している。これにより、無線でソフトウェアをアップデートできるため、わざわざサービスセンターまで足を運ばずに済むとリビアンの社員が保証してくれた。アップデートは定期的に実行され、新しい機能とアプリがインストールされる。

テスラでは、ビデオゲームやその他のお楽しみコンテンツを配信する手段としてOTA(Over The Air)を使っているため、テスラのオーナーはOTAがお気に入りになっている。リビアンは少なくとも現時点では、OTAにはあまり乗り気ではない。リビアンの電気トラックの隠し機能はハードウェアを重視しており、それは未来のリビアンオーナーの希望に沿ったものだと同社は考えている。

ハードウェアアクセサリー

キー、ギア・トンネル、ギアガードなど、簡単に触れておくに値するハードウェアコンポーネントがいくつかある。すべてのアクセサリ(粋なポータブルスピーカー、タイヤ空気圧縮機、懐中電灯など)については、今週掲載する記事で詳しく紹介する。

まずはキーだ。いや複数のキーといったほうがよいかもしれない。リビアンはオーナーがクルマのドアを開けるための4つの方法を用意した。携帯アプリ、カラビナタイプの錠前のついたフォブ、クレジットカード型のキー、ブレスレットの4つだ。やり過ぎではないかと思うかもしれないが、これはアクティブで、辺ぴな地域で一種の冒険を楽しむことが多いリビアンのターゲットユーザーに合わせたものだ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

次はギア・トンネルだ。これは11.6立方フィート(約328リットル)の収容スペースを提供する。ギア・トンネルはこのクルマの主要な特徴であり、スカーリンジ氏によると、何度も修正が繰り返されたトラックの初期デザインでギア・トンネルだけは一貫して変わらなかったという。

ギア・トンネル内にオプションのスケートボードアップグレードを施すことで、5,000ドルのキャンプ用キッチンを装着できる。リビアンはこれ以外にもアクセサリを追加する準備を進めているようだ。スキーやスノーボードブーツの乾燥用ヒーター、泥だらけの自転車走行用着衣を入れる簡単着脱式バケツ(スケートボードに装備可能)などが考えられる。

ギア・トンネルのドアは荷台のフレームに付いているボタンを押すと下向きに開く。ドアは人が1人乗っても耐えられるくらい十分な強度があり、収容スペースを広げてくれる。下の写真では、リビアンの社員が空気圧縮機のアタッチメントをドアの収納ボックスから取り出しているところだ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

最後に、Adventureパッケージトリムに含まれているギアガードと呼ばれるハードウェアとそれに付随するソフトウェア機能について触れておく。このシステムは荷台の側面に差し込む積荷固定用ケーブルで構成されている。このケーブルをラックに搭載した自転車やその他の道具に接続できる。接続すると、セキュリティシステムが稼働する(下の写真参照)。

セキュリティシステムは車の10台の外部カメラに接続されており、何者かが荷台の道具に近づいていじり始めると、録画を開始する。録画された動画は、中央のディスプレイで表示したり、保存および共有もできる。ただし、細かい点だが、この動画がユーザーのスマホアプリに即座に送信されることはない。

画像クレジット:Kirsten Korosec

リビアンはこの機能を発表と同時に追加し、アプリを改善していくものと思われる。これは、ソフトウェアとハードウェアの統合を重視しながら、ゼロから車を開発する場合の利点だ。多くのちょっとした点を改善していくことができる。

リビアンが実現したことは、たまたま変更が難しいものになっている。リビアンのトラックは、トラックのオフロード走行能力、機敏なセダンやスポーツカーの路上性能、静かな電気自動車の利点を備えながら、デザイン、内装素材の選択、ソフトウェア、機能アクセサリなどもなおざりにはしていない。

それはブランドの信頼性を構築するに違いない初期的な取り組みであり、お客様にも良い印象を与えることだろう。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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