【実機先行レビュー】iPhone SE 第3世代はやっぱり高品質

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

「iPhone SE」第3世代モデルをいち早く使ってみた。本稿ではその模様をお伝えする。

デザインも変わっていないしハイエンドじゃないし……と思っていないだろうか。まあ確かに、そんなに「新しい」感じがするわけではない。

だが、触ってみるとなるほど、Appleの狙いが見えてくる製品でもあるのだ。

ロングセラーになった定番デザイン、色調は第2世代とは異なる

今回のiPhone SEは3世代目になるわけだが、2020年発売の2世代目と同様、デザインは「iPhone 8」(2017年9月発売)と同じになっている。

色も、第2世代・第3世代で同じ……と言いたいところなのだが、白・黒・赤というおおまかな色としては同じであるが、色合いがそれぞれ変わっている。

レビュー機材として貸し出されたのは「ミッドナイト」。黒にほんの少し青が混ざった「深夜の空の色」を感じさせる色合いだ。表側の黒い部分と比較すると、色の違いがわかりやすい。

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

このデザインも、実際にはiPhone 6世代(2014年9月発売)をベースとしているわけで、なんとも息が長い。第2世代と同じく2年で次の「SE」だとすると、最低でも2024年まで使われる「10年選手」ということになる。

だからiPhone 13世代と比較すると、画面周囲の空白の大きさなど、さすがに古さを感じる。

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

ただ、Appleの考えとして、ここで細かくデザインを変えていくのは「違う」と考えているのだろう。

ソフトウェア開発上、画面のバリエーションが増えるのは避けたいだろうし、大量に調達しているパーツを使ってコストを下げたい、という思惑もあるので、彼らとしては「この形でこういうパターンで出す」ことしかあり得ないのだ。

ここからの2年で供給価格はさらに下がり、携帯電話事業者による割引を組み合わせて、安価に提供するiPhoneになっていくのは間違いない。だとするなら、「機能や特質を変えず、できる限り長く、安価に提供できるバランス」のものを作ることを最優先にするというのはもっともだろう。

性能はiPhone 13並み、カメラも「日常的撮影」ならかなり良好

というわけで、ちょっと使ってみた感じはまさに「iPhone SE」だ。

価格だけでなくサイズ感含め「これがいい」という人もいるはず。そういう人があまり悩まずに買えるバランスになっている。

画面こそ(本体サイズの割には)狭いが、それでもiPhone 13シリーズと比較すれば、miniを除くとぐっと小さい。全体の作りの良さはさすがだ。

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

第3世代iPhone SEはプロセッサーが「A15 Bionic」になった。そのため、性能はかなり上がっている。

「GeekBench 5」でのテスト結果では、CPU側の性能ではiPhone 13 Pro Maxとほとんど差がない。GPUについてはコア数が違うようで、iPhone 13 Pro Maxの方が流石に性能は高い。メモリ量も、6GBから4GBに減っていると推察される。

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

まあ、このあたりはそんなに問題ではない。画面サイズが小さい分、GPUへの負荷も小さいだろう。「フラッグシップのiPhoneとほとんど差がない性能」と考える方がわかりやすい。

そしてプロセッサー性能が効いてくるのがカメラだ。

iPhone SEは第2世代も第3世代も、まったく同じレンズ・全く同じセンサーを使っている。一方で、プロセッサーに搭載されたイメージシグナル・プロセッサ(ISP)やカメラ関連ソフトウェアが改良され、カメラに使える処理能力も高くなっているので、画質は上がってる……ようだ。

残念ながら手元には第2世代SEがないので、横並びでチェックすることはできていない。

だが、2020年にiPhone 11 ProとiPhone SE(第2世代)で撮り比べた写真の傾向と、今回、iPhone 13 Pro MaxとiPhone SE(第3世代)で撮り比べた写真の傾向を比べると違いが見えてくる。

第2世代SEはiPhone 11 Proに比べ、少し眠く、精細感に欠けた写真になる印象があった。だが今回、そこはあまり差を感じない。センサー特性の違いか、色の乗りは第3世代iPhone SEの方がまだ悪い気がするし、暗い場所の写りではiPhone 13 Pro Maxの方が良いが、一般的な撮影ではさほど問題なく快適に使えるのではないだろうか。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

とはいえ、光学での望遠や人間以外のポートレート撮影は搭載していないし、HDRでのビデオ撮影も、「シネマティックモード」でのビデオ撮影もできない。そこは上位機種との差別化点である。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

5Gの速度はSEが劣るが……?

今回は5Gに対応したこともポイントだ。iPhone SEのユーザー層を考えると「5Gになったから買う」というものではない、とは思う。むしろ「これから買うのだから5Gであるのが当たり前」「買ったら5Gだった」というところではないだろうか。スタンダードなスマホであるiPhone SEが5Gになるのは、そういう意味を持っている。

ただ、これは筆者の手元でのテストがたまたまそうだったのかもしれないが、iPhone 13 Pro Maxに比べ、5Gでの通信速度がちょっと劣る。サイズや設計の制約により、5Gの感度が少し弱いのかもしれない。

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

日常的な使い勝手で極端な速度差を感じたわけではなく、ベンチマークを測ったりすると「確かに違う」という感じだ。感度は良いに越したことはないが、これを問題だ、と思うなら「iPhone 13を買うべき」ということなのかもしれない。

「最高の性能ではないが、作りが良くて安価でちょうどいい」、iPhone SEの位置付けは第3世代でも変わっていないということか。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。