【続報】LINEがgumiと資本業務提携、100億円規模のファンドでゲーム会社の世界進出支援も

LINE舛田氏(左)とgumi國光氏

LINEとgumiが資本業務提携に基本合意したとお伝えしたが、その続報をお伝えする。

LINEとgumiの提携は、両社が海外展開を推進する上で最適なパートナーと考えたためだ。LINEのゲーム事業はアジアや南米ではヒットしているものの、「アメリカでは十分ではない」(舛田氏)。LINEは海外アプリランキングで上位に入るヒット作「ブレイブフロンティア」を持つgumiにコンテンツを提供してもらうことで、LINEが浸透していない地域でのプレゼンスを高める狙いがある。

LINEが国内の企業に出資するのは初めて。今後はgumi以外の企業にも資本参加したり、ジョイントベンチャーと共同で開発したゲームをLINEプラットフォームを通じて世界に配信していく。

LINE GAMEはこれまで、短時間で遊べるカジュアルゲームを数多く投入し、今までゲームをしなかったユーザーを獲得してきた。しかし、LINEユーザーが増えるとともにニーズが多様化してきたことから、gumiが得意とする「ミッドコアゲーム」(カジュアルゲームよりもやりこみ要素があるゲーム)も展開していきたいと、舛田氏は話している。

gumiがLINE向けに開発するコンテンツは未定だが、LINEの友だちと一緒に遊べるようにするなど、コミュニケーション要素を盛り込んだ内容になる予定。コンテンツをダウンロードしたユーザーにはLINEのスタンプやフリーコイン(有料商品を購入できる)を配布したり、LINE内から誘導することも検討する。

國光氏によれば、世界における2012年のスマホゲーム市場規模は3000億円、2013年は1兆円、2014年は2兆円、2016年には5兆円に達する見込み。日本や欧米だけでなく、全世界の市場が同時に成長しているといい、「その中で圧倒的にナンバーワンになるには、単独でやるよりも、LINEさんと組んで世界を圧倒的に取りにいきたい」と意気込みを語る。

國光氏は「LINEのプラットフォームはテレビCM級の破壊力がある」と、そのプロモーション効果に期待しているようだ。来年中には世界のゲームパブリッシャーランキングで現在トップ3である「ガンホー、Supercell、Kingの一角に入り、再来年中にはぶっちぎり1位を取りたい」と話している。

App Annieによる2013年ゲームパブリッシャーランキング

LINEは同日、「GO GLOBAL with LINE」をキーワードに掲げ、国内のゲーム会社を対象とした100億円規模の投資ファンド「LINE GAMEGlobal Gateway」を設立することも発表した。ファンド運営会社として、新たにLINE Ventures株式会社を立ち上げ、舛田氏が代表に就任する。投資対象は「初期ステージだけでなく、世界にチャレンジしたいと考えているパートナー」。投資の条件は「LINE GAME向けにコンテンツを提供すること」で、他のプラットフォームに展開することも可能だという。ファンドは9月から運用を開始し、10社程度への出資を見込んでいる。

スマホゲームはいまや、資本力がモノを言う市場。國光氏によれば、ゲーム開発費は年々高騰していて、「怪盗ロワイヤルが500万円くらい、パズドラやブレイブフロンティアであれば1億円から1億5000円。最近はさらに、嫌になるくらい上がっている」。海外で勝負するには、現地の優秀なスタッフを雇用してローカライズしたり、大量にマーケティングを行うなど開発以外の費用も欠かせない。

そこでLINEが立ち上げたファンドでは、ゲーム開発を資金面で支援するとともに、LINE GAMEのプラットフォームを通じて海外展開を後押しする。海外で多数のユーザーを抱えるLINEのプラットフォームに乗ることで、ゲーム会社はかなりのマーケティングコストを圧縮できそうだ。なお、日本のゲーム会社に限定したのは、「日本で産声を上げて世界進出を果たしたLINEのロールモデルを日本企業に還元したかったから」と舛田氏は語る。

「日本もアメリカ、韓国、中国もスマートフォンのゲーム市場は成熟し、大資本を持ったメーカーがどんどん参入している状況。その中ではグローバルに通用するIP(知的財産:キャラクター)を使ったアプリがランキングに入る。こうした環境にスタートアップ企業がチャレンジするのは難しいので、ファンドを立ち上げて支援することにした。」

あまり知られていないかもしれないが、LINEで大きな売り上げを占めているのはゲーム事業だ。子会社を含む2013年の連結業績を見ると、LINEの売上高は518億円。このうち、基幹事業であるLINE事業が343億円を占める。LINE事業の内訳ではゲーム課金が60%と最も多く、スタンプ課金の20%を大きく引き離している。ゲーム事業はLINEの優等生ともいえるだろう。

今回、ゲーム関連の発表が相次いだが、LINEは今後、ゲーム会社になってしまうのか。この点について舛田氏は、「LINE=ゲームプラットフォームではないし、そうするつもりもない」と明確に否定している。「LINEはコミュニケーションやEC、ゲームどで構成されるプラットフォーム。ゲームはいち早く始めたのでロールモデルができているが、今後はゲーム以外でも資本提携やジョイントベンチャーでパートナー戦略を加速していく。」


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TechCrunch Japan

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