【解説】250億ドル規模の中国の「独身の日」とは

11月11日は、中国のテックコミュニティにとってはめでたい日だ。というのも、世界最大のオンライン買い物デー「独身の日」だからだ。この日はダブルイレブンとして知られ、中国のeコマース大企業アリババが創設してから10周年となる今年は特に力が入っている。

独身の日は今ではかなりのビジネスとなっている。11.11は中国外のアジアやその他のエリアにも及び、昨年アリババは250億ドル超を売り上げた。アリババはこれまで前年比で順調に売り上げを拡大していて、中国経済や現在進行形の米国との貿易戦争に関する懸念があるものの、今回350億ドルを超えてもなんらおかしくない。

独身の日現象を分析したので、今年どんなことになるのか、予想の参考にしてほしい。

そもそも、独身の日って何?

このイベントは、米国におけるブラックフライデーやサイバーマンデーと似たようなものだ。しかしその2つを足したものより2.5倍大きい。アリババはTaobaoマーケットプレイス、Tmall、国際サービスAliExpressなどオンライン販売プラットフォーム上のあらゆるプロダクトを割引して販売する。最近ではグローバルビジネスになっていて、東南アジアにおけるLazada、アリババとAntファイナンシャルが出資するインドのPaytmも含まれる。

このセールは、スマホ、テレビ、その他高価なコンシューマーアイテムはもちろん、ファッション、衣服、家具、健康プロダクトなどもカバーする。さほど売れないだろうと思われるものとしては、掃除プロダクト、トイレットペーパー、腐りやすいものがある。大きな需要があるものとしては車があげられる。

昨年は世界で計14億8000件もの販売があり、ピーク時は1秒あたり32万5000件の注文があった。アリババのAlipay支払いサービス利用は15億件を記録し、注文総数は8億1200万件だった。実にセールスの90%はモバイル端末経由だったーこの点は米国より進んでいて、ブラックフライデーでのモバイル経由買い物は37%サイバーマンデーでは33%だ。

アリババはまたこのセールをオフライン小売でも促進している。自社ブランドのHema、そしてテック大企業Suningハイパーマーケット運営Sun Artのような中国の大手小売とのパートナーシップを通じて実店舗にも拡大している。

コアマーケットである中国外でもこのセールを成長させようというアリババの努力を反映し、このセールは2015年に名称を “11.11 グローバルショッピングフェスティバル”に改めた。そして昨年は6万超もの国際ブランドと、225カ国超からの客をひきつけた、としている。

始まり

11月11日というのは必ずしも、オンラインでディスカウントされた商品を買うというのと同義語ではない。この日が1990年代に中国で取り上げられるようになったのは、11月11日が4つの“独身”を表すとして独身貴族を祝おうというのが始まりだったとされる。その後、人との関わりを祝うという新たな意味が加えられたー結婚を意識したかなり人気のデートだーそして可能性のあるお相手を見つけるのだ。

eコマースの要素が加わったのは2009年で、Daniel Zhangというエグゼクティブがこの日を、わずか27の小売が参加していたアリババのブランド品のヴァーチャルモールTmallの販促に使った。その後Tmall事業の担当となったZhangはいまやアリババ本体のCEOで、何年にもわたってアリババの表看板を務めたJack Maが来年引退するとき、その後を継いで会長となる見込みだ。

2009年にさかのぼるが、アリババは初の独身の日で約700万ドルの利益をあげた。今週ZhangがCNBCに語ったところによると、彼はこの販促がアリババとeコマース全体の両方にとってこのように大きな現象になるとは“思いもしなかった”という。

アリババを追う動き

独身の日が国家的な祝い事になるにつれ、JD.comやPinduoduoといった他のeコマース事業者も、消費者が金を使うこの月に資金を投入するようになった。たとえば、QuestMobileのマーケット調査によると、JD.comは昨年の11月11日にモバイルアプリのアクティブユーザーが21.1%増えた。

このイベントが国民に受け入れられたことで、年間を通して展開される他の競合するフェスティバルも活発になった。取引高でアリババについで2番手のJD.comは2010年、独身の日フェスティバルを12日間にわたって開催した。そして6月18日開催の中間ショッピングイベントを始めた。中国の家電量販店大手Suningは8月18日をセールスイベントにあてている。

しかしながら後発組のいずれもが独身の日規模には成長しておらず、アリババは世界最大のショッピングイベント拡張路線をひた走っている。

数字だけではない

独身の日は毎年成長しているが、売上はスローダウンしている。総流通量における前年比の成長は2014年に65%弱だったのが、2017年には約40%に落ちている。

しかしJack Maはいつもこうした数字の重要性を控えめに扱ってきた。2013年11月11日の前夜、彼は売上の数字は追い求めていないと中国メディアに語った。彼はその後も似たようなメッセージを繰り返している。

スケールよりも、Maは“着実な”成長を求めていると語った。それは、ショッピング騒動がロジスティックや支払いといったファンクションを強化するインフラに負担をかけることを余儀なくされるからだ。

Maの言葉は、アリババが引き続き小売のエコシステムを強化するパートナーを探しているということと一致している。昨年、アリババはHuitongdaに7億1700万ドルをつぎ込んだ。Huitongdaは地方客向けのオンライン小売のためのインフラを運営していて、また独身の日にも参加している。

同じように、アリババのファイナンシャル部門のAntファイナンシャルはeコマース企業がグローバルで展開するのをサポートするために世界中の多くの支払いソリューション企業と提携してきた。一方で、アリババのクラウドコンピュータ部門は250億ドルの商品を売るという需要をさばいている。そしてロジスティックプラットフォームのCainiao Networkもある。こちらは、昨年中国であった注文8億1200万件を処理するのを手伝った。

独身の日により、アリババは大規模にテクノロジーを取り込むようになっている。昨年、アリババはARにベンチャー投資した。Maybellineはバーチャルで客に口紅をお試しさせ、Nikeは客をひきつけるためにゲーミフィケーションを活用し、アリババのTmallサービスは衣類の販売を促進するために“バーチャル試着室”を取り込んだ。

オフラインの売上

アリババの会長Maはまた、独身の日にとって何が標準になるのかも予言している。「我々は全てのeコマース企業が参加するようにしたい。実在店舗のモールもその一部となるだろう」と述べている。

2016年、Maはオンラインとオフラインの販売の間でシームレスな統合の未来を描くのに“新小売”という言葉をつくり出した。昨年は独身の日フェスティバルのオフラインを進めた。今年は実在店舗20万店が独身の日に行うアリババの客向けのディスカウントを登録した。たとえば、ユーザーはモールでの支払いにアリババのAlipay e-walletを使うとき、オフラインのディールを利用できる。アリババはまたコンペティションの賞金を授与するのにAlipayを使っている。

アリババは昨年、新小売が11.11で“将来性があることをうかがわせた”としている。しかし具体的な数字を明らかにするのは拒否した。今年は、アリババの実店舗の成長を考慮したときー今や30以上の店舗があり、顔認証による支払いも導入しているーオフラインの存在はこれまでになく重要になっている。HemaやInTimeの実在店舗での買い物の他に、Ele.meやースターバックスの配達もだ他のローカルなデリバリープラットフォームも含む。

2018年はどうなるか

今年の独身の日がどうなるかを予想するのは難しい。というのも中国経済の停滞や、米国との関税戦争が背景にあるからだ。とはいえ、アリババの販売の大半は11.11そして年間を通じて中国で行われていて、国際的にも成長しているものの米国政府の制裁措置の影響は限定的だろう。

以下、キーポイントを挙げる。

成長率は減速:アリババの四半期収入は順調に伸びている(40%強)が、成長率そのものはスローになっている;これは11.11にもあてはまる

オフライン:アリババはeコマース飽和を相殺するために、実店舗で買い物する人のためのディールを用意してオフライン小売を促進している。

サービス:オンデマンドサービスとデリバリープラットフォームー300億ドル規模とされているーが11.11ディールを提供することで中国において重要な役割を果たす。

支払い:Alipayはオンライン、オフラインいずれでもアプリを使って支払う人にディスカウントを提供することで11.11ディールを拡大させている。

よりグローバル:アリババのグローバルでの存在感は増し続け、東南アジアで一層11.11を促進している。すでに中国拠点の販売業者とのつながりを確立し、その一方でロシアパキスタン/南アジアに協業するベンチャーを抱えている。

どのみち、アリババは11.11で世界にすごい光景を見せる。

まず最初にフェスティバルの前日に行われるきらびやかなエンターテイメントショーがあり、その後24時間、アリババのツイッターアカウントで絶え間なくアップデートが展開される。我々も最新の状況をここTechCrunch.comで展開するので、続報をお見逃しなく。

 

イメージクレジット: VCG / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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