【Twitter、Snapchat編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その1)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicというポッドキャストでは、D2C企業の話や最新テックニュースを解説しています。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

Facebook、Twitter、Instagram、Snapchat、TikTokなど、さまざなSNSが日々使われている中、米国では「次のSNSプラットフォーム」をVCたちが探している。もうすでにSNS市場は成熟していると思う読者もいると思うが、実際は違う。今新しいSNSを立ち上げるには絶好のタイミングなのだ

SNS第1世代と言われるFacebookやTwitterは、2004年~2006年にサービスを開始。第2世代は、2010年~2011年にかけて写真をメインとしたInstagramやSnapchatが誕生した。そしてMusica.ly(現TikTok)が2014年にローンチ。過去の傾向からみると、3~5年の間で新しいSNSが誕生している。その理由は、新しい行動変化や既存のトップSNSへの不満を感じ始めるからだ。その不満については記事の後半で説明する。

まずはFacebookを除いて、今米国でのSNSを見てみよう。各SNSをどう使うべきなのか、どう言う戦略を考えているのかなどをまとめた。この記事では、TwitterとSnapchatの最新事情について紹介する。InstagramとTikTokの最新事情についてはこちらの記事、注目の次世代SNSについてはこちらの記事を参照してほしい。

知識やニュース共有の場「Twitter」

Twitterはエンターテインメントというよりは、知識やニュースの共有場として成り立っている。企業としては今のステータスの共有が出来るし、個人はInstagramやTikTokでは集められない層にリーチして、エンゲージが出来る。ほかのSNSの中でも最も有名人や業界のリーダーとフランクに話し合える場とも言える。いまだと大学の単位よりもTwitterアカウントのほうが価値があると言う人も出てきている。

事例1:スレッド機能で小出しにプロモーション
有名な事例では、Disney+はローンチ時に素晴らしいTwitterのスレッドを展開した。まさにTwitterに合わせたコンテンツで、スレッドで700以上の返信、ローンチ時でリリースする作品を1つずつ紹介。自社のIP(知的財産)の強さと深さをうまく表現するプロモーション方法だ。

公開を少しずつ小出しにしていき、常にタイムラインにDisney+の情報が載るように時間をかけて投稿し続けた。

作品を別々のツイートにすることによって作品のファンがリツイートしやすいようにしている。こちらがそのスレッドをツイートした数日後のエンゲージメントの数字。やはりかなり高いことがわかる。

引用:Convivaデータより

Netflixも似たようなキャンペーンを行った。2020年に公開する映画をツイートスレッドで発表したが、ちょっと物足りなかった。

比較すると違いがわかる。コンセプトアートを含めているDisney+のほうが圧倒的にシェアされる気がする。

NBAの方法にも注目だ。NBAはスポーツ業界の中でSNSを一番うまく活用していることは、去年末に投稿されたツイートを見ればわかる。過去10年のトップ20のダンク集を1つずつ出すスレッドを投稿しで各動画に出たプレイヤーやチームのファンがリツイートできるようにしたのだ。

さらに、YouTubeではトップ100のダンクまとめ動画を公式で公開。YouTubeだともっと長いコンテンツが見られるし、それでより広告収入も得られる。

事例2:著名人への質問を飛ばすQuora的な使われ方
最近TwitterがQuora化している風に見える。Q&AやAMA(Ask Me Anythin、なんでも私に聞いてね)を実施している人が増えている。

事例3:メッセージ性のあるプロフィール名の変更
プロフィール名を変えるだけで、一番伝えたいメッセージを多くのユーザーに伝えられる。過去にWendy’s(ウェンディーズ)、Slack、Airbnb、Chipotle(チポトレ・メキシカン・グリル)など行っている。ウェンディーズでは、人気メニューの復活キャンペーンでプロフィール名を「WENDY’S SPICY NUGGETS ARE BACK!!!」(ウェンディーズのスパイシーナゲットが帰ってきた!!!)と告知した。

Slackではダークモードのリリース時に「Slack *does* have dark mode now, yes indeed.」(Slackにはダークモードが「あり」ます、本当に)と変更。

Airbnbは300以上の新しい動物に関しての体験を提供開始したことを合評した。

直近での面白い事例は、メキシカンチェーン店のChipotleがプロフィール名にSMS(ショートメッセージサービス)の番号を公開。この戦略を使って、ワカモレ(メキシコ料理のサルサの1種)を無料で提供。しかもこれはCTA(行動喚起)が明確で「SMSしたらどうなる?」ときになる人も多いだろう。

事例4:「あえて」ハッシュタグを使わない
マーケティングがうまいApple(アップル)とDisney(ディズニー)の広告を見ると、ハッシュタグを入れてない。意外とハッシュタグを入れたほうが悪い結果になるときちんと理解しているのだ。

入れない理由はいくつかある。まず、多くのブランドがハッシュタグを入れてきたせいでみんな見なくなり、スパム扱いとなっていること。そしてブランド側としては広告を出して自分のランディングページに行かせるのが目的なのに、ハッシュタグを入れると違う場所にユーザーが行ってしまうチャンスを与えるのは意味のないこと。

毎日のコミュケーションのひとつ「Snapchat」

Snapchat CEOのEvan Spiegel(エヴァン・スピーゲル)氏は面白い視点でSNSについて思っている。ミュンヘンで開催された「Digital Life Design 2020」イベントで同氏は、Snapchat、Instagram、TikTokを1つのピラミッドでポジショニングの違いを説明した。

引用:Evan Spiegelの2020年登壇内容を基に作成

このピラミッドの下層、一番キモとなるのは日々起きる友達同士の「コミュニケーション・自己表現」。スピーゲル氏はここにSnapchatが入っていると主張している。Snapchatは、友達間での心地よいやり取りを可能としているプラットフォームだ。

そしてピラミッドを上がるにあたり、「ステータス」のレイヤーに入る。初期のSNSはほとんどここに入っていると説明している。「いいね」やコメントを求めて自分の価値を表すプラットフォーム。ただ「コミュニケーション」レイヤーよりはアピールがなく、よりハードルが高い。それはなぜかというと、ステータスに見合うコンテンツ作成(いわゆるインスタ映え写真)を常に投稿するのは難しい。そうすると頻度が落ちるのとともに、全ユーザーが共感するコンテンツを制作できない。

そして一番上が「タレント」領域。数時間かけてダンスを学ぶ、もしくは数時間かけて面白いネタやストーリーを考えるコンテンツクリエイターがそろっている。そうするとクリエイター側はより狭まる。難しいダンスをわざわざ学びたい人はインスタ映えを撮れる人より少ない。ただ、コンテンツを見ると時間をかけているぶん、「ステータス」レイヤーよりも面白い。そのためTikTokがInstagramを超える可能性があるとスピーゲル氏は話している。ただ、Snapchatに入るには圧倒的に機能の変更とユーザーの行動変化(TikTok上で会話)が必要なため、恐らくスピーゲル氏はTikTokを恐れてない。

同氏の説明を聞きたい読者は以下動画を参照してほしい。

Snapchatはこの「コミュニケーション」レイヤーをまず固めている。1990年代後半~2000年生まれのZ世代の中では使う頻度が多少下がっているかもしれないが、実際には圧倒的にSnapchatは使われている。日常のコミュニケーションツールとして使われている中、Snapchatは去年あたりから本格的に次のステップ、いわゆるFacebookやInstagramを対抗するための秘策を売っている。

その戦略はSnapchatをほかのプラットフォームに広げること。対等にSnapchatはFacebookやInstagramと戦って、かなり苦しんだ。元々Storiesと言う非常にニーズにあったコンテンツフォーマットを持っていたのが、Instagramにコピーされてしまった。そこでスピーゲル氏は別の作戦を採った。過去にFacebookログインのように、Snapchatはここ数年行ったこととは、自社機能をどうSNS以外の成長しているプラットフォームに乗れるか。アイデンティティー、コンテンツフォーマット、そして開発キットをリリースしたのがこの戦略を明確にしている。

Bitmojiからのアイデンティティー共有

過去のNote記事にも記載したが、Snapchatは過去に買収したBitmojiをうまく活用している。Snapchat上で作ったアバターがほかのプラットフォームで見るようになると、Snapchatで作り上げたものが自分のライフスタイルの中心となってくる。その気持ちをうまくキープできるかがSnapchatの今後の見どころ。Snapchatは明らかに通常のSNSからエンタメ(ゲーム・番組制作・AR)にシフトしている。SnapchatはFortnite(フォートナイト)やゲームが次世代SNSになり得ると感づいてこの取り込みをしている気がする。

Facebookもそれに気付き、直近でFacebook Avatarsをローンチした。

関連記事:Facebook Avatars, a Bitmoji competitor, launches in Europe

Snapchat Stories機能の広め方

SnapchatはStories(ストーリーズ)機能を出したときは大ヒットし、そのあとInstagramにコピーされた。その次にFacebookとWhatsappにも同じ機能が出た。そしてStoriesと似た機能がYouTube、Twitter、LinkedIn、SoundCloudなどで開発されている中、スピーゲル氏は去年Snapchat Storiesをほかのプラットフォームで投稿できるように発表、そして2020年3月末にリリースした。

Facebookファミリー(Facebook、Instagram、Whatsapp)が圧倒的な強さを見せる中、ほかのプラットフォームと一緒に組むことで勝ち筋を作りに行っているのはほかのプラットフォームには過去なかった戦略。ただ、Bitmojiをはじめ、Snapchatとしては自然な展開となっている。Snapchatを起点にコンテンツ制作・アバター制作をすると、自然とほかのアプリ・プラットフォームでも同じアバターとコンテンツが出てくる。他社プラットフォームとしてはエンジニアのリソースをStoriesコピーに使わなくてよく、Snapchatのオーディエンスからの送客としても使える。

そしてSnapchatはこれによってどういうアプリにコンテンツやアバターが存在するのかがわかり、よりユーザーのデータを取得。そのデータと、よりコンテンツがさまざまプラットフォームに出ているのでマネタイズ(広告)がしやすくなる。Snapchatは10代から二10代前半のリーチができていて、メッセンジャーを起点とした戦い方を示している。それを加速させるために第三者の開発ネットワークを作った。

Snapchat Kitのすごさ

このStoriesとBitmojiの裏側にはSnapchat Kitと言う開発キットがある。さまざまなパートナーがSnapchatの各種機能と連携して、お互いベネフィットを生み出せる仕組みを作っている。過去には、Netflix、GoFundMe、VSCO、AnchorなどがSnapchatのステッカーを使えるようにしたり、Washington Post(ワシントン・ポスト)の記事をSnapchat上で共有できるようにしたり、Zynga(ジンガ)やZeptoLab(ゼプトラボ)がチャット内でゲームをプレーできるようにもしている。さらにSnapchat Kitの中にはFacebookログインと同じLogin Kitが存在する。

過去1年で最もダウンロード数が上がったアプリを見ると、多くのアプリがSnapchat Kitをベースに作られている、YOLO、Hoop、LMKなど、もしくはSnapchat Kitと連携している、TikTok、Triller、Yubo、Venmo、Audiomackなどがリストに載っていた。

引用:Damir Becirovic氏のTwitterから

買収したスタートアップを機能に落とし込む能力

Snapchat Kitを含め、Snapchatのプロダクトを見ると多くの機能は買収したスタートアップからきた事がわかる。

  • 2億1300万ドルで買収したZenly→Snapchat Map
  • 1億6600万ドルで買収したAI Factory→Cameos
  • 1億5000万ドルで買収したLooksery→Lenses
  • 6500万ドルで買収したBitstrips→Bitmoji
  • 5000万ドルで買収したScanMe→Snapchat Code
  • 3000万ドルで買収したAddlive→Video Chat

今後もSnapchatの買収戦略、そしてプロダクトの広め方、Facebookとの優位性の付け方に注目するべきだろう。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
The Era of Participatory Social(Medium)
The Sound of Silence(Posthaven)
Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。