お互いの画面を操作できる画面共有ツール「Screen」を無料で試せる

どのアプリでもGoogleドキュメントのように共同作業ができる。Screenは無料で使えるインタラクティブな画面共有アプリで、利用者それぞれのカーソルがあるので、ボイスチャットやビデオチャットをしながら、別の人のアプリ内で操作をしたり図を描いたりコードを入力したりすることができる。デザインの共同制作、ペアプログラミング、コードレビュー、共同でのデバッグなどが簡単にできるほか、先生から生徒への指導にも使える。

Jahanzeb Sherwani(ジャハンゼブ・シェルバニ)氏はかつて画面共有ツールのScreenheroをSlackに売却したが、十分に使える形でSlackアプリに組み込まれることはなかった。それから5年経った米国時間3月24日、同氏はScreenを急きょ、無料で公開した。新型コロナウイルスの影響で仕事が滞っている人々を支援するためだ。

シェルバニ氏によれば、Screenは「ほかの画面共有ツールのエンド・ツー・エンドのレイテンシーが100ms~150msであるのに対し、Screenは30ms~50msで、2~5倍高速だ」という。Screenには驚くほど幅広い機能があり、どれもきびきびと動き直観的に使える。Screenを作っているのはわずか2人のチームだ。シェルバニ氏は「資金提供を受けずに、100%自分たちだけでやってきた。これからもそうしていきたい」と語る。だから、投資家からエグジットを迫られることなく、自分の行き先を決められるわけだ。

Screenには、以下のような機能がある。

  • 小さいウインドウでオーディオ通話やビデオ通話をしながら、Mac、Windows、Linusのデスクトップから画面を共有する。あるいは、通話に参加しながらブラウザまたはモバイルから画面を見る
  • 自分のカーソルを使ってほかの人が共有している画面を操作し、自分のコンピュータを操作するのと同様にほかの人のコンピュータを操作したり入力したりする
  • 共有された画面上に線などを描いて「綴りが違う」とか「これをこっちに移動して」などと注釈をつけられる。描いたものは数秒後に消えるが、マウスのボタンを押したままにするか、Caps lockキーを押した状態にしている間は消えない
  • 自動ですぐに消えるテキストでコメントを投稿できるので、声を出せない場所にいても共同作業ができる
  • SlackからScreenのミーティングを起動したり、ミーティングのスケジュールをGoogleカレンダーと統合したりすることができる
  • ログインする必要がない人や社内の人に招待用のリンクを共有できる。ほかの人があなたの画面を操作できるので注意が必要

Screenを使う場合、通常、ミーティングへの参加は無料で、ミーティングを主催する場合には1カ月10ドル(約1100円)、エンタープライズでは1人あたり1カ月20ドル(約2200円)の費用がかかる。しかし現在は、シェルバニ氏によれば「新型コロナウイルスが流行していても、健康と生産性を維持してほしい」として、ミーティングの主催も無料だ。ただし「有料ユーザーが我々のランニングコストをまかなえる程度の数になるだろうという期待を持って実験している」(シェルバニ氏)とのことなので、利用料金を支払える状況にあるなら支払いをしよう。

ScreenはZoomなどビデオ通話大手の買収のターゲットになるかもしれないが、シェルバニ氏は今回は売却したくない模様だ。2013年に立ち上げたScreenheroは、その当時としてはきわめてパワフルで、現在のScreenにあるツールの一部はすでに実現されていた。しかしScreenheroは180万ドル(約2億円)を調達した後でSlackに買収されたものの、その後、その性能を活かした統合とはならなかった

シェルバニ氏は「買収から3年近く経ってようやくインタラクティブな画面共有が公開されたが、Screenheroのように高性能なものではなく、結局2019年には削除されてしまった。Slackユーザーのごく一部にしか使われず、高額な維持費がかかるため、Slackとしては妥当な判断だった」と述べる。そしてScreenのように独立して運営される企業の利点を、同氏はこのように説明する。「複雑なソフトウェアを別のソフトウェアに組み込もうとすると、多くの制限があり、費用がかかる。1つだけで便利に使えるスタンドアロンのアプリケーションにする方がはるかに容易だ」。

確かにScreenには、多くの便利な機能がある。筆者は妻と一緒に試してみたが、レイテンシーは少なく柔軟で、この記事を楽しく共同制作することができた。もし若者がScreenを手に入れたら、ソーシャルな使い方がたくさん出てくるであろうことは想像に難くない。画面共有という概念は、Squadなどのアプリや、インスタグラムが米国時間3月24日に公開したCo-Watchingという新機能などで、広く知られつつある。

インスタグラムのCo-Watching機能は画面共有に似ている

Screenは、将来的にはバーチャルオフィス機能を公開して同僚とすぐにミーティングができるようにしたいと考えている。これが実現すれば、いつでも会話を始めることができ、同じ室内で仕事をしている感覚になるかもしれない。Screenは、マネージャーがしゃべるトップダウンのブロードキャストのようなミーティングを、誰もが発言できるジャムセッションに変えることで、リモートワークの風景を民主化することになるかもしれない。

シェルバニ氏は「一緒に働くときは、みんなが席についていることが必要だ」と結論づけている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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