“お金以外”の報酬も選べるセールス向け副業マッチング「Kasooku」が公開

“副業元年”と呼ばれた2018年以降、さまざまなメディアで副業関連のニュースや特集を目にする機会が増えた。

社会全体で見ればまだごく一部かもしれないけれど、特にスタートアップ界隈では副業を認めている会社の例をちらほら耳にするし、僕の周りにも本業とは別の会社に副業で関わっている人が何人かいる。

それに伴って、以前副業サービスをまとめたカオスマップを紹介したように副業を後押しする環境も徐々に整ってきた。

本日5月21日に公開された「Kasooku(カソーク)」もまさに副業を軸に個人のスキルアップや視野の拡大、そして企業の成長を支援するプラットフォームの1つだ。

副業したい個人と企業をマッチングする仕組み自体はもはや珍しくないが、このサービスのわかりやすい特徴は「セールス」領域に特化していること。構造はかなりシンプルで、セールス領域の副業人材を募集したい企業が案件を登録し、ユーザーは気になるプロジェクトに応募する。

企業側は報酬として金銭以外のサービスやプロダクト、オリジナルTシャツなどのノベリティを設定することも可能だ。

たとえば副業未経験のユーザーが気軽に参加しやすいような仕掛けとして金銭以外の報酬を用いたり、自社サービスのファンとコラボレーションする目的でオリジナルグッズを報酬にしたり。企業側は副業を少し幅広く捉えて、柔軟な設計ができる。

利用料金については、ユーザー側は完全に無料。企業から収益を得るモデルだ。各企業は無料で募集ページを公開でき、累計で5名までの応募については無料でプロフィールを閲覧可能。5名以上のプロフィール閲覧については有料となる。

セールス出身の経営陣が事業を牽引

Kasookuを運営するドゥーファは2017年3月の設立。創業者で代表取締役会長を務める一戸健人氏はDYMで顧問紹介事業を立ち上げ事業の成長に携わった後、MCJ・DYMパートナーズの取締役社長としてスタートアップの資金調達を支援。独立後にドゥーファを立ち上げた。

2018年に投資家兼アドバイザーとして同社にジョインし、現在は取締役社長を務める岡本葵氏は新卒で入社したリクルートでセールス職を経験。前職のKaizen Platformではビジネスサイドやプロダクトマネージャーなど幅広い業務を担った。

「顧問紹介事業で多くの企業を支援してきたが、セールスで困っているスタートアップやベンチャーは非常に多い。経営層に近いレイヤーの方々のネットワーク作りやセールスを支援することはできても、現場のレイヤーで支援できることがないか、ということは常に探していた。副業・複業という働き方が少しずつ広まっていく中で、この市場で、包括的にセールスの支援をできる会社をつくりたいという思いから創業に至った」(一戸氏)

「セールスという仕事は本質的に人とのつながりの中で、新しい価値につながる企画や仕組みをつくるというユニークで面白いものだと思っている。ただこの職種の面白さは『1つの企業だけではなく色々なフェーズ、ビジネスモデルをやるからこそ、さらに引き出される部分もあるのではないか』と思う部分があり、副業×セールスのテーマをやるドゥーファにジョインした」(岡本氏)

副業領域も含めて人材業界では特にエンジニアのマッチングサービスが増えてきているが、岡本氏によるとエンジニアはスキルが可視化しやすいため、比較的マッチングがしやすいという。

一方でセールスはスキルシートなどによるスキルの定量化などがあまり進んでおらず、未だにタイプでマッチングしているようなケースも多い。エンジニア領域以上にテクノロジーなどを活用して介入できる余地が大きいと考えたことも、セールス領域から事業を始めた理由の1つだ。

ドゥーファのメンバー

“副業”で個人の経験最大化、就業機会の最大化を後押し

Kasookuでは本日の正式リリースに先駆け、昨年10月からテスト的にアナログで副業人材と企業のマッチングを行ってきた。期間中にだいたい約50社に対してマッチング実績ができたという。

企業側では特に「創業間もないスタートアップ」や「レガシーな業界のため就職先として敬遠されがちな企業」からの問い合わせが中心だ。

創業間もないスタートアップでは、優秀な人材をフルタイムで何人も雇うことは難しい。そこで副業を活用してスポットでジョインしてもらい、プロジェクトの立ち上げを支援してもらうという事例はイメージしやすいだろう。

またある種、“人材採用のリスクを抑えるため”に副業を使いたいという声もあるそう。典型的なのはビジネスサイドの起業家がエンジニアを、もしくはエンジニア起業家がセールスなどビジネスサイドの人材を採用したい場合。

相手のスキルセットを正確に判断できない状況で採用を決めないといけないため、お互いの最終判断に必要な材料を集めるために副業を活用する形だ。

一方で副業をするセールス人材側は大きく「大企業やスタートアップの現場で働くメンバー」「マネジメント層」「フリーランス」という3つのタイプに分かれているという。

セールスの現場で働く人材については「自身のキャリアを考えた時に、自社だけではできない経験を通じて新しい経験値を得たいというニーズが多い」(岡本氏)とのこと。そのほか自社ではマネジメントする立場になったけれどプレイヤーとしても働きたいというマネージャー層や、セールス領域の案件を探すフリーランスなどが主な利用者層だ。

「副業という働き方を通じて『個人の経験最大化、就業機会の最大化』を実現したい。自身の経験値を増やそうと思った時に、社内で頑張ったり人事と交渉する以外にも打席の数を増やせる仕組みがもっと合ってもいいはず。転職も1つの手段ではあるが、そこにハードルやリスクを感じる人も多いので副業という選択肢をもっと広げていきたい」(岡本氏)

ドゥーファでは昨年にLITALICO創業者の佐藤崇弘氏やVapes創業者の野口圭登氏、そのほか上場企業経営者など複数の個人投資家から約6000万円の資金調達を実施済み。

ゆくゆくはKasookuのセールス領域以外への展開も含めた機能拡張のほか、副業を支援するプロダクトの開発なども視野に入れつつ、事業を加速させる計画だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。