この先Appleによるスタートアップの買収は活発化するのか?

【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

Appleは、地球上のどのテクノロジー企業よりも多額の現金を持っている。それにもかかわらず、これまでその現金は、あまり買収に使われては来なかった。

Crunchbase Newsの分析の結果判明したのは、Appleは、海外口座に保管された資金を含む、現金および現金同等物の合計が、2600億ドルを超えていると推定されているにもかかわらず、過去5年間で米国で最も高い評価額を誇る「Big Five」の中でも、M&Aに費やした金額が最も低い会社だということだ。

まだ買収のタイミングではないのだろうか?今週判明した、音楽発見アプリ「Shazam」の4億ドルの買収は、高価な買い物をする意欲はあることを示している。しかしAppleがこの種の大規模な取引を行うことは極めて稀であることは、歴史が示している通りだ。

各種の数字

Crunchbaseのデータによれば、2013年以来、iPhoneのメーカー(Apple)は、M&A案件に対して、開示された分だけで、総額51億ドルを投じている。ただしその額の半分以上が、単一の取引に使われたものだ。その取引とは2014年、音楽テクノロジー会社Beats Electronicsを30億ドルで買収したときのものである。

買収件数だけを見れば、Appleはかなりアクティブな買い手のように見える。2013年以来、アップルは55社の未上場会社を買収したが、そのうち11社は価格が公表されている。上の51億ドルは、その11社だけに使われた金額だ。

Appleが金額を公表せず買収した残りの44社は、主に設立したばかりのスタートアップ企業たちである。購入価格は確認できないものの、そうした取引は一般的に1億ドルを下回り、多くは数百万ドル程度のものだ。

下の図は、過去5年間のAppleのM&A実績を示したものだ。取引回数は、最低の8回から最高の13回に及んでいる。

Big Fiveの中でAppleのランク

スタートアップを買うという話になると、AppleはBig Five(他の4つはMicrosoftAmazonFacebookGoogle)の中で、最も意欲がないというわけではない。

実際、ベンチャー支援企業に対して大金を払うことに関しては、Amazonが最も消極的である。最近Amazonは、AppleよりもM&Aに、より多額の金額を費やしたが、それはほぼ全額が、137億ドルの上場会社、Whole Foodsの買収に使われたものだ

とはいえ、Appleは驚異的な利益を上げている企業だが、その一方Amazonは非常に薄い(ときにはゼロの)マージンの下で莫大な収益を挙げていることで知られている。それはまさに、リンゴとリンゴを比べるようには比較することはできないものだ。さらに、Appleは近年、公開企業を買う食欲は見せていない。

一方で、買収数では、アップルはBig Fiveの中ほどの位置を占めている。買収数の合計はFacebookやAmazonよりも高く、Microsoftと同等で、Googleよりは遥かに少ない。

下の図では、過去5年間のBig Fiveによる、買収の取引件数と公開された買収金額が示されている。

この先派手な買い物が控えているのだろうか?

Appleがこの先の何回かの四半期の中で、特に米国企業に対する買収意欲を高めていくことには理由がある。

税法の変更もその理由の1つだろう。米国の議会は、現在海外にある資産を米国内に呼び戻した企業に対して、安い税率を課そうとしているように見える。それはおそらく、Appleが米国内の企業の買収に使うことのできる国内資産の増加に寄与することになるだろう。また法人税率の引き下げによっても、その巨額の資産はさらに大きくなるだろう。

Appleはまた、より多くの製造拠点を米国内に移管する戦略を策定したが、それもまた買収を促進することになるだろう。今週Appleは、テキサスに拠点を置くFinisarへの3億9000万ドルの投資を発表した。FinisarはiPhone Xのカメラで使用される部品を製造している。これは買収ではないが、この投資は、Apple製品に競争力をもたらす技術開発者たちに、多大な費用を費やす意欲を示すものだ。

ということで、2018年は、Appleがついにその大量の現金保有にふさわしい、気前の良い買収をする年となるのだろうか?「はい」と答えたくなる理由は目白押しだが、一方Appleはその資産を多大な投資で得たのではないという点にも注目せずにはいられない。そしてこれまでのところ、世界で最も価値のあるテクノロジー会社としての地位を守るために、Appleはそれほど高価なスタートアップの買収は必要として来なかったのだ。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: LI-ANNE DIAS

投稿者:

TechCrunch Japan

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