ご近所SNS「マチマチ」がローンチ1年で首都圏中心に約2000の町で展開中

実名制のご近所SNS「マチマチ」については、約1年前の資金調達とローンチの発表時にサービス概要をお伝えした。実名でユーザー登録をして、ご近所さん同士で気軽にコミュケーションができるソーシャルサービスだ。1年が経過して、どうなっただろうか?

マチマチを運営するProper共同創業者でCEOの六人部生馬氏(左)と共同創業者でCTOの藤村大介氏(右)

共同創業者の六人部生馬氏によれば、ローンチから約1年が経過して、首都圏や大阪、福岡などの都市部を中心に約2000の展開町数となっている(マチマチはその名の通り「町」ごとにコミュニティーを作っている)。アクティブユーザーの伸び率は月次で20〜30%。首都圏に加えて、大阪や福岡といった都市部での利用が多いという。利用者層としてファミリー層が多いのは想定通りだったものの、意外だったのは上京したての学生や新社会人といった独身の若者や、一定の年齢を超えて地域に戻って来るシニア男性が利用していることだそう。確かに土地勘がなければ、とりあえず情報を集めたくなるというニーズはありそうだ。

ぼくが住む東京・港区の東側地域で試したところ、同地域の利用者は50人前後。子どもの習い事やスイーツのおすすめ情報といったことで、かすかに交流が始まっているという感じだった。投稿のジャンルとしては「一般」「質問・疑問」「ママ・子育て」「おすすめ情報」「あげます・売ります」「防犯・防災」「お仕事・バイト」「ペット」「地域の課題」「物件情報」というのがある。質問に答えたり、情報をシェアする仕組み自体はFacebookなどと変わらない。

六人部氏によれば、マチマチがスタートした渋谷区がいちばん活動が活発で徐々に同心円状にコミュニティーが広がっているところという。地域で活動している自治体、町会、商店会、NPOなどの利用も増加していて、主にイベント機能を利用して集客に活用を始めているそうだ。

ローンチ当初は住所確認を経て参加できるオンライン・コミュニティーというコンセプトだったが、現在はここを少し緩めている。郵送による住所確認をはぶき、SMSによるケータイ番号の認証だけと比較的シンプルな登録制へ移行している。米国のご近所SNS「Nextdoor」を参考にして考えたポリシーだったが、日本では郵送による身元確認は離脱率が高すぎたということのようだ。日本の場合、SMS認証でも十分ということが分かったそうだ。地域コミュニティーをまとめる「リーダー」というポジションを設置していたが、これも日本人の肌に合わないことから廃止したそうだ。地元の名士のような参加者がいても、自分をリーダーと名乗るのは気が引けるという日本人らしい理由があるという。

もう1つ「徒歩圏内」(半径800メートル程度)に住んでいる人が集うとした参加単位も変更して、少し広い範囲の地図を提示して、ユーザー自身に参加範囲を町単位で選択できるように変更したという。下の画像をみれば分かるとおり、チェックを付けることで参加地域を動的に変えることができる仕組みだ。夫婦で知りたい範囲が異なることがあったり、そもそも「ご近所」という概念が主観によるところ大きいのも背景にある。川向こうは文化的にも別の町、ということもある。

現在悩んでいるのは在勤エリアのコミュニティーのニーズをどう取り入れるか。ただ、ニーズがあるのは分かっていても、在勤者と居住者ではニーズが違うのでリテンションが下がるリスクがある。今のところは居住者に絞っていろいろ試しているところだという。

想定していたファミリー層については、ちょっと面白いニーズが見えてきたという。

ファミリー層というのは「ご近所の範囲」で引っ越すケースが非常に多いらしい。家族というのは子どもの学校や地域活動を通して徐々に地域に根を下ろす。このため少し広いところへと引っ越すにしても転校がない範囲を住み替え候補地に選ぶケースが多いのだという。

そこで有用な情報となるのが不動産情報だ。マチマチの投稿ジャンルにある「物件情報」をクリックすると、近所の不動産物件がたくさん出てくる。これは不動産賃貸大手のハウスコムとの事業提携によるもの。直接のコンバージョンを狙うというよりも、潜在的な住替えニーズのある層が物件や地域に目星を付けるのに役立つのではないかと六人部氏は話す。また地域に根ざした口コミ情報を匿名化した上でハウスコムの営業担当や、引っ越しを検討しているユーザーに見せるという「口コミの相互利用」も今後検討していくそうだ。

都市部の地域SNSといえば、すでにマンション関連として「マンションノート」や「マンションコミュニティ」などがある。ただ、マンション単位の情報交換であることがマチマチとの違いであるほか、2ch的なノリのある古き良き掲示板と、Facebook的実名制という違いもあるという。またクラシファイド広告を扱う「ジモティー」とはデモグラが異なる。

米Nextdoorとも交流のある六人部氏によれば、Nextdoorは6〜7年かかってアメリカで7割の地域をカバーするに至ったというように、地域SNSは作るのに時間がかかる事業だという。「Snapchatみたいに一気にスケールはしませんが、時間をかけてユーザーコミュニティーを作っていければ」と話していて、まだしばらく模索期は続くようだ。

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TechCrunch Japan

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