すべての歯科医を虫歯を迅速に見つける「スーパー歯科医」にすることを目指すAdra

ヘルスケアのさまざまな分野がそうであるように、歯科も着々とテクノロジーを取り入れている。その多くは歯科矯正の分野だが、Adraなどのスタートアップは歯科医の日々のワークフロー、特に虫歯の発見にAIを活用しようとしている。2021年に世界の歯科医療の市場規模は4350億8000万ドル(約47兆6800億円)になると見られている。

シンガポールを拠点とするAdraは2020年に構想を開始し、2021年に創業した。共同創業者のHamed Fesharaki(ハメド・フェシャラキ)氏は歯科医として10年以上のキャリアがあり、シンガポールで2カ所の医院を経営している。

フェシャラキ氏によれば、歯学部でX線画像の読み方は習うがきちんと読めるようになるには数年かかるという。また歯科医は患者の間を飛び回っているので、X線画像を読む時間が数分間しかないこともしばしばだ。

こうしたことから、共同創業者のYasaman Nematbakhsh(ヤサマン・ネマトバクシュ)氏によれば、歯科医は最大40%の確率で虫歯を誤診するという。同氏のバックグラウンドはイメージングで、見えにくいガンをAIで特定する機器を開発していた。フェシャラキ氏はこれを歯科にも応用できるのではないかと考えた。

フェシャラキ氏はTechCrunchに対し、Adraは経験豊富な歯科医のような見方を提供することですべての歯科医を「スーパー歯科医」にしようとしていると語った。同社のソフトウェアを使うと歯科のX線写真から虫歯などの歯の問題を短時間で検出でき精度は25%向上するため、歯科医院ではその分患者により良い医療を提供し収益を増やせる。

Adraのソフトウェアのサンプル(画像クレジット:Adra)

フェシャラキ氏は「我々は経験豊富な歯科医の視点を活かし、X線写真を画像に変換することによって問題点を表示して、何に着目すればいいかを理解できるようにします。最終的に判断するのは歯科医ですが、我々が経験的な要素を取り入れることで歯科医が比較検討をするのに役立ち、助言を提供できます」と述べた。

問題のある箇所とその程度をすばやく示すことで、歯科医は治療法を決めることができる。例えば詰め物をするのかフッ素を使うのかしばらく様子を見るのか、ということだ。

もう1人の共同創業者であるShifeng Chen(シーファン・チェン)氏とともにAdraはYコンビネーターの夏学期を終了し、これまでに25万ドル(約2700万円)を調達した。フェシャラキ氏は、正式にシード資金調達を実施しエンジニアを増やしてユーザーエクスペリエンスの向上や機能の追加に取り組む意向だ。

同社はいくつかの歯科医院で試験運用をしており、米国食品医薬品局の認可取得に向けて試験をする医院をさらに増やしたい考えだ。フェシャラキ氏は認可を受けるまで6〜9カ月かかるだろうと予測している。認可の後、2022年後半か2023年前半に製品として販売を開始できるだろう。

関連記事
5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援
電動歯ブラシや3Dプリント製マウスピースを安価で提供するシンガポールの審美歯科D2C「Zenyum」
3DプリントのDesktop Metalが「健康」にフォーカスする事業を開始
画像クレジット:Adra

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。