ついにSpotifyが全世界のユーザーにリアルタイム歌詞表示機能を提供

Spotify(スポティファイ)は何年にもわたって、アプリ内歌詞に関するユーザーからの要望を特に米国で無視してきたが、米国時間11月18日、新たにLyrics(歌詞)機能を無料版、プレミアム版を問わず世界の全ユーザーに提供すると発表した。この機能は、歌詞サービスプロバイダーMusixmatchが提供するもので、SpotifyとMusixmatchがすでに結んでいる、インド、中南米、東南アジアのユーザーに歌詞を提供する契約を拡大する。

2019年に最初のテストを行った後、Spotifyは2020年に音楽に同期したリアルタイムの歌詞を世界26市場のユーザー向けに導入した。26市場のうち22市場が何らかのかたちで歌詞のサポートを得たのは初めてだったと、同社は当時述べている。その契約はその後、28市場に拡大した。日本のSpotifyユーザーも、SyncPowerとの単独契約により歌詞にアクセスできるようになっている。

しかし、その他の市場のユーザーは、2016年にGeniusと提携して開始した「Behind the Lyrics」という、歌詞に曲の意味やアーティスト、その他解説などトリビアを散りばめたものを提供する機能にしかアクセスできなかった。一方で、Spotifyのコミュニティフィードバックフォーラムを通じて何千人ものユーザーがここ数年、事実やバックグラウンド情報を挟んだ歌詞ではなく、リアルタイムの歌詞機能を希望するとSpotifyにアピールしていた。

そうしたユーザーの願いが、いま叶う。

SpotifyはTechCrunchに対し「Behind the Lyrics」を終了し、新しいLyrics機能に移行することを認めた。

歌詞は、プラットフォームにもよるが「Now Playing」ビューまたはバーから利用できる。

モバイルでは「Now Playing」画面から上にスワイプすると、曲の再生中にリアルタイムで歌詞がスクロール表示される。デスクトップアプリでは「Now Playing」バーからマイクのアイコンをクリックすることができる。また、Spotify TVアプリでは「Now Playing」画面の右上にある歌詞ボタンから「Lyrics」を有効にする。

同社によると、この機能はPlayStation 4、PlayStation 5、Xbox One、Android TV、Amazon Fire TV、Samsung、Roku、LG、Sky、Comcast向けのアプリを通じて、大画面で利用できるようになるとのことだ。

また、新機能では、モバイルの画面下にある付属のボタンからの共有が組み込まれていて、ユーザーは共有したい歌詞と共有先を選択することができる。

なお、無料版とプレミアム版では、歌詞の表示に違いはないとのことだ。

音楽アプリのリアルタイムの歌詞表示には、複雑な歴史がある。歌詞が音楽出版社から提供されない場合、企業はサードパーティのプロバイダーを利用する。しかし、そうしたプロバイダーは必ずしも公平ではない。例えばGoogleは、2019年にGeniusの歌詞集を盗用したとしてGeniusに訴えられた。Geniusは「現行犯」をとらえるために歌詞に秘密のコードを巧妙に埋め込んで追跡していた。それらの歌詞は後にGoogle.comの検索結果に表示された。しかしGoogleは、責任はパートナーであるLyricFindにあるとした。歌詞に関する大型の取引ではパートナーの選択肢が少なく、Genius、LyricFind、Musixmatchのいずれか(またはその組み合わせ)と提携する傾向があるため、Googleは提携を解消しなかった。

そうしたこともあって、2018年にAppleが数千のトップソングの歌詞についてGeniusとの提携を発表し、その2年後にGeniusの独占的なウェブプレイヤーとなったことは大きな話題となった。他のサービスでは、PandoraはLyricFindと連携しているとし、AmazonはLyricFindとMusixmatchの両方と連携しているとウェブサイトに記載されている。

今回の契約拡大により、Spotifyが提供されているすべての市場でLyricsが利用できるようになり、ライバルがSpotifyに対して持っている大きな競争力の1つがなくなる。

Spotifyによると、Lyricsは米国時間11月18日から全世界で提供が始まる。

画像クレジット:Stockcam / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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