やりたいことを提案してくれる「ポケットの中のコンシェルジュ」を目指したシティガイドアプリ「Welcome」

旅行先でも自分が住むエリアでも、街を探索する際にはGoogleマップやYelp、TripAdvisorなど、訪れるべき場所やするべきことを教えてくれるツールが役に立つ。しかし、今日のツールはよりスマートで、よりパーソナライズされたものであるべきだと考えたスタートアップがWelcome(ウェルカム)だ。同社の新アプリは「リアルタイム」テクノロジーを活用し、ユーザーの好みの他、天気、季節、交通量、話題になっていることなど、その時の状況にまつわるさまざまな詳細情報を考慮して、より厳選されたお勧め情報を提供してくれる。

Welcomeの共同設立者であるMatthew Rosenberg(マシュー・ローゼンバーグ)氏は「ポケットの中のコンシェルジュ」のようなシティガイドを目指していると話している。

画像クレジット:Welcome

ローゼンバーグ氏自身が設立した最初の会社であるモバイル動画作成アプリCameo(カメオ)が、Vimeo(ビメオ)に買収されたのはパンデミック前のこと。その後、当時のガールフレンド(現在の妻)とともに旅行をしたことがWelcomeを作るきっかけになったという。旅行中2人はヨーロッパ、ラテンアメリカ、米国の各地を訪れた。すばらしい経験であり、結果的に2人の距離を縮めることになったと同氏は振り返る。

「しかし、たとえ美しい場所やすばらしい美術館にいても、すてきなランチをしていても、携帯電話にかじりついて次はどこに行こうかと考えている自分に気づきました」と同氏は話す。Googleマップや友人からのおすすめ情報を調べたり、レビューを読んだりして、常に次の目的地を探すのに必死になっていたのである。

この経験がきっかけとなり「単純な場所のおすすめという枠を超え、自分の生活や身の回りで何が起こっているかを観察して、よりスマートな提案をしてくれるような賢いツールはないのだろうか」と考えるようになった同氏。

画像クレジット:Welcome

これが今のWelcomeの開発へと繋がった。Welcomeは、インテリジェンス、レコメンデーション、パーソナライゼーション、さらには写真や動画などのメディアを組み合わせて、ユーザーがやりたいことを見つけられるようにするシティガイドアプリだ。

ローゼンバーグ氏はVimeoの社員であるPeter Gerard(ピーター・ジェラルド)氏、Mark Armendariz(マーク・アルメンダリス)氏、Mark Essel(マーク・エッセル)氏と同スタートアップを共同で設立。2019年にはWelcomeの初期バージョンを市場テストのような形で発表した。アイデアがみとめられてAccelからのシードマネーを獲得することができ、これが彼らが思い描いていたアプリのバージョンを構築するための十分な資金源となった。

そしてついにそのバージョンがApp Storeに登場した

Welcomeを最初に起動すると、自分の興味に関する情報を提供する項目や、Condé Nast(コンデネスト)、Lonely Planet(ロンリープラネット)、Eater(イーター)、Culture Trip(カルチャートリップ)、Food & Wine(フードアンドワイン)などの中から自分がフォローしたい出版社を選択できるというオプションが用意されている。こういったコンテンツがWelcomeのおすすめ機能を賢くしていくという仕組みとなっている。

画像クレジット:Welcome

アプリのホームフィードをスクロールすると、現在調べている都市の関連記事を見ることができる。地図上には、レストランならチーズバーガー、バーならマティーニグラス、ファーマーズマーケットなどの屋外イベントなら木といったように、その場所に関連したアイコンが候補として表示されるようになっている。

それぞれの場所をタップすると写真やビデオが表示され、道順やウェブサイト、電話番号へのリンクの他、UberやLyftを発注するためのボタンなどが表示される。また他のWelcomeユーザーに向けてアドバイスを残したり、リストをお気に入りとしてマークしたりタグを追加したりすることもできる。

地図の上部にあるボタンで、フード、ドリンク、アクティビティ、アートなどから選択肢をフィルタリングすることも可能だ。

アプリ自体は、ユーザーインターフェースも上手くデザインされているが、企業の評価やレビューなどのユーザー生成コンテンツの収集に重点を置いたアプリに比べると使い勝手はあまりよくない。

例えば自分が撮った写真や動画をどのようにその場所に掲載できるのか、すぐには理解することができなかった。自分のメディアをアップロードするための「追加」ボタンが目立つように設定されているカ所もあるが、そうではないところもある。実際には「追加」ボタンがないわけではなく右にスクロールしないと表示されないようになっていたのだが、その画面がスクロール可能かどうかさえもよく分からないようになっており、単に「追加」ボタンが存在しないように見えるのである(以下の例を参照)。

Welcomeのスクリーンショット

それでも、Welcomeの基礎となるデータや解析エンジンは非常に興味深い。チームが開発したカスタムツールは、出版社の記事に含まれるキーワードを拾い上げてタグに変換されるようなっており、最終的にはこの技術をローカルブログなどのあらゆるサイトに拡張し、ウェブブラウザーの拡張機能などを使ってユーザーがクリックして保存できるようにしたいと考えている。さらに同社はスプレッドシートやメモ、電子メールなど、意外な場所で人々が集めている旅行リストやメモを取り込む方法を提供したいとも考えている。

将来的には旅行コンテンツの制作者からの提案やガイドを統合して、より充実した提案をしていきたいと考えている同社。これにより、特定のクリエイターや出版社のプレミアム旅行ガイドを有料で提供するというビジネスモデルも可能になるだろう。また、チケットの予約など、アプリ内での取引を増やしていくことで、レベニューシェアの実施も計画している。

Welcomeは、一般公開前から世界350以上の都市で5万人以上のベータユーザーを獲得し、現在では650万を超える場所がデータベースに登録されている。公開時には、世界中の30万件以上の厳選レコメンデーションが提供されるという。

同スタートアップは、Accelが主導し、Lakestar Ventures(レイクスター・ベンチャーズ)が参加した350万ドル(約3億9300万円)のシードラウンドによって支えられている。このラウンドは2020年にクローズしたものの、まだ発表されていなかった。プレシード資金を含めてWelcomeはこれまでに420万ドル(約4億7200万円)を調達している。

Welcomeのアプリは当分の間、iOSでのみ無料でダウンロードが可能だ。

画像クレジット:Welcome

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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