われはドローン ― 無人飛行機による配送、ついに本気の時代へ

ドローン配送の、実現上の細かい問題点など、取り敢えずおいておこう。ライフルの名手であれば、Amazonから無料で商品をゲットできるということだなどという考えも脇に置こう。配送可能距離が短すぎて、これまで配送対象地域外だったような場所はやはり対象外のままだとか、人口の密集する都会で飛ばせば、またいろいろと問題が起こりそうだという話も今のところは無視する。マーサズ・ヴィニヤードの隠れ家で受け取るのでもなければ、庭にペーパーバックを投げ入れていくような配送方式が受け入れられるわけがないとか、そういう話はまた次の機会にしよう。

あるいはもしかすると配送中のドローンが人の上に落ちてくるなんてことがあるかもしれない。「Amazonのプライム・ヘアカットだ」などと笑っていられない事態を招来することもあるかもしれない。そんな可能性も、まあ、頭から追い出しておく。まさかとは思うがFAAがBezosのアイデアを拒否するなどということがあり得るかもしれない。そういうネガティブな可能性はすべて忘れよう。「Amazonの本気」を感じてみようではないか。

取り敢えず、Amazonには豊富なマンパワーがある。カスタマーサービスの担当者たちは、1年365日24時間体制で、Kindle Fire HDXに登載した「メーデーボタン」がクリックされるのを待ち続けている。Bezosによると、このシステムの構築は数週間のうちに行ったそうだ。そして準備中はカスタマーサポート部門の長ですら、自分たちがいったい何を準備しているのかを知らなかったそうなのだ。つまり、Amazonは不可能とも思えることに向けて、従業員の能力を注力させることができる企業であるということを意味する。

また、ドローンの「知能」は大きく進化しつつある。たとえばAirwareなどの企業が無人ドローン向けのインテリジェントシステムを構築しつつある。結局のところは配送用ドローンは人力で管理し、緊急事態に備えておかなければならないだろう。しかしすべてを人力で行うなら、このドローン配送システムは実現不可能だ。ドローン側のインテリジェンスが向上することで、実現可能性がどんどん上がりつつあるのが現状だ。Centeyeのような仕組みを備えることにより、民生用ドローンも、軍事用無人攻撃機であるドローンと同様の性能をもつにいたっているのだ。もちろん搭載するのはヘルファイアミサイルなどではなく、たとえば『Diary Of A Wimpy Kid』などということになる。

さらに、Amazonにはドローン配送を実現したい熱意もある。Amazonもいわゆる「ラストワンマイル問題」を抱えていて、それに対処したいと考えているのだ。その辺りを考えればわかるように、ドローン配送システムのメイン舞台となるのはマンハッタンなどの大都会ではない。配送システムなども整備された既存マーケットではなく、新たな市場での展開を企図しているのだ。

新しい市場とはすなわち、これまでは即日配送などのシステムから見放されていた郊外のことだ。たとえば荷物を満載したトラックを配送地域付近まで送り、そこからドローンを飛ばすのだ。ミツバチの逆転版だと言えばわかりやすいだろうか。自分たちの持ってきた荷物を各家庭に届けて回り、そして巣に戻ってくるのだ。配送にかかる手間は減り、システマティックな配送システムで管理できるエリアが広がり、そして市場を広げることとなる。ブルックリンではAmazonに頼んだものは翌日にやってくる。しかし一部地域では迅速な配送を行うのに多くの費用がかかるということもある。ドローン配送は、この配送コストを大幅に下げてくれる可能性を持つ。

もちろん、ドローン配送というのが、全く新しい発明であるというわけではない。タコスを配送するTacocopterというものもあった。そうしたものをみて、ドローン配送が「ネタ」レベルだろうと考えている人もいることだろう。しかし、実現に向けて乗り出したのがBezosだ。ドローンはテクノロジーの粋を集めてますますパワフルに、そしてスマートになっていく。そしてAmazonもまたパワフルでスマートな組織だ。夢の実現に向けて、理想的な組み合わせが実現したと見ることもできるのではなかろうか。

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(翻訳:Maeda, H