アイデアを持ち込むと実動プロトタイプを作ってくれるGigster、あなたはデベロッパ管理の悪夢から解放される

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技術はなくても、アイデアと少々のお金だけあれば、あなたが構想しているスタートアップの完全なアプリケーションを作ってくれるのがGigsterだ。今日(米国時間7/22)ローンチしたGigsterは“フルサービスの開発ショップを自称し、ユーザ自身が、これはあの人、あれはあそこ、というように工程やチームを自分で編成しなくてもよい。

Gigsterのサイトへ行ったら、何を作りたいかを彼らにメッセージする。すると10分後に返事が来て、見積と納期が分かる。Gigsterに正式に発注したら、同社が優秀なフリーのプログラマやデザイナーたちを管理してあなたのプロダクトを作り、その後週に一回、ステータスを報告する。プロジェクトがあなたの手に渡った後も、Gigsterはコードをメンテナンスし、またアップグレードや新しい機能に関しては新たにお金を払うことになる。

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テクノロジ業界は慢性的に、大量の人材不足だ。できたてほやほやのスタートアップが、自力で優れたエンジニアを集めるのは、とても難しい。サンフランシスコのようなハブ的な都市に住んでいないと、なおさらだ。Gigsterは、起業家の貧しいふところに合わせて、MVP(minimum viable product, 機能・性能をなんとか評価できる最低限の製品)を安上がりに作ってくれるから、あなたはそれをぶら下げて歩きまわり、投資家を探しまくろう。

同社はY Combinator出身で、250万ドルをGreylock Partners、Bloomberg Beta、Felicis Ventures、それにAngelListのNaval RavikantやFacebook MessengerのStan Chudnovsky、TwitchのEmmit Shearといった高名なエンジェルたちから支援された。しかしコミュニティの信頼をまず築かなければならないGigsterは、今後数週間、激安で仕事をしてくれるから、あなたが夢の実現に向けて踏み出す、良いチャンスだ。

ここに手強い難問がある

Gigsterの協同ファウンダRoger Dickeyは語る、“プログラミングは小学校のころからやっている。週に2〜3回、新しいプロジェクトをフロッピーディスクに入れて学校へ持っていった”。このように、子どものころからラピッドプロトタイピングが好きだったDickeyは、その後Curiosoftという会社を作り、Facebookアプリを19も作った(その会社は2008年にZyngaが買収)。Zyngaの社員時代の彼は、ヒット作Mafia Warsを作り、そして2011年に投資家として独立した。

昨年Dickeyは、15のアイデアの中から勝者(投資対象)を決めようとしてプロトタイプ作りに励んだ。そのとき彼は開発をアウトソースすることの難しさを悟った。oDeskやElance(今のUpwork)のような人材マーケットプレースへ行くと、そこには何千人ものデベロッパがいて、ビッドする機会を待っている。しかも彼らの能力の保証はないし、仕事のクォリティーも玉石混交だ。

[Gigsterの作例]

Built On Gigster

Gigsterで制作

Dickeyと協同ファウンダのDebo OlaosebikanがoDeskを試したときには、同じプロジェクトに対して最安では22ドルのビッドがあり、そして最高額としては50000ドルのビッドもあった。最大の問題は、こんな事態になった場合でも、デベロッパに対する管理責任は100%、バイヤーにあることだ。それはおそろしく困難であり、時間を浪費する。アウトソーシングはワークロードを軽くしてくれるはずだが、逆に重くなってしまう。CrewToptalではフリーランスの人たちに対する事前評価ができるが、管理という難問は他と同じだ。

優秀なフリーランスを確保

Gigsterはこの問題を、“起用したスタッフ〜チームの中に必ずプロジェクトマネージャがいる”、という形で解決した。デベロッパの管理はすべて彼/彼女が担当し、彼/彼女をGigsterとの唯一の接点にする。進捗が遅いという報告を受けたGigsterは、デベロッパを増員、または有能なデベロッパへの入れ替えをする。そして、納期を守らせる。

同社は、牛乳の表面に薄く浮いてくる美味しいクリームのような、トップクラスの人材しか起用しない。Gigsterに応募してくるフリーランスのわずか7.7%しか、同社は受け入れない。そのギグスター(≒ロックスター)たちは、今GoogleやStripeなどにいて個人的なサイドプロジェクトを求めている人や、MITやCalTechの学生だがビール代が欲しい人、運転資金を稼ぐためのバイトを探しているスタートアップのファウンダ、といった人たちだ。

彼ら自身はビッドをやらなくてよいし、またバイヤーと直接コミュニケーションして苛立つ必要もない。彼らはGigsterのPM(プロジェクトマネージャ)から指示をもらって、それを作るだけだ。一人の学生が一つのプロジェクトを週末の二日間の徹夜で作って1万ドルを稼ぐ…これが典型的な例だ。

Gigsters

Dickeyはこう説明する:

“たとえば、ピザ配達のUberを作りたい人がいる、としよう。その人はまず、Gitsterの窓口であるセールスエンジニアに、詳しい話を聞かれる。‘配達はどうやるのかね?’、とか、‘車両は自前か、それとも配車サービスを利用するのか?’、とか、‘お客に正確な待ち時間を伝える必要はあるのか?’、とかね。それから予算と制作スケジュールを計算して伝える。その人はStripeで支払う。それから、その人のためのアルゴリズムと人間を集める。どのプロジェクトにも、プロジェクトマネージャが一人いる。そして一人以上のエンジニアと一人のUX/UIデザイナーがいる。チームは仕事を開始し、各週にアップデートを提供する。”

Gigsterはエンジニアリングを提供するだけで、デザインはしない。できあがったプロジェクトには簡素で機能的なUIがついているが、デザインに凝りたい人は自分で探すか、またはGigsterに誰かを紹介してもらう。

Gigsterは、信用を築くことも課題だ。IBMやInfosysが大量のアウトソーシングを常時受注しているのも、彼らに対し不安を抱く顧客がいないからだ。まだ若いGigsterも、デベロッパ管理の頭痛がなくなるだけでもお金を払う価値があることを、人びとに納得させなければならない。

[Gigsterの作例]

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Gigsterで制作

Pivotal LabsはGigsterの大敵のようにも見えるが、でもあっちは企業が対象だし、シリーズB以降のスタートアップが相手だ。Pivotalは、エンジニアを客先に派遣している。でもそのために、仕事がなくてもエンジニアを社員として抱えるので、結局高くつく。

Gigsterは小さなスタートアップやプロダクトが対象だ。フリーランスのネットワークも利用はオンデマンドだから、実際にプロジェクトをやっていないときには、一銭も払わなくてよい。GigsterをデベロッパのUberにたとえるなら、Pivotalはお抱え運転手を雇うことに相当する。

昨年、15のアプリケーションを自分で単価10000から15000ドルくらいで作るつもりだったDickeyは、結局それをせずに、Gigsterの準備で100万ドルぐらい使ってしまった。そして今の彼は、ソフトウェア開発につきもののギクシャクを、みんなのために解決しよう、という意欲に燃えている。“アウトソーシング”は、もっと健康的な言葉であるべきなのだ。

Gigsterの利用は今後数週間は料金が割引される。

〔訳注: この記事は原文のコメントを読むことを、おすすめします。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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