アップルがカリフォルニアの住宅危機とホームレス問題対策の基金に約2700億円拠出

Apple(アップル)は11月4日朝、カリフォルニアの住宅供給危機の緩和に向け、25億ドル(約2700億円)という巨額資金を拠出することを発表しと。この中には、住宅を求めやすいものにするための投資基金と、初めて住宅を購入する人向けのローン補助基金への各10億ドル(約1085億円)、そしてアップルが所有する土地でのリーズナブル価格の住宅開発向けの3億ドル(約325億円)が含まれる。

残りの2億ドルは、ベイエリアでの低所得者向けの新たな住宅開発のサポートに当てられる。内訳はというと、まずHousing Trust Silicon Valleyなどと提携しているベイエリア住宅基金に1億5000万ドル(約163億円)。そして5000万ドル(約54億円)は弱者に向けられる。特にシリコンバレーエリアのホームレス問題を解決するのに役立てられる。

同社はまた、ホームレス化を予防するためにカリフォルニア北部、南部の両方で同様の取り組みを検討するとしている。

Gavin Newsom(ギャビン・ニューサム)知事、カリフォルニア州、そしてコミュニティベースで活動している機関との提携のもとで実施される今回の投資は2年かけて活用される見込みだが、それは利用できるプロジェクト次第でもある。アップルに戻ってくる資金は、向こう5年のプロジェクトに再投資される。

「カリフォルニアにおける住宅危機で家を追われる人が出ていることを受けての投資だ」とアップルは発表文で説明した。

「教師や消防士、救急隊員、サービス従業員といったコミュニティメンバーが、住み慣れたコミュニティを去るという苦渋の選択を迫られている。今年4月から6月にかけて、3万人近くがサンフランシスコを離れた。ベイエリアの住宅保有率は過去7年で最低の水準だ」と同社は話している。

住宅危機は一晩で起こったのではなく、今問題視されているテック企業の成長だけが原因というわけでもない。

他の複雑な問題と同じように、住宅危機はいくつかの要因がからんで起こっている。同地域の法律、ゾーン規則、高層ビル建築への反対、NIMBYの風潮(編集部注:Not In My Back Yard、自宅の裏庭に迷惑なものがきてほてしくないという意)、レンタルコントロールの市場への影響、住宅供給制限、その他にもたくさんある。しかしテック企業が大きな要因であり、金持ちのテックワーカーとその他の人の間に格差を起こし、住宅供給の成長を上回る急激な人口増につながった。

今日では、そのエリアの多くの住人が、職場のある町での生活費用を賄えず、より生活費が安い近隣の町から1時間かそれ以上かけて通勤している。

「世界にシリコンバレーの名が知れ渡る前、人々がポケットにテクノロジーを入れて持ち運べるようになる前、アップルはこの地域をホームと呼んでいた。シリコンバレーが人々にとって暮らしたり、家庭を持ったり、地域に貢献したりできる活気に満ちた場所のままであるようにするのは、重大な市民責任だ」とアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は声明文で述べた。

「入手可能な住宅というのは安定や尊厳、機会、プライドを意味する。これらが多くの人の手の届かないものになってしまうと、私たちが今後歩む道は持続不可能なものになる。故に、アップルはソリューションに寄与したい」。

住宅危機問題の解決を支援するテック大企業は同社が初めてではない。Facebookは先月、カリフォルニアなどでの住宅問題に取り組むために10億ドルを支援することを発表した。そしてGoogleも今年初め、ベイエリアの住宅危機の緩和を目的とする10億ドルの投資を明らかにした。そのほか、マイクロソフトはシアトルエリアにおける住宅基金に5億ドル(約540億円)を拠出した。

テック大企業が住宅問題の解決に踏み込むのは、自らに関わることだからだ。実際、テック大企業は高級取りのエンジニア以外の人も雇う必要があり、住宅問題はビジネスに影響する。テック企業がコミュニティにとって良き隣人でいられることを証明するためのかなりの規模の投資を歓迎する人もいる。

一方で、今後起こる問題を解決するための資金を賄うためにテック大企業にもっと税金を課すべきと言う人もいる。実際のところ、投資というかたちでの貸し出しではテック企業を一層儲けさせることになる。地元行政に及ぶかなりの影響力をこうしたテック企業に持たせることになる数百万ドル、数十億ドルのプログラムを受け入れるべきではない、という声もある。

しかしこの住宅危機はすでに対応不可能なものになっているかもしれず、もはやローカルレベルでは解決できない。

「入手しやすい住宅のための未曾有の経済協力、そしてこのイニシアティブの根底にあるイノベーティブな戦略は、アップルが住宅問題の解決を真剣にとらえていることの表れだ」とNニューソン知事は語った。「住宅所有者、住宅賃貸者の両方にとって住宅費用の高騰はカリフォルニア州の何百万という家庭にとって、生活の質に関わる懸念だ。この問題は住宅の建設でしか解決できない。アップルとの提携はカリフォルニア州の住宅建設をサポートするものとなる」。

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(翻訳:Mizoguchi)