アップルは70万円超のApple Pro Display XDRの手入れに専用クロスの使用を推奨、なぜ?

7000ドル(約76万円)のApple Pro Display XDRの物語にこれ以上突飛なことは起こらないと思っている人は、思いがけないおまけに驚かないでほしい。Apple(アップル)はモニターに付属の特別なクリーニングクロス以外は使わないようにと警告している。なくしたときは、追加注文することが推奨されている。

とどまることを知らない価格上昇で、すでに長年のユーザーから批判されていたアップルは、6月にこのハイエンドのモニターを発表したことで、少なからぬ怒りと冷笑を買った。もちろん、高価なディスプレイはほかにもたくさんある。問題は、アップルがディスプレイを5000ドル(約54万円)で販売し、別売りのスタンドが999ドル(約10万8000円)、オプションの「ナノテクスチャー」コーティングをつけるとさらに1000ドル(約10万8000円)かかることだ(編集部注:日本ではナノテクスチャと標準ガラスの価格差は7万円)。

一緒に使うMac Proの値段を見るまで驚くのは待ったほうがいい(日本では標準ガラスが52万9800円、ナノテクスチャーガラスが59万9800円)

厳密にはこれは「コーティング」ではなく、表面に施された超微細なエッチングで、フルマット・コーティングの欠点をなくしながら画像品質を改善する。「標準的なマット仕上げのディスプレイでは、光を散乱させるコーティングが表面に加えられています。こうしたコーティングはコントラストを下げ、不要なかすみや輝きを引き起こします」と商品説明に書かれている。ナノテクスチャーにはそれがない。残念なことに、このガラスの独特な性質のために、お手入れには特別な注意が必要なのだ。

「ディスプレイに付属のポリッシングクロスを必ず乾いた状態で使い」とサポートページの「Apple Pro Display XDR のお手入れ方法」に書かれている。「付属のクロス以外は使わないでください。付属のポリッシングクロスを紛失した場合は、アップルにお問い合わせの上、交換用のポリッシングクロスをご注文ください」とのことだ。なお、価格は書かれていなかったので、現在アップルに問い合わせている。

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高価なディスプレイの手入れに液体洗剤やクシャクシャにした新聞紙を使わないのは当然だ。しかし、アップルのクロスと普通のマイクロファイバー布と何が違うのかはよくわからない。

通常の布はナノスケールの凹凸に引っかかって繊維が隙間に入ってしまうのだろうか。ナノテクスチャーは十分に柔らかいもの以外では傷つけられてしまうのだろうか。

アップルは消費者にかなりの勇敢さを求めているようだ。効果が不明確(コーティングのないディスプレイも「極めて低い反射率」であることをアップルも認めている)なだけでなく、ごくわずかな不注意によっても傷つけられそうなものに、大枚をはたかなくてはならないのだから。

Pro Display XDRが美しいディスプレイであることに疑いはないし、価格に見合うと思う人だけが買うに違いない。しかし、ガジェットに細心の注意を払わなくてはいけないことを喜ぶ人はいないし、アップル製品はどんどん壊れやすく修理しにくくなっている。特製のクリーニングクロスは小さくてどうでもいいことかもしれないが、憂慮すべき大きなトレンドの一端でもある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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