アディダスはSpeedfactoryを閉鎖してロボットによるシューズ生産から後退

Adidas(アディダス)は、世界規模の流通にかかわる費用をかけた実験を中止した。米国アトランタと、ドイツのアンスバッハにあるロボットによる「Speedfactory」(スピードファクトリー)を、6カ月以内に閉鎖すると発表したのだ。ただしこの技術を、アジアにある既存の人手中心の工場で再利用することを示して、このニュースのうわべを取り繕った。

このロボ工場は、製造プロセスを分散化する戦略の一環として、2016年にアンスバッハ、2017年にアトランタに設立されたもの。それ以前のモデルは、他の多くの産業と同様、労働力と間接費が安い東アジアで製品を生産し、そこから必要に応じて出荷するというものだった。しかしそれでは、ファッションや運動競技と同じほど動きの早い業界にとっては、いかにも遅く、ギクシャクしたものになってしまう。

「現在、当社の製品のほとんどはアジア製であり、それを船や飛行機でニューヨークまで運んでいました」と、アディダスのCMOであるEric Liedtke(エリック・リートケ)氏は、昨年のDisrupt SFで、新しい製造技術についてのインタビューに答えていた。Speedfactoryは、それを変えるためのものだった。「ある種のマイクロ流通センターをジャージーに置くのではなく、ジャージーにマイクロ工場を作って、その場で製造するのです」。

関連記事:Adidasのスニーカーのサプライチェーンが3Dプリントで劇的に変わりオンデマンド化へ

最終的に、これは想定したよりも難しかったことが証明されたようだ。他の業界も含めて、性急に自動化を推し進めるなか、目標を高く置きすぎて、まだ技術が整っていない段階で、できもしないことを約束してしまうことはよくある。

ロボット化された工場は強力なツールだが、早急に構築し、整備するのは難しい。ロボットアームやコンピュータービジョンのシステムをセットアップするには、専門知識が必要となるからだ。ロボットを利用した製造技術は、この分野でも進歩を遂げている。ただ今のところ、標準的なツールを異なるパターンで使えるよう、人間の労働力を訓練するよりも、はるかに難しいのだ。

アディダスのグローバルオペレーションの責任者であるMartin Shankland(マーティン・シャンクランド)氏は、「Speedfactoryは、私たちの製造技術の革新と能力の向上に貢献してきました」と、プレスリリースで説明している。また短期的には、製品を迅速に市場に投入できたという。「それが最初の目標でした」とも言うが、情勢が変化する中、おそらく2016年とは事の運びが違ったものになったのだろう。

「アンスバッハとアトランタでのコラボレーションが終わってしまったことを、非常に残念に思います」と、シャンクランド氏は言う。アディダスに協力したアンスバッハ拠点のハイテク製造技術パートナーのOechsler(オークスラー)も同じように感じている。「Oechslerでは、アディダスがSpeedfactoryでの生産を中止する事情は理解していますが、この決定を残念に思います」と、同社のCEOであるClaudius Kozlik(クラウディウス・コツリック)氏は、プレスリリースで述べている。これらの工場は4月までに閉鎖し、そこで働いていた160人程度の労働者は、失職または配置転換される。ただし、両社は引き続き協力関係を維持することにしている。

同じプレスリリースでアディダスは、来年から「Speedfactoryの技術を利用して、アジアの2つのサプライヤーで、アスリート用のフットウェアを製造する予定です」と述べている。それが正確に何を意味するのかよく分からないので、同社にはさらなる情報の提供を求めている。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。