アドテクは衰退し、マーケティングテクノロジーの時代が到来する

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編集部記:Bill Bourdonは、テクノロジー企業にPRとコンテンツマーケティングサービスを提供するエージェンシーBateman Groupのパートナーで共同オーナーである。

VCや株式市場の一般の投資家は「アドテク」という言葉を聞くと怖気づいてしまう。それも無理はない。この分野には無数のアドネットワークが乱立して飽和状態の上、IPO後の成績も芳しくないからだ。Rocket Fuelの株価は、2013年9月にIPOを実施した時から80%も下がっている。Millennial Mediaもその前年に株式公開しているが、94%下がっている。

有名なアドテク企業が下火になる中、Gartnerは2017年までにマーケティング担当役員は、情報担当役員より、テクノロジーに投資するようになると予測している。全ての事象がそうなることを指し示している。投資家のアドテクに対する心証は良くないが、アドテクが属するより広範なマーケティングテクノロジーの分野は急速に伸びている。

ベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの取引が活発になっている。

昨年、巨大な資金調達ラウンドを達成したマーケティングテクノロジー分野の企業が複数あった。AppNexus(1億1000万ドル)やQualtrics(1億5000万ドル)などだ。企業買収も活発だった。Luma Partnersによると2013年は52件だったマーケティングテクノロジー分野での大型買収の件数は、2014年には82件に増えた。Facebookが動画広告テクノロジースタートアップLiveRailをおよそ4億ドルで買収したのに続き、Yahooも動画広告スタートアップBrightrollを6億4000万ドルで買収した。

上場に踏み切った新しいマーケティングテクノロジー企業も予想を上回るパフォーマンスを見せている。

最近行われたRubicon ProjectとHubspotのIPOは、CriteoやMarketoに劣らない存在感を見せた。OutbrainとAppNexusも上場が噂される企業の内の一つだ。Marketoの株価が年の始めに比べ、20%低減していることを悪いことが起きる前兆だと考える人もいるだろう。ただ私は、これはこの業界が今後どのように進化するかを示すものだと考えている。大きなマーケティング自動化プラットフォームと呼ばれるような企業は、ある特定の課題に対して、シンプルでスマートなソリューションを提供する企業に市場を明け渡すようになると思う。

今後マーケティングテクノロジーの伸びが期待できる転換期にいることは間違いない。まだ、Fortuneのユニコーンリストに掲載されている評価額10億ドル以上のプライベートスタートアップ63社の内、マーケティングテクノロジー企業は2社しかない。AppNexus(12億ドル)とInMobi(20億ドル)だ。最新ラウンド で12億ドルのバリュエーションを得たSprinklrを加えると、3社だ。

数字が伴うか、そしてそれが伸びるスピードは、このような企業の成長と連動するだろう。

モバイルが世界を征服するのにネイティブ広告が一役買っている

Andreessen Horowitzでパートナーを務める Benedict Evansは、モバイルが世界を征服すると言った。これは、控えめな表現だ。eMarketerは、今年のアメリカでのモバイル広告に費やされる金額は、50%伸びて284億8000万ドルに上り、2016年には401億6000万ドルになると予想している。これは、主要な広告予算が古い広告形態を捨て、新しい方に向かうことを汲んでいる。

スマートフォンでは画面サイズが制限されるため、バナー広告は減り、フィード内の広告、つまりネイティブ広告が生まれた。Facebookの時価総額が2200億ドルなのは、このモデルから巨額の利益が上がることが期待されているためだ。

大手SNS企業の他に、Mopub(2013年にTwitterが買収)のような企業や、急成長を遂げるいくつものスタートアップが、フィード内広告の流れを先導している。彼らは、同様の手法でオープンなウェブ環境からマネタイズする術をメディアの発行元やアプリの開発者に提供しようとしている。BIA/Kelseyによると、この市場は2018年までに2013年度の5倍である57億ドル規模に成長すると予測している。

覇権は(まだ)コンテンツにある

モバイル移行への強い流れは、新しいコンテンツエコノミーを形成している。発行元やブランドには、読者に更に良い体験を提供しようとする共通の目標がある。スポンサーコンテンツとネイティブ広告戦略を上手く使いこなした発行元は大きな利益を得ることになるだろう。品質の低い有料コンテンツを飾り付けただけの所は間違いなく敗北する。

また、今ではコンテンツは一口大の定形様式に統一されるようになってきた。この変更は注目すべきものであり、必要な情報をまとめた「カード」がウェブを席巻するほど、新しいビジネスやレベニューシェアモデルが台頭することが予想される。このデザイン変更の流れは、大手メディアのオーディエンスにリーチしたいと思うブランドのマーケットプレイスから、発行元が違う形態で利益を得る手段を生むことになるかもしれない。TwitterやGoogleのようなカードデザインを既に採用しているアーリーアダプターは、発行元、そして彼らの広告主に対して今後良い影響を与えることを証明している。

プログラム主導はディスプレイ広告に留まらない

Perceptions Groupの最新の調査によると、今年のプログラム主導の広告売買で21%の成長が見込まれている。マーケティングのプロや代理店の需要が主な成長要因だ。

プログラム主導がもたらす本当の成長機会は、既存の自動広告の売買の文脈を超えた所にあり、その影響は広範な分野に及ぶだろう。デジタルディスプレイ広告での成長とイノベーションが続く一方、他のマーケティング分野やカスタマーからのインバウンド電話、ラジオ、テレビといった新しいチャネルにおける成功談も多く聞かれるようになるだろう。

マーケティングアナリティクスが流れを作る

モバイルの台頭は、アナリティクス分野に重要なカテゴリーを生んだ。昨年の12月モバイルアナリティクス企業のMixpanelは8億6500万ドルのバリュエーションを受け、Andreessen Horowitzから6500万ドル を調達した。また、App Annieは先日Mobidiaを買収した。Mixpanel、App AnnieやFlurry(Yahooが買収)した企業は、クライアントがより良いプロダクト、エクスペリエンス、そして最終的に高いパフォーマンスの広告と結び付くよう、彼らのアプリがどのように使用されているかの情報を提供する堅実なビジネスを構築した。

データは、このようなアナリティクスサービスの生命線である。重宝される広告及びマーケティングテクノロジー企業がデータ主導の企業であるのもそのためだ。Facebookは、このことを如実に表している。次世代のマーケティングテクノロジーのユニコーン企業が誕生するなら、その企業のバリュエーションは、データを巡る戦いでの功績と比例することになるだろう。

10倍効果を上げるマーケターの存在

人材の要素もある。例えば「10倍効果を上げるディベロッパー」と言うように、10倍効果を上げるマーケターは、数学に精通した技術者であり、一心不乱に働く10人分の仕事に匹敵する効果を上げる。Hubspot、Marketoといったツールを使いこなし、各種のデジタルチャネルに浸透する、洗練されたマーケティングプログラムを展開する人たちだ。Eメールからモバイルまで、どのチャネルも網羅していることだろう。

皮肉なことに、このようなメガマーケティング自動化プラットフォームは、業界の進化を妨げている。単純なキャンペーンを打つのにすら、マーケターは多くの時間と経験を積む必要があるからだ。その企業の中でも若いMarketoでさえ、既に成長スピードが減退しているのは、市場がもっとシンプルなものを追求していて、本当に使える驚くほど簡単なツールしか使いたがらないからだ。WeeblyやSquarespaceは、シンプルさを追求した企業の代表格と言えるだろう。

ワイルドカード:Facebook

広告とマーケティングテクノロジーの競争におけるワイルドカードはFacebookだ。彼らは、The New York Timesといった主流ニュースサイトのコンテンツのホスティングを開始したばかりだ。これにより、発行元はトラフィックとデータを諦める代わりに、広告収入をFacebookと分ける。理論上ではFacebookのソーシャルネットワークが持つユーザーのターゲティング能力により、広告のパフォーマンスが向上することが見込まれている。

これは、既に苦しい状況にいる発行元を更に窮地へと追い込むことになるだろう。Facebookは、その間にも利益を上げていく。また、主要ニュースサイトに収益を依存していたアドネットワークも従来のようにはいかないことを示唆している。

主要な発行元やとネイティブアドのテクノロジースタートアップの今後の動き次第で、新たなユニコーン企業が生まれたり、敗退する企業が出てきたりすることだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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