アドビがSensei AI利用の写真編集アプリ「Photoshop Camera」を発表

InstagramやSnapchatの普及で人々の写真との関わり方が大きく変化した。しばらく前まで写真を編集するには高価なソフト、ハードが必要でユーザーは写真家、デザイナーなどのプロやセミプロが主だった。ところが今では誰でもスマートフォンで写真を加工している。とはいえ、スマートフォンアプリに付属しているフィルターの機能は初歩的で、PhotoshopやLightroomを代替するものではない。あくまでスマートフォンでセルフィーを撮ってその場でちょっと明るさを補正して投稿するというような用途向けの「そこそこ」のプロダクトだった。

Adobe(アドビ)はこのことを認識しており、米国時間10月4日に米国ロサンゼルスで開幕したAdobe Maxで手を打ってきた。

それがPhotoshop Cameraだ。 これはAdobeのAI、Senseiを利用した写真編集のためのモバイルアプリでiOSとAndroidで利用できる。Photoshop Cameraを起動し、写真を撮影するかカメラロールから選択する。アプリはAIで内容を判断し多数の編集オプションを提供する。明るさや色などの基本的修正から複雑な背景から空を入れ替えるなどの高度な編集まで可能だ。

Photoshop Cameraは食べ物、人物、遠くの山並みなど被写体を認識し、最も適切と考えた「レンズ」(他のアプリでいうフィルター)を提示する。こうしたレンズも他の編集もすべて非破壊的だ。つまり元の画像を変更しないのでどんな状態からでもオリジナルにロールバックすることができる。

こうしたAI活用が可能になったのはAdobeが長年蓄積した何億枚にもおよぶ膨大な写真データによるものだという。おそらくいちばん重要なのはAdobeが写真をAの状態からBの状態に変えるためにどのような編集処理を行えばいいか判断できるという点だろう。

私は先週、アドビを取材し、アプリが実際に動作することを見ることができた。短いデモではこのアプリの能力をフルに紹介するのは難しかったと思うが、私は強い印象を受けた。アプリはごく普通の風景写真を処理してネイチャー雑誌のカバーフォトのように仕上げた。また料理の写真を見るなり1秒もかけずに「どの部分が料理か」を認識し、その部分だけを処理してシズル感を高めた。

アドビの担当者によれば、こうしたフィルター処理が可能になったのはBilly Eilish(ビリー・アイリッシュ)氏のようなフォトグラーやデザイナーと緊密に協力してきたからだという。このときアドビのCTOであるAbhay Parasnis(アブヘイ・パラスニス)氏は「地域、時期限定のカスタムレンズというのも面白いかもしれない」 と語った。つまりあるコンサート会場に行ったユーザーだけに提供されるレンズといったものだ。

このPhotoshop Cameraをすぐに使いたいユーザーはアドビに登録してプレビューモードへの招待を受ける必要がある。一般公開は2020年に入ってからとなるらしい。登録はこちらから

【Japan編集部追記】 日本からも上記リンクで申し込みは可能だがアプリのダウンロードができるようになるまでにはしばらく待つことになる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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