アプリで救急搬送先を検索―、医師版SNS「Whytlink」の運営元が4億円を調達

 

LINEやFacebook Messengerなどのコミュニケーションアプリが個人ユーザーには普及したが、今後医療現場でもチャットアプリの普及が加速するかもしれない。医療系ITサービスを提供するリーズンホワイは本日、総額4億円の第三者割当増資を発表した。引受先はアンテリオ、ファストトラックイニシアティブ、DBJキャピタルの3社だ。

リーズンホワイの主要サービスは、2015年6月から提供を開始している医師向けSNS「Whytlink(ホワイトリンク)」だ。Whytlinkは医師版LinkedInのようなサービスで、各医師の経歴や実績を掲載している。医師同士の推薦や患者の紹介情報などもWhytlinkに集約することで、専門医の得意分野などを可視化するためのサービスだ。Whytlinkに登録している医師は、2016年12月に1000名以上になったという。

2017年1月からはiOSアプリもリリースしている。これは主に医師同士のコミュニケーションを効率化することを目的としている。LINEやFacebook Messengerでも連絡は取れるが、患者の医療相談を扱う場合はセキュリティー面が不安だったり、他の病院の医師とは連絡しづらかったりという課題があった。このアプリが使えるのはWhytlinkに登録している実名の医師に限り、アプリは患者情報のやりとりを想定していてセキュリティー対策も万全だという。これまで救急搬送の場合など、医師同士は電話で連絡を取ることが多かったが、チャットであれば画像も添付でき、的確なコミュニケーションが取れる。また、近くの病院を検索する機能などもある。

今回の調達と同時に、リーズンホワイはこのアプリに新しく「症例検討機能」を実装したと発表した。これは、患者の症例ごとに院内外の医師と症例を共有して、治療法を検討するための機能だ。患者の情報を共有する際には、患者の同意を事前に取得するための機能も実装しているという。

また、リーズンホワイは今年の秋にも患者が医師から治療提案を受けられるサービス「Findme」をローンチする予定だという。これは、患者が提供する診断情報をコーディネーターとなる総合診療医が見て、患者をWhytlinkに登録している専門医とつなぐ仕組みだとリーズンホワイの代表取締役社長を務める塩飽氏は話している。

Findmeについては2016年3月に取材した時、2016年夏頃にはローンチする予定と話していた。リリースが延期となったのは、Findmeのモデルを考え直したからと塩飽氏は言う。当初は例えば、整形外科など領域を絞ってFindmeを展開する予定だった。しかし、実際の事例を見ると、腰の痛みから整形外科にかかりたいと話していた患者は、実際は別の病気が痛みの原因になっていたというようなこともあった。患者にとって最良のオプションを提示するためには、総合診療医によって適切な専門医とつなげるモデルにする必要があると考え、リリース時期を延期してそのモデルの実現に注力してきたと塩飽氏は説明する。また、Whytlinkの登録医師も徐々に増えているが、これが数千人規模まで増えた段階でFindmeをローンチすることが事業にとっても適切と考えているという。

リーズンホワイは他にも、製薬メーカー向けにどの病院がどういった疾患の治療が得意なのかを把握できるサービス「Whytplot(ホワイトプロット)」を提供している。Whytplotは2017年3月に提供開始以来、26の医療機関、製薬会社、医療品や医療機器販売会社などで導入が進んでいるそうだ。また、2014年4月から提供している患者が疾病や医療機関について深く知るためのサービス「yourHospital」は提供を終了している。

リーズンホワイは2011年7月に創業し、2016年3月にはファストトラックイニシアティブと東大総研から総額1.6億円を調達している。今回調達した資金は、既存サービスを拡充していくこと、そしてこれから展開するFindmeの開発に充てると塩飽氏は話している。

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TechCrunch Japan

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