アプリケーションとライブラリをハードウェアの特性に合わせて最適化・高速化するBitfusion…元Intelの三名が起業

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今日のコンピュータは一般的にとても高速だが、アプリケーションの多くは、自分たちがその上で動くハードウェアプラットホーム向けに最適化されていない。ほとんどのライブラリがジェネリックなプラットホーム用にコンパイルされており、たとえば個々のCPUの固有の機能を有効に利用していない。

今日(米国時間5/1)TechCrunch Disrupt NYでデビューしたBitfusionは、デベロッパに代わってそのような最適化を行い、そのソリューションの最初の一回の適用でアプリケーションのスピードを10%から最大で60%は向上させる。それは、多くのアプリケーションが依存している著名なオープンソースのライブラリの、すでに最適化されているバージョンを選んでビルドするだけ、というソリューションだ。同社がねらっているターゲットは、製薬企業や生物情報科学関連の企業、それにデータ分析のソフトウェアなどだ。

同社はテキサス州オースチンで、元Intelの社員三人が創業し、今日はData CollectiveとResonant VC、およびGeekdomから145万ドルのシード資金を調達したことを公表した。Geekdomは、RackSpaceのファウンダや投資家たちが運営している投資企業だ。

ファウンダたちはIntel時代に、チップの設計からパブリッククラウドのインフラストラクチャ、スーパーコンピュータなど、あらゆるものを手がけた。CEOのSubbu Ramaが前に創ったSocialStockは、2012 Disrupt NYのBattlefieldでファイナリスト(決勝進出)になった。

Ramaは曰く、“ハードウェアとソフトウェアを一緒に同じテーブルの上に乗せたいのだ。うちは、ハードウェアの最大有効利用という、これまでみんなが避けてきた分野に挑戦している”。

Bitfusionは、ライブラリの再コンパイルや再編纂、それに特殊なバージョンの収集などにより、各プラットホーム向けの最適化を行う。でもそれは、顧客基盤を築くための最初のステップにすぎない。Ramaはそのステップを、“簡単な部分”と呼ぶ。

チームは今後、CPUだけでなくGPUやFPGAも最適化の視野に入れて、パフォーマンスの向上を10%ではなく10倍にすることを計画している。同社によると、今日のハードウェアメーカーは、自分たちのチップのより強力な機能にアクセスするためのスタンダードに合意している。

たとえばいくつものグループが、ハードウェアアクセラレータと科学計算とのあいだの標準インタフェイスとして、OpenCLをプッシュしている。でも今日の現実としては、デベロッパたちはOpenCLのサポートに傾くことなく、CUDA、HAS、AVX2などなど、多様な競合APIに向かっている。Bitfusionのチームは、同社がアプリケーションとライブラリを、そういうデベロッパのために、そして彼らの往々にして特殊なチップのために最適化することによって、そのバラバラの世界に橋渡しができる、と信じている。

今後に関してチームがとくに期待しているのは、プログラマブルなチップFPGA日本語)だ。FPGAは特定の問題に合わせてプログラムできるし、また一般的にソフトウェアよりもハードウェアの方が高速だから、デベロッパは大きなスピードアップを実現できる。今日のFPGAは標準性に乏しいが、しかし大手半導体メーカーの一部は真剣にFPGAについて検討しており、CPUすら、一部をFPGA化することによってスピードアップとユーザの自由性の拡大を図ろうとしている。

もうひとつ、Binary translation日本語)も、アプリケーションのスピードアップのためにBitfusionが注目している技術の一つだ。

同社は主に企業を顧客にして、彼らの特定のニーズやアーキテクチャに合ったソリューションを提供しようとしている。今後はそういう顧客のデータセンター用として、ハードウェアアクセラレータを組み込んだアプライアンスを提供して行く計画だ。そして今同社は、RackSpaceと協働して、ユーザがアプリケーションのスピードアップを実現できるための高速化クラウドの構築にも取り組んでいる。

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Disrupt Q&A:

Q: 市場規模はどれぐらい?
A: 社内にそういう技能のない中小の企業はたくさんある。アプリケーションの高速化が重要な、メディアや仮想現実の企業が、とくに狙い目だ。

Q: ビジネスモデルは?
A: 三つのビジネスモデルがある。ソフトウェアと、アクセラレータを組み込んだアプライアンスと、RackSpaceとの協働による高速化クラウドだ。

Q: それはプラグ&プレイか?
A: うちが開発している技術は、ソフトウェアで高速化を図ったライブラリの、世界最大の集合だ。それらのライブラリを、たとえば、機械学習や生物情報科学の分野のアプリケーション向けにデプロイしている。デプロイプロセスはすべて自動化されている。

Q: 大企業は相手にしないのか?
A: 大企業はハードウェアを自作できるし、自分たちの特殊なアプリケーションを最適化する技能もある。でも、大型データセンターの最適化、というレベルでは今すでに大企業の顧客もいる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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