アプリ利用者をリアルタイムに解析して最適なメッセージが送れる「KARTE for App」提供開始

ウェブサイトの顧客行動を可視化する接客プラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドは3月19日より、iOS、Androidのアプリ向けに「KARTE for App」の提供を開始する。

KARTEはサイトへの来訪者の行動をリアルタイムに解析し、「どういう人がどのようにサイトを利用しているのか」を可視化するサービス。可視化した個々のユーザーに対して、適切なタイミングでポップアップやチャットなどを使った適切なメッセージを発信することができる。2015年3月に正式ローンチして以来、約3年で累計22億人のユニークユーザーを解析してきた。

今回提供するKARTE for Appは、これまでウェブサイト向けに提供されてきたKARTEの機能を、iOS/Androidのネイティブアプリ向けにSDKとして提供するもの。アプリを利用するユーザー行動をリアルタイムに解析し、さまざまなタイミングでメッセージを配信することができる。

KARTE for Appの事業責任者で、プレイド プロジェクトリードの棚橋寛文氏によれば、「KARTEを利用する顧客からは、かなり前から『アプリでも同じことができないか』という相談があった」とのこと。

「ヒアリングしたところ、モバイル経由の利用が増える中で、アプリについてはマーケティングや運用がウェブに比べてまだうまくできておらず、課題とする企業が多いことが分かった。そうした顧客に、アプリについてもマーケティング支援を進めたい、ということで今回のリリースに至った」(棚橋氏)

KARTE for Appの機能は大きく分けて3つ。1つ目はアプリ内のユーザーをトラッキングして、行動をイベントベースでリアルタイムに解析できる機能。ダッシュボードやスコアなどで、ユーザーの行動やモチベーションの変化をつかむことができる。

2つ目は行動イベントやユーザー情報を自由に組み合わせてセグメントし、プッシュ通知やアプリ内メッセージを配信する機能。ユーザーの属性やタイミングに合わせて、いろいろな形でコミュニケーションを取ることができる。

3つ目は、ウェブサイトと相互にユーザー行動を解析し、コミュニケーションする機能。ウェブでKARTEを導入済みであれば、共通の管理画面でウェブとアプリ双方を横断的に解析できる。例えば夜、PCでウェブサイトを閲覧していたユーザーが、朝、通勤中にスマホアプリからアクセスしてきた場合に、プッシュ通知を送るなど、ワンストップでコミュニケーションを取ることも可能だ。

KARTE for Appは、KARTEの既存顧客を中心にクローズドベータ版が3月から提供されており、ZOZOTOWNクックパッドなどでの導入が既に決まっているという。棚橋氏は「業種・カテゴリーを問わず、アプリでのユーザー体験を良くしたい、という企業すべてを対象に導入を進めたい」と話している。

「“人”にひもづいたデータを“人”が分析しやすい形で提供」

プレイド代表取締役の倉橋健太氏は、楽天に2005年に入社し、約7年間在籍していた。その中で「ネットショップでも銀行などのサービスでもメディアであっても、ユーザーが行動したデータはたまる。それをより良いユーザー体験のために活用したい」と考えていた。しかし蓄積したデータを分析し、活用するためには相当の工数やリソースが必要で、「データ=資産」ではないのが実情だった。

そこで「担当者が誰でも簡単に、あるべき姿でデータを把握できるようにして、データを価値として還元したい。より世の中に流通させたい」との思いから、2011年に創業したのがプレイドだ。

倉橋氏は「人間は実は、数字でのデータ分析、計算は得意ではない。データを扱うには一定以上のリテラシーが要る。それを誰でも活用できるようにして、データの民主化に寄与したい」と話す。

昨年プレイドで開発された「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」は、「人間が不得意な方法ではなく、得意なやり方、普通の人のベーススペックでできる方法でデータを見えるようにする」取り組みだ。TechCrunchでも以前取り上げたが、このサービスでは通販サイトの訪問客の動きをVR空間上でリアルタイムに可視化し、実店舗で人が買い物をしているかのように見ることができる。

「“データ”ではなく“人”として見れば、人間にとっては分析の精度もスピードも上がる。そう考えて、R&Dの一環として、カルテガーデンをリリースした」と倉橋氏は述べている。

「市場で“ウェブ接客”という文脈で語られるときには、ポップアップやチャット、アンケートといったユーザーが目にするフロントのツールに焦点が当たりがち。だが、それ以外にも、マーケティングやカスタマーサポートなど多様な場面で支援することがあるはず。我々のサービスは人にひもづいた形で、人のオペレーションチェーンに組み込む方向にシフトしていく」(倉橋氏)

実は“ウェブ接客”という言葉はプレイドが発祥で、商標も登録してあるそうだ。だが、倉橋氏は「これからはKARTEを“ウェブ接客”ツールではなく、“CX(Customer eXperience:顧客体験)”プラットフォームとして打ち出していく」と言う。

「3年前のKARTEリリース時には、スタートアップとして現実解も出さなければいけない、ということで、ツールとして分かりやすい言葉で出した。でも当時から、長期的な目標として掲げてきた『データによって人の価値を最大化する』という考えではあったし、それは今でも変わっていない」(倉橋氏)

「データ活用は、行動する人やそれを読み解く人、すべての人々の活動の結晶。それがCXとなって反映される」と語る倉橋氏は、最近参加したオフラインのイベントなどで、CXが取り上げられ、浸透していることを再認識した、という。

「インターネットでビジネスを展開するときに、これまではグロースハック、物量のハックということが言われてきたが、そこからの揺り戻しが来ていると感じる。勝ち残るためには“個客”の視点が必要。“ウェブ接客”については市場を作ってきたという自負もあるし、ツールとしての改善はもちろん行っていくが、より、本当にやりたかったこととしてCXを改めて打ち出した。CXの視点でネットビジネス全般を良くしていきたい」(倉橋氏)

倉橋氏はまた「KARTE for Appは、KARTEの今年の攻めの1つ目のトリガー」と話している。「今まではオフラインイベントへの出展を除けば広告なども行わず、顧客企業から他社への紹介など、オーガニックな集客だけで来た。顧客も増え、オペレーションも整い、ニーズも顕在化したことから、今年は攻めに転ずる。ここから年内にかけて、いくつか大きめのサービスリリースも準備している。2018年を飛躍の年として、全力でアグレッシブに行くつもりだ」(倉橋氏)

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TechCrunch Japan

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