アマゾン「プライムデー」は例年より早く6月21日・22日開催、米では独禁法調査の中で中小企業との提携アピール

Amazon(アマゾン)は、年に1度の有料会員(プライム会員)向けセールイベント「プライムデー」を6月21日(月)と22日(火)に開催すると発表した。Bloombergは以前、リークされた記録を元に同じ日程を報じていた。毎年恒例のこの大規模なセールは通常、ショッピングシーズンが一服する7月に開催されていた。しかし新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年のプライムデーは米国を含むほとんどの市場で10月まで延期された。

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そうした変更にもかかわらず、アマゾンによると、中小企業(SMB)は2020年のプライムデーイベント中に35億ドル(約3836億円)以上の売上を記録し、前年比60%増となった。ただし同社は、プライムデー全体の売上量は明らかにしていない。

2021年、アマゾンは、中小企業の支援を目的とした新しいプロモーションを実施し、プライムデーをいち早くスタートさせるとのこと。6月7日からプライムデーが始まるまでの間、プライム会員は、参加している中小規模の販売事業者が販売する商品を10ドル(約1095円)以上購入すると、プライムデーのイベント期間中に利用可能な10ドルのクーポンを受け取ることができる(日本では1000円以上の買い物で1000円分のクーポン)。

このキャンペーンは、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、日本を含む一部の市場で実施され、同社によればアマゾン史上最大のスモールビジネス支援プロモーションとなる。キャンペーンには30万以上の販売パートナーが参加するという。

プライムデーはもともとアマゾンの買い物客たちに、多様なカテゴリーにわたる大幅な割引を提供することで、アマゾンプライム会員(有料会員)への移行を促すことを目的としていた。その中にはスマートスピーカー「Echo」や「Fire TV」など、アマゾン独自のコンシューマー向けハードウェアデバイスも含まれており、これらは例年ベストセラーとなっている。

今回も同様に、家庭用品、電子機器、美容、ファッション、アマゾンデバイスを対象としたセール・割引価格を同社は約束している。さらに前回に続き、Prime Video、Amazon Music、Prime Gamingなど、アマゾンの他の事業分野にもセールを拡大する。

そうしたセールの中の1つは現在すでに開始されており、プライム会員は、最大7000万曲を提供するオンデマンド音楽ストリーミングサービス「Amazon Music Unlimited」の4カ月無料トライアルに登録することができる(Amazon Music Unlimitedに新規登録の場合のみ)。同社は最近、Apple(アップル)が自社のMusicサービス加入者向けに同様のサービスを開始したのに続き、無料アップグレードとしてロスレスストリーミングに対応するようになった。

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プライムデー自体は2015年から開催されているが、アマゾンは最近、同社のビジネス慣行に対する規制当局の監視や反トラスト法に基づく調査が強化されていることを受けて、中小企業をどのように支援しているかに強くスポットを当てるために、このイベントを利用し始めている。

アマゾンの創業者で(まもなく「前」になる)CEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が証言を求められた米国議会の公聴会に加えて、ワシントンD.C.司法長官のKarl Racine(カール・ラシーン)氏は2021年5月、アマゾンがサードパーティ販売業者に支配力を行使することで競争を阻害しているとして、同社を反トラスト法違反で提訴した。この訴訟は、アマゾンが自社のオンライン小売プラットフォーム上で価格を固定し、販売業者が他の場所で商品をより安く販売することを妨害することで、オンライン小売市場全体で人為的に高い価格設定を作り出していると主張している。

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さらにアマゾンは、マーケットプレイスを利用するサードパーティ販売業者の非公開データを利用して売れ筋商品をコピーしたり、同時に販売パートナーよりも低価格で売ることで中小規模の販売事業者に損害を与えているとして、EUを含む海外でも反トラスト調査を受けている。

アマゾンは「The Good Place(グッド・プレイス)」の主演女優で「アナ雪」の声としても知られるKristen Bell(クリステン・ベル)の好感度を利用した明るいムードの記者会見で、中小企業がアマゾンでいかにうまくやっているかをアピールした。このイベントでクリステンは、ドッグフードの「Pawstruck」やセルフケア製品の「Live by Being」など、お気に入りの販売業者に「インタビュー」を行ったが、彼らはもちろん、アマゾンとの提携についてすばらしいコメントしかしなかった。

クリステンは「Queer Eye(クィア・アイ)」のKaramo Brown(カラモ・ブラウン)や女優・コメディエンヌのMindy Kaling(ミンディ・カリング)とともに、 アマゾンのビデオショッピングサービス「Amazon Live」でも、お気に入りの販売者を紹介する予定だ。

またアマゾンは、中小規模の販売事業者や関連する取り組みについても広く紹介した。同社は2020年、250以上の新しいツールやサービスを提供し、販売パートナーが全世界で3億人の顧客にリーチするのを支援してきたと指摘した。

アマゾンのSmall Business Empowerment部門を率いるKeri Cusick(ケリ・キューシック)氏は、プレスブリーフィングの中でこう述べた。「米国内だけでも2020年1年間で、当社の中小規模の販売パートナーが毎分7200個以上、合わせて37億以上の製品を販売したことを考えると、感慨深いものがあります。全体では、約15万ドル(約1640万円)から増加し、売上平均は20万ドル(約2190万円)となり、米国では2万7000以上の販売者が50万ドル(約5480万円)以上の売上を達成しました」。

アマゾンは、もうすぐやって来るプライムデーのお得なセール情報については具体的に言及しなかったが、Le Creuset(ル・クルーゼ)、Tommy Hilfiger(トミー・ヒルフィガー)、Lego(レゴ)、Mattel(マテル)、Black & Decker(ブラック&デッカー)などの企業と提携し、プライムデーまで待っている間にも、同サイトで数十万製品のセールを開催すると述べている。

また、Alexa(アレクサ)デバイスを持っている米国ユーザーは「アレクサ、プライムデーについて教えて(Alexa, what are my deals?)」と尋ねることで、6月18日(金)から早期に買い物をすることができる(訳註:早期アクセスは地域により異なる)。

プライムデーは、Amazon.comまたは各地域のウェブサイト(日本ではamazon.co.jp/primeday)、スペイン語話者向けのAmazon.com/espanol、そしてアマゾンの実店舗でも利用できる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazonプライムデーeコマース独占禁止法

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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