アマゾンがマーケットプレイスで販売された欠陥製品にも自社で補償を行うと発表

Amazon(アマゾン)は米国時間8月10日、Amazonマーケットプレイスを通じて第三者から販売された欠陥商品の問題に対処するため「A-to-Z保証」として知られる返品ポリシーを大幅に変更することを発表した。これまでは、Amazonマーケットプレイスで販売された欠陥商品が原因で、物的損害や人的被害が発生した場合、アマゾンは購入者に、販売者に対して申し立てを行うように指示してきた。しかし、今回よりアマゾンは、1000ドル(約11万円)以下の賠償要求であれば、販売者が費用を負担することなく、アマゾンが直接購入者に補償額を支払うと述べている。1000ドルという金額は、マーケットプレイスで販売される商品の80%以上をカバーするという。

また、1000ドルを超える場合でも、アマゾンが有効であると認める賠償要求に対して、販売者が補償を拒否したり、反応しない時には、アマゾンが1000ドル以上の補償に踏み切ることもあるとしている。

アマゾンはこれまで長年にわたり、Amazonマーケットプレイスで販売された製品に対する責任を回避しようとしてきた。アマゾンは、これらの取引を仲介するプラットフォームに過ぎず、欠陥製品による損害賠償が発生した場合に責任を負う当事者ではないというのが、同社の主張だった。長年、多くの米国の裁判所これを認めてきたが、中には認めない裁判所もあり、問題を複雑にしてきた。最近では、カリフォルニア州の上訴裁判所が、アマゾンのウェブサイトで販売されたた第三者の製品によって消費者が損害を被った場合、アマゾンが訴えられる可能性があるとの判決を下した。この訴訟は、2015年に母親が息子のために購入したホバーボードに欠陥があり、顧客の手に火傷を負わせ、火事を引き起こしたというものだった。

アマゾンのマーケットプレイスは成長するにつれて、不良品や消費者からの苦情をどのように処理するかということがますます問題になっている。調査会社のMarketplace Pulse(マーケットプレイス・パルス)の推計によると、現在、アマゾンのマーケットプレイスには630万人の出品者がいて、そのうち150万人が活発な取引を行っているという。

この状況は最近ヤマ場を迎えることになった。米国消費者製品安全委員会(CPSC)が2021年7月に、アマゾンを訴えたのだ。この委員会は、Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)で販売されている潜在的に危険な製品を回収する責任を、アマゾンに負わせることを目指している。訴状で名指しされた製品には「警報が鳴らない欠陥のある一酸化炭素検知器2万4000台、子どもが火傷をする危険性のある可燃性繊維の安全基準に違反した多数の子ども用寝巻き衣類、消費者を電撃や感電から守るために必要な浸漬保護装置を付けずに販売された約40万台のヘアドライヤー」が含まれていると、連邦政府機関である同委員会は述べている。

訴訟の一環として、CPSCはアマゾンがFBA(フルフィルメント by Amazon)プログラムを利用してこれらの製品を販売していることを挙げ、アマゾンも介入し返金に応じるよう求めた。CPSCは、アマゾンが自社倉庫に商品を保管し、在庫を持ち、仕分けして出荷することで、手数料を得ていることを指摘。また、これらの商品を購入する消費者は、アマゾンから購入していると「当然ながら信じる」可能性があると主張している(この件に関するアマゾンの声明は、こちらで読むことができる)。

そして今回、アマゾンはマーケットプレイスを通じて販売された不良品に関する消費者からのクレームに、対応すると発表した。購入者はこれまでのように販売者に連絡を取るのではなく、アマゾンカスタマーサービスを通じてクレーム処理を開始できるようになる。

アマゾンは9月1日より、購入者からのクレーム情報を受け付け、販売者に通知してクレームに対応できるようにする。販売者が対応しない場合は、アマゾンが介入して自らの費用で顧客の問題に対処し、その一方で販売者への追及を別途行う。また、アマゾンが有効と判断したクレームを販売者が拒否した場合、アマゾンは顧客に補償を行う。

アマゾンでは、既存の不正検知システムを用いるとともに、外部の独立した保険金詐欺の専門家と協力して、顧客からの賠償請求の妥当性を分析するという。この第一段階の販売者保護機能が提供されることで、販売者は「根拠のない、軽薄な、または乱暴なクレーム」に対処しなくて済むと、アマゾンは説明している。また、Amazon Insurance Accelerator(アマゾン・インシュアランス・アクセラレータ)という新しいサービスも導入し、販売者に製造物責任保険を、選ばれた信頼できるプロバイダーから提供できるようにする。

アマゾンは、この新しい方針が、自社のマーケットプレイス事業の運営方法に影響を与える可能性のある新たな規制を回避するために役立つと考えているようだ。今回の発表において、アマゾンは「お客様を守るために、当社の法的義務や他のマーケットプレイスサービスプロバイダーが現在行っているレベルをはるかに超えた取り組みを行っています」と述べているが、これは明らかに、さらなる規制を牽制するためのメッセージである。

アマゾンによると、この変更はまず米国で実施されるという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazoneコマースマーケットプレイス訴訟アメリカ

画像クレジット:Adrian Hancu / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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