アマゾンの衛星インターネット事業「Project Kuiper」、2022年までに2基の衛星プロトタイプ打ち上げを目指す

Amazon(アマゾン)の衛星インターネットプログラムである「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」は、農村部や僻地にグローバルなブロードバンド・アクセスを提供するために、2022年末までに2つのプロトタイプ衛星の打ち上げを目指している。

プロトタイプ衛星の打ち上げ・運用にはまず、Federal Communications Commission(米連邦通信委員会)の承認が必要になる。Amazonの子会社でProject Kuiperを運営するKuiper Systems(カイパー・システムズ)は、米国時間11月1日、連邦通信委員会に、いわゆる「実験用ライセンスの要請」を提出した。

その目的は、衛星の推進力、電力、姿勢制御システム、熱設計、無線によるソフトウェア更新機能をテストし、検証することだ。2年間のライセンスを要請したKuiper Systemsは、長期にわたる性能とテレメトリのデータ収集を行う他、打ち上げオペレーションとミッション管理に関するデータも収集する。

この2基の衛星は、2020年FCCがKuiper社に使用ライセンスを与えた3つの軌道高度のうちの1つである、地表から590キロメートルの位置で運用される。このライセンスの下で、Amazonは今後6年以内に、計画しているコンステレーション全体(3236個)の約半分の衛星を打ち上げなければならない。

同社の実験用ライセンス申請書によると、衛星は軌道に打ち上げられた後、南米、アジア、テキサスの地上局と4つの顧客端末装置に接続されるとのこと。これについて同社は「Amazonが開発した革新的で低コストの顧客端末」のプロトタイプと記しているだけで、カスタマーユニットについての詳細は明らかにしていない。

Kuiper社では、ミッション終了時に衛星が「推進型軌道離脱」を行うと述べている。このプロセスが失敗した場合、衛星は打ち上げから3年半後に軌道減衰によって受動的に軌道を離脱するという。

ライセンスが承認されれば「KuiperSat-1(カイパーサット1)」と「KuiperSat-2(カイパーサット2)」と名付けられた2つのプロトタイプ衛星は、2022年の第4四半期までに2回のミッションに分けてケープカナベラルから打ち上げられることになる。

Amazonは、この2つのミッションの打ち上げ業者として、ABL Space Systems(ABLスペース・システムズ)を選択した。ABL社の「RS1」ロケットはまだ軌道に到達したことはないものの、同社は2021年中にアラスカで、この高さ88フィート(約26.8メートル)のロケットの最初の打ち上げを計画していると述べている。ABL社は先日、2億ドル(約228億円)の資金調達を完了したことを発表しており、これにより同社の評価額は24億ドル(約2735億円)にまで上昇したと報じられている。

両社は「数カ月前から」協業しており、すでに2回の統合設計レビューが完了していると、Amazonは述べている。

「これは長期的な協力関係の始まりであり、今後もABL社の事業拡大をサポートしていきたいと私たちは考えています」と、Amazonは声明の中で述べている。

現在はSpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)が独占している急成長中の衛星ブロードバンド市場に参入しようとしているAmazonにとって、この2基のプロトタイプは商業化への重要な足がかりとなる。Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、この市場は2030年までに最大186億ドル(約2兆1200億円)を生み出す可能性があるという。

Amazonは、Project Kuiperに少なくとも100億ドル(約1兆1400億円)の投資を計画している。このeコマース界の巨大企業は2020年4月、United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)との間で9回の打ち上げに関する契約を結んだと発表した。Amazonデバイス&サービス担当SVPのDavid Limp(デヴィッド・リンプ)氏は、2020年のTC Sessions:Space(TCセッションズ:宇宙)で、このプロジェクトでは複数の打上げ業者を探すことになると語っていた。

「3200個以上の物体を宇宙に打ち上げなければならないとなると、多くの打ち上げ能力が必要になります」と、語った同氏は「我々の希望としては、1社だけではなく、複数の業者にお願いしたいと考えています」と続けた。

画像クレジット:Amazon

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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