アマゾンは販売業者の売上の3分の1以上を吸い上げ、2021年には13.6兆円をその懐に入れたという

新たな研究によると、Amazon(アマゾン)は、AWSという名のキャッシュカウ(現金を生む牛:収益源)よりも、Marketplaceプラットフォームの手数料から、はるかに多くの利益を得ている。そのレポートによると、Amazonストアの利用に必要な支払手数料は現在、販売業者が売り上げの約34%を同社に渡すまでに膨らんでおり、これが最近ではAmazonの主要な収益源になっている。同社はこのレポートの内容に異を唱えている。

Institute for Local Self-Reliance(ILSR、地域自立研究所)によるレポート「Amazon’s Toll Road(アマゾンの通行料金)」は、主に2つの主張をしている。まず、ILSRの研究者によると、2021年にAmazonは、手数料や広告料の形で販売業者から約1210億ドル(約13兆6700億円)を得た。これは販売業者の総収入の約34%にあたるという。2019年の推定600億ドル(6兆7800億円)の2倍だ。当時は販売業者の売り上げの31%だったという。

創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏自身は、議会で反論しようとした。販売業者からAmazonに入る金額が増えているのは目の錯覚のようなもので、キーワード検索での上位表示や、Amazon独自の配送・倉庫インフラの利用など、アドオンサービスにお金を払うことを選ぶ販売業者が増えているためとした。

AmazonはTechCrunchへの声明で、ILSRのレポートを「不正確」だとし「Amazonの販売手数料とオプションのアドオンサービスを混同している」「Amazonの販売手数料は他のオンライン小売業者より安い」と述べているが、確かに、このレポートはそれらの合計を示している。

しかし、レポートの著者であるStacy Mitchell(ステイシー・ミッチェル)氏が指摘するように、アドオンは、Amazonがそれを利用する販売業者に次々と便宜を図るうちに、オプションから必須のものへと変化してきた。ここ数年のレポートによると、一般的な商品検索における広告やスポンサー付きリストの数が劇的に増加している。また「Fulfilled By Amazon(FBA)」サービスを利用する出品者に付与するスコアボーナスが、特定の人気スポットに商品が掲載されるかどうかに大きく貢献する。しかもそれは、成功した製品をマネするという同社の怪しげなビジネスを考慮に入れていない。

Amazonは、出品者が現時点で2016年の4〜5倍の広告費と掲載料を費やしており、それが同社の収入の大幅な増加に貢献しているという主張には触れなかった。同社は単に、広告の種類やプロセスには幅があり「出品者が商品の視認性を高めるのに役立つすばらしい方法」だと述べただけだ。検索結果でFBAユーザーを優遇していることは否定しているが、上のリンクにあるように、間接的な手段でそれを行っているようだ。

もう1つの主張は、Amazonが販売業者からの手数料によって稼ぐ莫大な収益を隠すために、独創的な会計処理を行っている、すなわち、Marketplace部門の莫大な利益と、配送インフラの構築で発生した莫大な損失をひとくくりにしているというものだ。確かにそれらは関連している。だが、まったく異なる2つの数字の合計を示し、それがビジネスを正確に表していると主張するのは、オープンだとはいえない。これは新しい主張ではないが、ミッチェル氏はこれに関し、具体的に2020年の数字を示しており、一般論の範囲を超えている。

画像クレジット:ILSR

「私たちは、販売業者に課す手数料が、AWSよりも多くの利益を生み出している可能性が高いと結論づけました。このことは、これまでのAmazonの常識に反しています。ニュースでは一般的に、AWSがAmazonの売上高の大半を占めていると説明されています」とミッチェル氏は要約で書いている。「Amazonが販売業者向け広告やその他の手数料から得ているであろうマージンに関するアナリストの推定値をもとに、私たちは、Marketplaceが2020年に240億ドル(約2兆7100億円)の営業利益を生み出していた可能性があると推定しました。これは、AmazonがAWSについて報告した135億ドル(約1兆5300億円)の利益を大幅に上回っています。AWSは長い間、Amazonのキャッシュカウだと見られてきました。しかし、今回のレポートで、このハイテク企業には、見えないところでひっそりと活動する第2のキャッシュカウがあることがわかりました」。

Amazonは、2021年の年間売上高の数字について年度中に「推測することはできない」と語ったが、ILSRレポートに掲載された前年の数字が正確かどうかという追加の質問には答えなかった。

同社の慣行のいくつかは、FTC(米連邦取引委員会)を含め、さまざまな政府権力が精査している。FTCを率いるのは、Amazonのビジネス慣行について問う人間としては、おそらく今や世界で最も有名なLina Khan(リナ・カーン)氏だ。ILSRのレポートは単なる情報提供にすぎず、Amazonはそれを振り払うことができるが、FTCのタスクフォースが同様の疑問を調査し、同様の結論を出しているのであれば、Amazonは冷や汗をかき始めることになるかもしれない。

画像クレジット:Elijah Nouvelage / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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