アムステルダム裁判所がAirbnbレンタル全面禁止措置は「法的根拠なし」と覆す

旅行者に人気の都市、オランダ・アムステルダムの3つの中央地区で住宅所有者が不動産をバケーションレンタル用に貸し出すことを禁止した当局による措置は、裁判所が法的根拠がないと裁定して覆された。

アムステルダム当局はAirbnbのような観光客プラットフォームが住民の生活の質に及ぼす影響にかかる懸念に対応していた。

アムステルダム市ウェブサイトのアップデートでは、現地時間3月16日から不動産所有者はバケーションレンタルが2020年7月1日から完全に禁止されていた3つの地区でホリデーレンタル認可を申し込むことができるとある。

市当局は、裁判所の裁定を精査中であり「明らかになり次第なるべく早く」ページを更新する、と述べている。

アムステルダムの当局は2020年夏、協議プロセス後に住民からの幅広い支持を得て、ブルグワレン・アウデ・ゼイデ地区、ブルグワレン=ニーウェ・ゼイデ地区、グラハテンゴルデル=ザイト地区のバケーションレンタルを禁止する措置を取った。

観光客向けのレンタルの急成長が住民の生活の質に影響を及ぼしていると当局は述べた。

当局は以前、市内の他の地区でバケーションレンタルを管理するための認可システムも導入した。このシステムでは、レンタルの上限を年間30日、1つのレンタルにつき最大4人まで、と制限している。

そして認可には「宿泊客は迷惑を一切起こさない」という条件も付いている。

裁判所の裁定を受け、3つの地区にも認可システムが適用される。

アムステルダム市中央地区でのバケーションレンタル禁止に対し、Airbnbや他のプラットフォームを通じて不動産を貸し出していた住宅所有者の利害を代表する組織(Amsterdam Gastvrij)は訴訟を起こした。原告者たちは住宅法2014条にはホリデーレンタル禁止の法的根拠がないと主張した。

アムステルダム裁判所はこの訴えに同意し「認可システムは完全な禁止を含むことはできない」と判決で述べている

「認可の条件に合う人は誰でも、原則として認可を申し込むことができます。完全な禁止は不動産の権利とサービスの自由な移動の大きな侵害であり、かなり特別な事情でのみ正当化される手段とみなされます」と強調した。

Airbnbの広報担当は、禁止に対する訴訟に同社は関与していなかったが、結果を注視しているとTechCrunchに語った。

ただ、裁判所の裁定は市当局が「生活の質」の考慮を含められる認可システムへの新たな条件の追加を法改正で可能にする余地を残している。

裁判所はまた、生活の質を管理するために認可システムを活用する別の手段として、既存の法律の下に導入されている宿泊提供できる日数の基準をともなう割り当て制度の可能性を提案している。さらには、市当局に地区制で不動産に(観光ではなく)居住目的を強制できるかもしれない、とも提言した。Airbnbなどでの活動を制限するための政策ツールとしてアムステルダム当局がさらに検討できる選択肢があるということになる。

同時に裁判所の裁定は、住宅供給(そして住宅価格)と居住者の幅広い生活の質が、オーバーツーリズム(もちろん新型コロナウイルスパンデミックに関係する継続中の旅行制限で現在は問題となっていない)と対立しているようなエリアへのレンタルプラットフォームの影響を規制しようという試みおいて欧州の都市が直面している問題も明らかに示している。

近年、欧州の主要観光都市の多くが、バケーションレンタルプラットフォームをめぐる不満を公にしてきた。2019年には「登録制度、そしてプラットフォームに載せている不動産ごとのレンタルデータの提供で当局に協力するよう、プラットフォームに対する強力な法的義務」を求めて公開書簡を欧州委員会に出した。

「都市は公共の利益を守り、さまざまな方法で短期ホリデーレンタルの悪影響を排除しなければなりません。多くの迷惑、不安感、近所の『観光地化』は住民が欲するものではありません。ゆえに、当局は地域の状況に応じた独自の規制を導入する可能性を持っているべきです」とも書き、EUの議員に規制の再考を支持するよう促している。

その後欧州委員会は主要バケーションレンタルプラットフォームと限定的なデータ共有の取り決めを発表し、その際「バランスの取れた」P2Pレンタルの開発を促したいと述べた。

2020年オランダ政府はバケーションレンタルプラットフォームへのデータアクセスに関してさらに行動をとるよう欧州委員会に圧力をかけた。オランダ政府は、Digital Services Act (DSA、デジタルサービス法)として知られるデジタルサービスを包括する汎EU規則の予定されてい大幅なアップデートで対策を含むよう求めている。

現在、EUの共同立法過程にあるDSA案は不法な商品やサービスを取り締まるためのプロセスの標準化を広く対象としている。つまり、バケーションプラットフォームを、不法なバケーションレンタル(例えば不動産が必要な認可なしに宣伝されているなど)に関連するデータ共有のような分野に含ませることもできる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Airbnbオランダ

画像クレジット:Aleksandar Nakic / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。