アメリカン・エキスプレスがBodesWellと提携しファイナンシャルプランニング分野に進出

American Express(アメリカン・エキスプレス)は、BodesWell(ボーズウェル)という7人組のスタートアップの協力を得て、ファイナンシャル・プランナーとしての活動に乗り出すことになった。

この大手クレジットカード会社は先日「My Financial Plan(マイ・ファイナンシャル・プラン、MFP)」と名づけられた、初のセルフサービス型デジタル・ファイナンシャル・プランニング・ツールの試験運用を開始した。今回の6カ月間の試験運用は、7月11日よりアメックスのカード会員約2万5000人を対象に始まっている。

アメリカン・エキスプレスは2020年末に、投資部門のAmex Ventures(アメックス・ベンチャーズ)を通じ、ひそやかにBodesWellに出資した。それ以来、金融サービスの巨大企業は小さなスタートアップと手を組み、ユーザーのためのファイナンシャル・プランニング・ツールを開発してきた。この新製品は、ユーザーが自分の財務状況の全体像を把握し、住宅購入や引退といった人生における大きな目標の達成を支援するように設計されている。

TechCrunchは、新製品につながる投資と戦略を主導したAmex VenturesのJulia Huang(ジュリア・ホアン)氏と、BodesWellの共同創業者でCEOのMatthew Bellows(マシュー・ベロウズ)氏に話を聞き、詳細な情報を得た。

実は2人は、2019年にある委員会で同席した際に出会ったという。

「丸投げの貯蓄ツールではなく、自分の経済的な全体像を理解して、人生の決断がもたらす経済的な影響を計画するために使える全体的なツールという点に惹かれました」と、ホアン氏はTechCrunchに語った。

これまで70社以上のスタートアップを支援してきたAmex Venturesは、BodesWellへの出資を決定する前に「この分野をかなり広範囲に査定した」とホアン氏はいう。

ホアン氏は、ベロウズ氏と彼のスタッフを、アメックスのデジタルラボのチームに紹介し、アメックスの顧客向けに特化した製品の共同開発に乗り出した(ベロウズ氏はボストンを拠点としているが、同氏によればこのスタートアップは「グローバルに展開している」とのこと)。

「私たちの目標は、詳細な洞察と予測を提供し、全体的な計画を支援することで、カード会員のファイナンシャル・プランニングを民主化することです」と、ホアン氏はTechCrunchに語っている。

画像クレジット:Amex Ventures

ベロウズ氏は、クライアントや顧客が自らのファイナンシャル・プランを構築できるようにすることを目的として、2019年初頭にBodesWellを起ち上げた。

「多くのファイナンシャル・プランニング・ソフトウェアは、ファイナンシャル・アドバイザーを対象としており、彼らが実行する必要があります」と、ベロウズ氏はいう。「だから、ほとんどの人は、ファイナンシャル・プランニングの恩恵を受けることができません。(中略)私たちの願いは、より多くの人にその恩恵を拡大することです」。

BodesWellは、ユーザーにファイナンシャル・プランの構築の仕方を案内し、Plaid(プレイド)を介して他の財務情報と同期させることで「リアルタイムで更新」できるようになるため、より効果的に機能すると、ホアン氏はいう。

このツールは「収入、資産、支出、負債など、キャッシュフローを総合的に考慮し、ユーザーがドラッグ&ドロップでライフイベントを計画できるようになっています」と、ベロウズ氏は述べている。

米国では、約8500万の家庭がファイナンシャル・プランナーをつけていないと言われている。その理由は、プランナーの意図に対する不信感や、単にそのプロセスに困惑してしまうためなど、さまざまだ。

現在、このMy Financial Planは試験的に無料で提供されているものの、今後有料化するかどうかはまだ決まっていない。

「私たちはまず、この製品のお客様に対するエンゲージメントとパワーを測っているところです」と、ホアン氏はTechCrunchに語っている「私たちは、この製品がお客様の心に響くものであることを確認し、より多くの人々にとって役に立つものにするために、繰り返し提供していきたいと考えています。私たちの第一の目標は、お客様がこれを使い、価値を見出してくださることです」。

アメックス・ベンチャーズは、投資先企業の3分の2以上と「何らかのパートナーシップ」を結んでいるという。

「我々が出資するスタートアップのエコシステムに価値を提供するため、そのような形でポートフォリオに関与したいと私たちは考えています」と、ホアン氏はいう。

BodesWellはこれまでに、Cleo Capital(クレオ・キャピタル)、Ex Ventures(Exベンチャーズ)、Riot.vc(ライオットVC)、GritCapital(グリットキャピタル)、Argon Capital(アルゴン・キャピタル)などの投資会社や、HubSpot(ハブスポット)のCEOであるBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏、Kintent(キンテント)のCEOであるSravish Sridhar(スレイヴィシュ・スリダー)氏などのエンジェル投資家から約150万ドル(約1億6500万円)を調達している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:American Express

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images (Image has been modified)

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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