アメリカ最高裁、パテント・トロールに打撃――特許権侵害訴訟の提起先を制限

お気の毒だが、30年にわたってアメリカの訴訟制度を巧みに利用してきたパテント・トロールがアッパーカットを喰らった。これまでパテント・トロールは訴訟提起先の裁判所をほぼ自由に選ぶことができた。その結果、特許権保有者に甘いことで悪名高いテキサス州東部連邦裁判所が頻繁に選ばれてきた。しかし今後は特許権侵害訴訟を起こすに当ってそうした振る舞いは許されなくなる。

アメリカ最高裁は、原告は特許権侵害を主張するにあたって、特許権侵害企業が設立された場所または現実に継続して業務を行っている場所あるいは現に特許権が侵害されている場所を管轄する裁判所にのみ訴を起こすことができると全裁判官の一致で決定した。

他社を訴えて金銭的利益を得ることを主たる目的として特許を保有する会社にとってこの決定は打撃となる。

法律の専門家は、今後の多くの特許権侵害訴訟がアメリカ企業多数が登記先としているデラウェア州、テクノロジーのハブであるカリフォルニア州やマサチューセッツ州に移るだろうと考えている。

こうした場所ではトロールに訴えられた企業側が訴訟のための十分な資源を持つだけでなく、その場所自体がテクノロジー企業にとってホーム側だという利点もある。ただしWall Street Journalの記事によれば、訴訟の集中により審理はこれまでより長引くだろうという。このことは特にデラウェア州の裁判所において事実となりそうだ。テキサス州東部地区では驚いたことに最近の全特許訴訟の30%が提起されており、同州の裁判所はこれを処理するために必要な資源を配置している。デラウェア州の特許訴訟は大幅に増加することが予想されるが、同州の裁判所には今のところこの負荷の増大をさばくための準備がない。

Apple、Samsung、Microsoft、Googleは数多くの特許権侵害訴訟に関係しているが、今日の最高裁決定は実はテクノロジー企業とは直接関係ない訴訟に関連するものだった。清涼飲料のフレーバーを提供するTC Heartland LLCと食品・飲料の大手企業、Kraft Heinz Coとの裁判でこの決定が下された。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。