アリババが機械学習タスクの速度を大幅に向上させるAI推論チップを発表

米国時間9月24日、アリババグループ(Alibaba Group、阿里巴巴集団)は初のAI推論チップを発表した。Hanguang 800(含光800)という名のそのニューラル処理ユニットは、機械学習タスクを劇的に速くしエネルギー効率の高いものにするという。このチップは、アリババクラウドが毎年開催しているApsara Computing Conferenceで発表されたが、すでにアリババの商品検索やパーソナルレコメンデーションを始めとするeコマースサイトの機能を強化するために使用されている。今後アリババクラウドの顧客からも利用可能になる予定だ。

チップの能力を示す例としてアリババは、オンラインモールのタオバオ(淘宝)に業者から毎日アップロードされる10億枚超の製品イメージを分類して、検索とパーソナルレコメンデーションが可能になる処理を挙げた。これまは1時間程度かかっているが、Hanguang 800を利用すればわずか5分で完了できるようになるという。

アリババは、マシン処理を必要とする多くの事業ですでにHanguang 800を使用している。その中には製品の検索とレコメンデーションに加えて、eコマースサイトでの自動翻訳、広告、カスタマーサービスなども含まれている。

そのチップが、アリババクラウドの顧客から利用できるのがいつになるのかは明らかにされていないものの、貿易戦争が中国と米国テック企業同士のビジネスパートナーシップを難しくしている現在、このチップ自身は中国の企業から米国の技術への依存を緩和することになるだろう。またそれは、アリババクラウドが中国の外で成長するためにも役立つはずだ。中国内では、アリババクラウドは市場のリーダーだが、アジアパシフィック地域ではアリババクラウドは現在も、Amazon、Microsoft、そしてGoogleの後塵を拝している(Synergy Research Groupのデータによる)。

Hanguang 800は、アリババが150億ドル(約1兆6000億円)以上を投資しているグローバルな研究開発組織Alibaba DAMO Academy(阿里巴巴達摩院)内の、クラウドおよびエッジコンピューティング用チップの開発を推進するユニットT-Headによって開発された。T-Headは、アリババの小売アプリや物流アプリを始めとする、ビジネスアプリ向けに設計されたチップのハードウェアとアルゴリズムを開発した。

アリババグループのCTOであり、アリババクラウドインテリジェンスの社長であるJeff Zhang(ジェフ・チャン、張建鋒)氏は声明の中で「Hanguang 800の立ち上げは、既存のそして将来の私たちのビジネスを推進するコンピューティング能力を、エネルギー効率を改善しながら拡張していく次世代技術追求の中でも、とても重要な一歩です」と述べている。

また彼は「近い将来、このチップによって可能になる高度なコンピューティングへのアクセスを、いつでもどこでもクラウドビジネスを通じて提供することでお客様の力になれる予定です」と付け加えた。

T-Headが他にローンチしたものには、今年初めに行われたXuanTie 910(玄鉄910)も挙げられる。これは米国のUCバークレイ校で始まったオープンソースのハードウェア命令セットプロジェクトであるRISC-Vに基くIoTプロセッサーだ。XuanTie 910は、エッジサーバー、ネットワーク、ゲートウェイ、そして自律運転車などの、ヘビーデューティーなIoTアプリケーション向けに開発された。

Alibaba DAMO Academyは、UCバークレー校やイスラエルのテルアビブ大学をはじめとする世界中の大学と協力している。このプログラムの研究者たちは、2035年までに20億人の顧客にサービスを提供し、1億人の雇用を創出することを目標に、機械学習、ネットワークセキュリティ、ビジュアルコンピューティング、そして自然言語処理に焦点を当てている。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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