アルファベット傘下のSidewalk Labsがリアルタイムデータで都市部の駐車スペースを管理するセンサー「Pebble」を発表

Alphabet(アルファベット、Googleの親会社)傘下の都市イノベーション企業であるSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)は、駐車場や路上駐車スペースの空き状況をリアルタイムに提供して都市部の駐車スペース管理を支援する車両センサー「Pebble」を発表した。

Pebbleのシステムは次のようなものだ。駐車スペース(地面)に設置された小さな球状のセンサーが車両の有無を記録する。街頭などに取り付けられた、太陽電池で駆動するゲートウェイハードウェアによって、携帯電話ネットワーク経由でデータがクラウドに送信される。データは不動産開発会社や駐車場運営会社、自治体などがダッシュボードで閲覧・分析できる。

Pebbleは、カメラを使用しないことや、人や車の識別情報を収集しないことで「プライバシーが保護される」という。Sidewalk Labsは1年前に、13億ドル(約1400億円)を投じたトロントのスマートシティ開発をプライバシーの問題で中止して以来、目立った活動はなかった。同社は、大規模な都市インフラプロジェクトをてがけるのではなく、民間企業や公共団体が都市をより良いものにするために利用できる小規模なソリューションに力を注ぐようだ。

関連記事:グーグル子会社スマートシティ開発のSidewalk Labsがトロント事業から撤退

2020年10月、Sidewalk Labsは機械学習を使った設計ツール「Delve」を発表した。Delveでは開発者、建築家、プランナーが都市プロジェクトの最適な設計プランを作成することができる。また、数週間前には、Sidewalk Labsから独立したReplica(レプリカ)が、AIと機械学習を利用して「合成」人口を生成し、その行動を追跡することで現実世界で起こり得るであろうシナリオをシミュレートするデータプラットフォームで、4100万ドルを獲得(シリーズB)した。

ニューヨーク市のMetropolitan Transit Authority(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)は、パンデミックの際にReplicaを活用して公共交通機関のスケジュールを調整した。現在、新型コロナを克服しつつある米国において、駐車場とモビリティに関わる組織、特に環境的に持続可能な交通の復興計画を展開しようとしている都市は、Pebbleのようなツールを使って駐車スペースの供給を効率的に管理することを検討する可能性がある。

交通量の9~56%とそれにともなう公害は、駐車スペースを探して走り回る車両によって引き起こされている。Pebbleを利用すると、リアルタイムの駐車スペース情報が、APIでGoogleマップなどのナビゲーションアプリに表示することが可能で、このような車両を減らすことに役立つという。

Sidewalk LabsのシニアクリエイティブテクノロジストであるNick Jonas(ニック・ジョナス)氏は、今回の発表を次のようにブログで紹介している。「ユーザーは家を出る前にリアルタイムの駐車スペース情報を見て駐車スペースが限られていることを知り、パーク&ライドやフェリーなどの別の移動手段を利用するかもしれません」「例えばBARTのパーク&ライドステーションにおけるスマートパーキングプログラムでは、運転距離が1人当たり月平均約16km短くなり、通勤時間も短縮されました」。

都市部の路上駐車スペースを監視できるツールがあれば、都市には確実にメリットがあるが、その労力は膨大なものになるだろう。ニューヨークのような都市で、路上駐車のスペースに1つずつセンサーを広く設置することを想像してみて欲しい。個々の駐車スペースを線引きするのが難しいのはいうまでもないが、これはかなり大変な作業だ。Sidewalk Labsによると、すでに顧客と協力して、試験的に数万台の駐車スペースを管理しているとのことだが、この顧客の中に都市が含まれるかどうかについての詳細な情報は得られなかった。

Pebbleを発表したブログ記事の中で、Sidewalk Labsは、想定されるユースケースを説明している。Pebbleを路上駐車スペースに設置する市当局は、Pebbleで得た情報を活用して、アウトドアダイニングなどで利用されそうな場所に路上駐車スペースを割り当てたり、需要と供給に応じて路上駐車の料金を調整する変動価格制などの柔軟なプログラムを適用したりすることで、収益を上げることができる。

さらにSidewalk Labsによれば、不動産開発業者は、需要に見合うだけの駐車スペースがすでにあることを市に証明できれば、駐車ゾーンを共有にしたり、駐車スペースの数を減らしたりすることができるという。

駐車の効率が上がれば、車への依存度が上がるように思えるが、Sidewalk Labsはその逆だという。ジョナス氏は、Pebbleが「車の運転を減らし、新たな駐車場を減らすためのいくつかの方法」で貢献できると述べる。例えば不動産開発業者は、新しい住宅やオフィススペースに一定量の駐車スペースを建設することを求める市の条例に対して、説得力のある反論をするために必要なデータを収集することができる。

「Pebbleは、駐車スペースの需要が既存の駐車場や共有の駐車ゾーンでカバーされていることを証明し、新たな駐車スペースを確保する必要性を減らすことができます」とジョナス氏。また、ユーザーが駐車スペースを探す際に発生する交通量についても、Pebbleは「駐車スペースに直接ナビゲーションできるようにする」ことで「駐車スペースを探して走り回ることで発生する交通渋滞の30%」を軽減することができるとのことだ。

こうしたインフラ面でのメリットに加えて「Pebbleは通勤に車ではなく他の交通手段を選択するような経済的・利便的なインセンティブにも貢献できる」とジョナス氏は指摘する。

「Pebbleは、都市が変動価格制を導入して駐車スペースの『適正価格』を設定し、代替の移動手段を促進することができます」とジョナス氏は述べ、ベイエリアのBARTパイロットの初期データに基づいて「駐車スペースへのナビゲーションとリアルタイムの駐車スペース情報を含むPebbleのデータは、オフィスまで車で行くのではなく、パーク&ライドを使用するように促すこともできる」と続ける。

Sidewalks Labsの主張の多くは、人々が実際にはどのように活動しているのか、どのように都市を移動しているのか、という点に関する既存のデータのギャップや盲点に対処することができれば、都市をより効率的に、効果的に、そして安全に運営することができる、という考察をベースにしている。Pebbleは、駐車スペースの利用状況に関するデータの空白を埋める重要な要素になりそうだ。

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カテゴリー:モビリティ
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画像クレジット:Sidewalk Labs

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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