アンソニー・ボーディン氏の最新ドキュメンタリー「Roadrunner」にはディープフェイク音声が使われている

米国時間7月16日、Anthony Bourdain(アンソニー・ボーディン)氏を描いたドキュメンタリー映画「Roadrunner」が米国の劇場で公開される。多くのドキュメンタリーと同様に、本作はインタビューや未公開シーンを含む数多くの記録映像から作られており、主人公の物語を自身の言葉で語らせようとしている。作品ではボーディン氏が2018年に自殺する前にカメラの前で話したことのなかった言葉も、彼の声で聞くことができる。

The New Yorker(ニューヨーカー)のインタビューに答えて、同作品の監督であるMorgan Neville(モーガン・ネヴィル)氏は、ボーディン氏に話して欲しかった発言が3つあったが、録音がなかったので代わりにソフトウェアを使って再現した、と語った。「彼の声のAIモデルを作りました」と同監督がNew Yorkerに語った。

それは簡単な仕事ではなかったようだ。別のGQのインタビューでネヴィル氏は、プロジェクトについて4つの会社と話をして一番良いところに決めたと語った。その会社は約10時間の音声をAIモデルに読み込ませた。ネヴィル氏が望むソフトウェアで再現するボーディン氏の正確な口調を決めるのには多大な労力が必要だった。作家で旅行家だった彼が文章を口述するやり方は長年のTV出演の間に大きく変わったからだ。

これまでに見たことのあるAIディープフェイクで人を騙すやり方と比べて、出来は悪くないが、倫理的にはやはり疑問が残る。私が知る限り、この映画にボーディン氏の声をAIで再現したことを示す情報開示はない。「この映画を見たら、わかっているもの以外、どのセリフをAIがしゃべっているのかは、たぶんわからないでしょう」とネヴィル氏はThe New Yorkerに話した「後日ドキュメンタリー倫理委員会を開くかもしれません」。GQのインタビューでは、ボーディン氏の遺族が彼に「トニーが生きていれば喜んだことでしょう」と言ったことを話し「私は彼の言葉を生き返らせようとしただけ」と付け加えた。

【編集部注】本稿(原文記事)はEngadgetで掲載された。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:映画合成音声ディープフェイク

画像クレジット:CNN / Focus Features

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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