イタリア競争当局がアマゾンに約1450億円の罰金、市場での地位乱用を指摘

イタリアの競争当局は、Amazon(アマゾン)に11億2900万ユーロ(約1450億円)の罰金を科したと発表した。独禁監視当局によると、Amazonは市場での支配的地位を乱用し、サードパーティの販売者に同社の物流サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」の利用を押し付けたという。

イタリア競争・市場保護委員会(AGCM)は、声明250ページに及ぶ報告書でその考え方を詳述している。それによると、サードパーティの販売者がFBAを活用している場合と、独自の物流スタックを使用している場合では、同じ扱いを受けることができないとのことだ。

FBAを活用している販売者は、同社の有料ロイヤリティプログラムAmazon Primeに参加することができる。このサービスの会員は、一部の商品を無料で配達してもらうことができる。Amazonの自社在庫に加えて、FBAによってAmazonの倉庫から送られてくるサードパーティ販売者の商品にもPrimeラベルが貼られる。

プライムデー、ブラックフライデー、サイバーマンデーなどのAmazonのイベントでPrime商品が扱われるため、広範囲に影響を与えることになる。つまり「Fulfillment by Amazon」を利用すれば、Amazonのイベントに取り上げられる可能性が高くなる。

しかし、それだけではない。Amazonの商品ページでは、同社が自動的に販売者を選択して、購入ボックスを表示している。パソコンの場合、購入ボックスとは画面の右側にある、商品をカートに入れたり「今すぐ購入」ボタンで直接購入したりするためのボックスのことだ。

購入ボックスの下にある小さなボックスには、他の販売者が表示されている。イタリアの競争当局によると、FBAを利用している販売者は、他のサードパーティの販売者に比べて、購入ボックスで紹介される確率が高いという。

筆者がAmazon.itで良い例を探してみたところ、この便座には次のようなことが書かれていた。「Amazonが直接販売していません。サードパーティの販売者からしか入手できません」。デフォルトでは、Amazonは購入ボックスにWOLTU GmbHを掲載している。WOLTU GmbHはFBAを利用しているため、この商品はAmazonが発送する。そして、Amazon Primeで無料の迅速配達を受けることができる。

その購入ボックスの下には、他の販売者から購入できるという小さなボックスがある。今回は、もう一度WOLTU GmbHを目にする(そして「Amazon倉庫」の中古商品も)。同じ販売者だが、直接発送してくれるので送料も無料になる。

なぜWOLTU GmbHは同じ便座を2回出品しているのか? FBAは無料の物流サービスではない。AmazonはFBAで販売された商品からより多い手数料を得ている。また、WOLTU GmbHは直接販売した方が収益が上がるように思える。しかし、便座がサブメニューに隠されているため、顧客が直接販売者から便座を手に入れることを選ぶことはおそらくない。

Institute for Local Self-Reliance(地域自立研究所)の最近の研究では、Amazonがサードパーティの販売者からますます多くの収益を得ていることが取り上げられ、FBAが悪循環に陥っていること、サードパーティの販売者が虜になっていることが強調されている。

同様に、Amazonは販売者に対して、同社の倉庫・配送サービスであるフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)の購入を強制しています。Amazonのアルゴリズムは、FBAを購入した販売者を非常に優遇しており、Amazonで売上を上げるためにはFBAが必須となっています。その結果、他の運送業者の使用を辞めてFBAを利用する販売者の割合が近年急増しています。Amazonは、自社の配送サービスの使用を虜となった販売者に強制することで、一夜にして大手物流業者に成長しました。Amazonの配達事業は、今や米郵政公社に匹敵する規模となっています。また、ここ数年、Amazonは保管料や配送料を着実に値上げし、FBAを利用して販売者の収益を圧迫しています。

イタリア当局はAmazonに対し、FBAを利用しているかどうかにかかわらず、サードパーティである販売者にとって公平な基準を新たに設けるよう求めている。また、同社は行動面での対策も実施しなければならない。監視する管財人が変更点を確認する。

Amazonは筆者に声明を送ってきた。「当社はイタリア競争当局の決定に強く反対し、控訴します。提案された罰金と救済措置は不当であり、不釣り合いなものです」と同社は述べている。

「イタリアにおけるAmazonの年間売上高の半分以上は中小企業によるものであり、中小企業の成功は当社のビジネスモデルの中核をなすものです。中小企業は、オンラインでもオフラインでも自社製品を販売するための複数のチャネルを持っています。Amazonはその選択肢の1つにすぎません。当社は、Amazonで販売する1万8000社のイタリアの中小企業の成長をサポートするために常に投資を行っており、自社で出荷を管理する販売者を含め、複数のツールを販売者に提供しています」としている。

画像クレジット:Philippe Lopez / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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