イノベーティブな起業を叶えるには、バカげたアイデアを採用すること――BoxのCTOが起業のコツを伝授

11月18日から19日にかけて東京・渋谷ヒカリエで開催中のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」。今年も海外から多数のゲストが参加しているが、企業向けクラウドストレージを展開しているBoxのCTOを務めるSam Schillace氏もその1人だ。Schillace氏は技術者、起業家としても豊富な経験を持つ人物。「Google Docs」の前身となるプロダクト「Writely」を開発し、2006年Googleへ売却したスタートアップ「Upstartle」の創業者兼CEOを務めたほか、現在のテックシーンには欠かせないテクノロジーやサービスを世に送り出してきた。

連続起業の実現のために必要なのは「破壊的なアイデア」

Schillace氏は、現在までに6つのビジネスを立ち上げてきた。もちろんそのどれもが成功を収めたわけではなく、失敗に終わる経験もあった。一度の起業で成功を果たすことも決して簡単ではないが、連続起業を実現するために必要なのは「ハードな、破壊的なアイデアを見つけること」だと話す。

シリコンバレーのキーマンとしては珍しく、コンピューターサイエンスの学位を持っていないSchillace氏。さらに、起業人生をスタートした当初は、スタートアップにフューチャーするメディアもなかった。それでもゲームソフトウェアの会社を起業した。

Schillace氏は当時を振り返りつつ、「 単に『起業のための起業』ではなく、自分のやりたいこと、イノベーションに対する情熱がないとだめだ。そして、それが好きだということが大事だ。それが次の創業につながった」と熱っぽく訴える。ちなみに、なぜネットワークゲームの会社を起業したのかその理由は実にシンプルで「もっと速く、複数人でゲームをしたかったから」だそうだ。

奇妙に思われるアイデアこそ挑戦する価値がある

新しいテクノロジーで遊んでいて、それが起業の情熱にもつながった。では、なぜ失敗もしたのだろうか。Schillace氏はイノベーションのパターンを見つけられるメソッドを生み出した。ズバリ「奇妙に思われるアイデアにこそ挑戦する」ことだ。

奇妙に、そしてバカバカしいと思われるアイデアに挑戦するには、自分たちで使うツールを常に最新状態に保たなくてはならない。また、素早くトライアル(実験)を重ねることが必要であり、そのトライアルに対するユーザーのリアクションを常にウォッチすることが必要である。

ユーザーのリアクションが平凡なら、そのサービス自体が平凡

セッション冒頭から、「破壊的なイノベーティブ」というキーワードを繰り返し使うSchillace氏。

「何かサービスを公開すれば、ユーザーのリアクションが起こる。そしてその中には、何かとても奇妙な反応が必ず現れる。そして一部の少数の人はそのリアクション内容をとても気に入る。つまり、1つのサービスに対してものすごい好きな人、ものすごい嫌いな人が登場する。もし、平凡な反応しかなかったら、そのアイデアはイノベーティブではなく、平凡なものであるということだ」――人は多くの人に受け入れられるサービスやアイデアを採用しがちだが、それは安易な選択であると明言した。

続けてSchillace氏は「これから起業を目指す人に、レッスン形式でレクチャーするならば」と前置き、新しいイノベーティブにつながるヒントを4つにまとめてくれた。

  • レッスン1:可能か、可能でないかのギリギリラインのうちに目をつける。カッティングエッジにいること。
  • レッスン2:使うツールを常に最新状態に、シャープに保っておくこと。
  • レッスン3:強いリアクションを大切に、イノベーティブなアイデアは強いリアクションから生まれる。
  • レッスン4:筋が通っていないように見えても、バカげているように感じても、そのアイデアを採用し、実験していくこと。

 

あなたはそのアイデアやサービスに情熱を傾けられるか?

起業するには自分で「どのようなアイデアやテクノロジーを選択するのか、そのアイデアやテクノロジーはイノベーティブなのか」を選択・判断しなくてはならない。とても重要な判断だが、何を基準にすべきなのろうか。Schillace氏は闇雲に新しいテクノロジーやアイデアを採用して起業へ突き進むのではなく、「(採用しようとしているテクノロジーやアイデアが)破壊的に、興味深い分野であることを見極めること。そして、その分野に自分が情熱を傾けられることを選ぶこと」ことが重要だと主張する。

では、破壊的にイノベーティブなアイデアやテクノロジーをどう見極めればいいのか? 例えばBitcoinを例に挙げよう。これはさまざまなテクノロジーが進化した結果、分散型の信頼できるシステムが構築できた結果誕生した産物であるが、市場には非常にバカバカしいと受け止められた。だが、実際にそのテクノロジーはイノベーティブである。

クアッドコプターなどのドローン、3Dプリンターも同様だ。誕生し、発表された当初は「オモチャじゃないか、こんなもの必要ない」と受け止められていたが、ドローンは新しい流通システムの一翼を担う存在として期待されているし、3Dプリンターは今や医療機器分野において重要な位置を確立している。今の時代は「新しいものがまとまってより効果的に登場している」(Schillace氏)のである。

どんな人にもイノベーティブは重要

「どんな人にもイノベーティブは重要である。テクニカルイノベーションはミステリアスなものではない。また、たとえ大企業であっても成功している企業は、テックカンパニーのスピードで動いている」自身の強い信念で起業を続けている彼は最後に印象的な言葉を使い、セッションをまとめた。


投稿者:

TechCrunch Japan

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