イリノイ州がマスク着用啓発の広告費割り当てにデータサイエンスを活用

公衆衛生に役に立つターゲット広告の例がある。マスク着用を促すキャンペーンで、イリノイ州は新型コロナウイルス感染症のリスクが最も高い郡にデジタル広告費用を注いでいる。

これを実現するために、同州政府はDan Wagner(ダン・ワグナー)氏が設立した(未訳記事)データサイエンス企業Civis Analytics(シビス・アナリティクス)と協業してきた。ワグナー氏は以前、Barack Obama(バラク・オバマ)氏の2012年再選キャンペーンで最高アナリティクス責任者を務めた人物だ。デジタル広告キャンペーンは2020年8月に始まったが、同州はターゲットを絞るのに使っている週ごとのリスク評価を示すマップなど、この取り組みの詳細をいま明らかにしている(イリノイ州リリース)。

Civisでヘルスケアアナリティクスのディレクターを務めるCrystal Son(クリスタル・ソン)氏は、チームが郡レベルの最新の新型コロナウイルスデータをJ.B. Pritzker(J.B.プリツカー)知事のチームのために毎週まとめていると説明した。プリツカー知事はこのデータを、It Only Works If You Wear Itキャンペーン広告費をどこで重点的に使うべきかを決めるのに活用している。

知事のオフィスで管理・予算を担当する責任者Cameron Mock(キャメロン・モック)氏は「最も新型コロナリスクがあるエリアにメディア費用を集中させるための独自方式」を州政府は活用している、と声明文で述べた。

モック氏は「リスクを基にした独自方式は、郡を高リスク、中リスク、低リスクに分けるために新型コロナ新規患者の傾向と郡レベルのモビリティを活用しています。そしてリスクが最も高いエリアに最も多くの広告費を充てるために比例分配を採用しています」。

画像クレジット:State of Illinois

この独自方式では郡を5つに分ける。最もリスクの高い郡はティア1、最もリスクが低い郡はティア5だ。ティア4と5にはベーシックな広告費が配分され、ティア3の郡はより大きな額を受け取る。そしてティア1と2には最大額が分配される。

マスク着用キャンペーンはオンライン広告に限定されてはいないが、独自方式はデジタル面でのみ使われている。というのも、広告費を週単位で従来の広告チャンネルに振り分けるのは難しいからだ。

「各郡の新型コロナ状況はそれぞれ異なるため、我々はイリノイ州内102郡の各現場の状況に対応するキャンペーンになるようにデザインしました」とプリツカー知事の副報道官Alex Hanns(アレックス・ハンズ)氏は声明で述べた。「エリアのリスクが高まった時、公衆衛生に関するメッセージの頻度も増えます。パンデミックが続いて次の波が来るとき、イリノイ州は引き続き科学者の指摘に耳を傾け、住民の安全を守るためにデータを追跡します」。

ソン氏は新型コロナ対応で、最もリスクの高い地域への広告費投入を優先するのと同じようなモデルを使っているキャンペーンは他にはない、と話した。このモデルはうまくいっているのだろうか。特定のキャンペーンの効果はデータでは示されないが、カーネギーメロン大学によると、イリノイ州民の89%がマスクを着用していて、これは現在米国内で15番目に高いマスク着用率となっている。

将来は他の組織がヘルスケアのために「よりカスタマイズされたコミュニケーションアプローチ」を採用するようになることを願っています、とソン氏は述べた。

「各グループが同じように行動して考えるかのように、ヘルスケアにおいては各グループを同一扱いする習慣がまだあります。それぞれにカスタマイズされたアプローチは、マスク着用以外にも幅広く応用できます」と話した。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:データサイエンス新型コロナウイルス

画像クレジット:filadendron / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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