インターンシップ市場は拡大するか? 就活の新しいあり方を提案する「InfrA」がローンチ

結婚情報誌ゼクシィが2010年に実施したアンケート調査によれば、今や結婚するカップルの7割が結婚前に生活をともにする、いわゆる「同棲」を経験している。これを読んでいるTechCrunch Japanの若い読者にはピンと来ないかもしれないけど、ほんの一世代とかふた世代前までは「婚前交渉」というインビな言葉があったくらい、結婚前に生活をともにするなんてトンデモナイと考える人が少なくなかった。でも、一緒に暮らしてもみずにいきなり結婚なんて恐いよね。

就活にも似た事情があると思う。採用する企業にしてみても、これからキャリアをスタートしようという学生にしてみても、「本当にコイツでいいのだろうか? ちょっと試せるなら試してみたい」という気持ちがあるのが本音だろう。一緒にやってみれば、価値観や相性が分かる。エントリーシートの文章を表面的に洗練させるだけ洗練させ、大量に送って、大量に見るのなんて不毛なのかもしれない。

そんな時代背景から、本誌でもお馴染みのWantedlyのような、職探し・人材探しの新しいカタチが出てきているが、この問題の当事者の一方である学生起業家によるスタートアップのTraimmuが、つい先ほど、インターンシップ関連サービスの「InfrA」(インフラ)をローンチした。

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成果報酬型でインターンシップのマッチング

InfrAは学生向けインターンシップの掲載媒体として機能する。現在参加企業はリクルートホールディングス、弁護士ドットコム、グロービス、トレンダーズをはじめ、スタートアップ企業のC Chanel、ZUU、ユーザーベース(NewsPicks)、Rettyなど30社。実際にインターンシップが決まれば企業はInfrAに対して成果報酬を支払う。この市場ではインターンシップ1件につき平均10万円程度の支払い発生するが、InfrAではその半分程度という。

インターンシップ期間終了後に、企業側から学生に対して定型フォーマットに従ったフィードバックが行われるのがInfrAの特徴だ。この夏に大阪大学を中退した、Traimmu創業者の高橋慶治氏は、以下のように話す。

「フィードバックが学生のマイページに表示されます。フィードバックには4項目あって、採用理由、インターンシップで取り組んだ内容、インターンシップ生の強み・弱み、改善の提案です。学生がインターンシップを希望する理由は、自己の成長と就職のため。フィードバックは学生にとって非常に重要です」

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Jobwebの調査によれば、約85%の学生がインターンシップを選ぶ際に「フィードバックがもらえるか」を重視している一方、これまでのインターンシップは、ただ参加して終わりというものが多かったという。ここには終了時に社員に聞きづらかった、という学生側の事情もあるようで、それを解決するのが、インターン終了後に現場社員から必ずフィードバックがもらえる仕組みというわけだ。「参加して終わりではなく、成長に活かせる。学生ファーストで考えています」(高橋CEO)

プロジェクト参加など実績を可視化し、そのままエントリーシートに

このフィードバックは、仕事やプロジェクトの内容のみが公開され、それ以外は本人にしか見えない非公開となるが、そのままエントリーシートとして使えるようにするという。11月には就職活動用ページを用意する。「これまでのエントリーシートは文字ベースで学生時代の取り組みを書くもので、形骸化していた。InfrAではプロジェクト参加履歴など経歴を可視化し、データとして蓄積していきます」(高橋CEO)

過去に参加したインターンシップのほかにも、留学経験やゼミ・研究室での成果、学外でのプロジェクトなどの経歴を時系列順に追加していくことができるという。

Traimmuは、2015年6月にコロプラネクストからシード資金を得て、インターンを含めて7人のチームでスタートを切っている。TraimmuがInfrA公開前から運営しているウェブメディアで、月間12万人の学生が読む(16万UU)「co-media」と連携することで、知名度が低く学生へのリーチが難しいスタートアップのリアルな姿を伝えるなどしていくという。

また、InfrAでは地方学生向けの就活シェアハウスを経営する「地方のミカタ」と提携することで学生に対して安価に住居を提供するそうだ。高橋CEOによれば、現在学生たちの間でインターン経験者は増加中とか。

「ここ2、3年は増えていますね。1日とか1週間程度の短期インターンだと周囲で8割程度が経験しているイメージです。中長期のインターンシップは比較的少なく、経験者は1〜2割です。IT系やスタートアップ・ベンチャーが多いですが、中長期的には大手や外資系でも増えていくのではないかと思います」

「一度企業と接点をもっている学生は、自分の尺度、自分の目で見ることができるようになります。企業文化を知った上で納得して企業選びもできる。企業にとってはミスマッチを減らせるのがメリットです。入社してからギャップを感じて3年以内に退職する離職率が厚生労働省が毎年発表している統計では約30%だと言われています。1人あたり200〜300万円をかけて学生を獲得している企業には厳しいです。インターンシップは、企業と学生の熱量をすり合わせる重要な作業です」

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。