インドが中央銀行によるデジタル通貨の段階的導入を検討中

インドの中央銀行がデジタル通貨の導入を検討していることが、幹部の発言により明らかになった。これまで調査中としていた中央銀行の意向が初めて明確に示された。

同国の中央銀行であるインド準備銀行(Reserve Bank of India)のT Rabi Sankar(T・ラビ・シャンカール)副総裁は、現地時間7月22日に行われた会合で、インドの中央銀行は、同国で外国為替規則とIT法の改正が行われる間に、国のデジタル通貨を「段階的」に導入することを検討していると語った。

国家に裏づけられたデジタル通貨は、経済の現金への依存度を下げ、より低コストでスムーズな国際決済を可能にし、民間の暗号資産の変動性から人々を守ることができると、副総裁は述べている。

「すべてのアイデアはその時を待たなければなりません。そしてCBDC(中央銀行デジタル通貨)の時は近づいています。我々はリスクを慎重に評価してきました」と、シャンカル氏はシンクタンクのVidhi Centre for Legal Policy(ビディ法政策センター)が開催した会合で聴衆に語った。

シャンカル氏は、インドのデジタル通貨が「世界の決済システムで主導的な地位を繰り返し主張できるように、(計画を)前進させることが中央銀行の努めです」と述べた。

このインド中央銀行トップの発言は、欧州中央銀行が7月中旬に、デジタルユーロの創設につながる24カ月の「段階的調査」を開始し、順調に進めば2025年までに導入すると発表したことを受けてのものだ。

また、同時期に中国の中央銀行は、実証実験を行っているデジタル人民元の取引金額が6月末までに345億元(約5870億円)に達したと発表した。

「各国の中央銀行はデジタル通貨への関心を高めています」と、シャンカル氏は語った。「CBDCは、世界のすべてとまではいかなくとも、ほとんどの中央銀行の武器になるでしょう。そのためには、よく調整された微妙なアプローチが、計画段階でも、ステークホルダーとの協議でも、検討されることになるでしょう」と同氏は述べ、インドの中央銀行は「かなり長い間」国家に裏づけられたCBDCを発行することのメリットとリスクを調査してきたと付け加えた。

「私たちは、世界各国の中央銀行が提案している、卸売および小売市場向けの特定目的CBDCについて調査してきました。人口規模の汎用CBDCの起ち上げも検討しており、インド準備銀行は段階的な導入戦略に向けて取り組み、インドの銀行・金融システムにほとんど影響を与えないユースケースを調査しています」と、シャンカル氏は語った。「しかし、近い将来、卸売および小売市場で試験導入を実施する可能性もあります」。

シャンカル氏は発言の中で、インドの中央銀行がBitcoin(ビットコイン)などの民間暗号資産(仮想通貨)に対する立場を変えていないことも示唆した。

2018年、インド政府の委員会はすべての民間の暗号資産の取引を禁止するよう提言し、違反者には最大10年の懲役を提案した。同委員会はまた、不換紙幣のデジタル版とその導入方法を検討するようにも政府に提案した。

当時、インド準備銀行では、この動きは国内の金融システムの「リングフェンシング(隔離)」を抑制するために必要だと述べていた。また、ビットコインをはじめとする暗号資産は、金属でできているわけでもなく、物理的な形で存在しているわけでもなく、政府によって刻印されているわけでもないので、通貨として扱うことはできないとも主張していた。

「それらは本質的な価値を持たないため、コモディティやコモディティに対する請求権ではありません。金に似ているという一部の主張は明らかに日和見的に思われます」と、シャンカル氏は今回の会合で語った。

2018年の中央銀行による通達は、暗号資産を取引するためのサービスを提供している国内のスタートアップや企業に混乱をもたらした。その後、それらのほぼすべてが、廃業したりあるいは他の市場にサービスを提供するために転業した。

この提案に対し、いくつかの取引所やトレーダーは異議を唱え、最高裁に訴訟を起こした。インドの最高裁は2020年、この禁止令が違憲であると判断し、彼らを支持する判決を下した。この判決は「歴史的」と捉えられたものの、まだ政策レベルでは先の通達に影響を与えていない。その間、インドは民間の暗号資産を禁止する法律を導入する計画があることを示唆している。

2021年初めに下院のウェブサイトで公開された議題では「インドにおけるすべての民間の暗号資産を禁止する」が「暗号資産の基礎技術(ブロックチェーン)とその利用を促進するために、一定の例外を認める」ことを求める法案が提出されている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:インド中央銀行デジタル通貨暗号資産

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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