インドの教育系スタートアップByju’sのCEOが将来の買収、新型コロナ影響、海外展開について語る

インドが3月下旬に全土でロックダウンを実施して学校や他の公共スペースを閉鎖して以来、バンガロール拠点のスタートアップByju’s(バイジュース)は世界で2番目に大きなインターネットマーケットであるインドの生徒にとってなくてはならないプラットフォームの1つになった。

Byju’sが生徒4000万人を集めるまでに4年半かかり、ロックダウン以降、Byju’sのユーザーベースは6500万人に膨らんだ。共同創業者でCEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)氏が9月15日、Disrupt 2020カンファレンスで語った。

生徒はByju’sの教え方にひかれる、と話す。自身も教師だったレヴィーンドラン氏は、複雑な数学の問題を教えるのにピザといった現実世界にあるものを使う直感的な方法を考え出した。

同氏のスタートアップの評価額は先週時点で110億ドル(約1兆1600億円)近くで(これによりByju’sはインドで2番目に価値の大きなスタートアップになった)、いくつかの海外マーケットでもサービスを展開している。2019年後半にByju’sは黒字化を達成したことを発表した(未訳記事)。この3つの特徴のうち1つでも持っているインドのスタートアップはそう多くなく、ましてや3つすべてとなるとなおさらだ。

内容が多岐に渡るDisrupt 2020でのインタビューの中で、レヴィーンドラン氏はByju’sのこれまでの道のり(Byju’sは教室や講堂、スタジアムで生徒に教えるオフラインのプラットフォームとして始まった)、海外マーケットでの事業拡大計画、M&Aの機会についての考え、新型コロナウイルスパンデミックがいかに事業やインドの教育分野に影響を及ぼしているかなどについて語った。

「残念ながら、多くの人にとってパンデミックがデジタル学習を試すきっかけになった。保護者は今、オンラインセグメントをこれまでにも増して受け入れている。この部門は明らかに分岐点にある」とレヴィーンドラン氏は話した。

生徒がオンライン学習をより利用しやすいようにするために、Byju’sはパンデミック中、提供するサービスをすべて無料にした。しかし同プラットフォームの有料購読者は今や400万人超となり、着実に成長していると同氏は述べた。

同社は2020年、インドマーケットでの売上高が10億ドル(約1055億円)を超え、純利益は1億5000万〜1億8000万ドル(約158億〜190億円)を予想している。

「相対的に成功といえる。ターゲットオーディエンスとして念頭に置いているのは浸透率で、この分野での我々の浸透率は4%以下だ。学校に通う子供の3分の1以上がスマートフォンを持っていない。この事実に対応するために、やらなければいけないことはたくさんある」と話した。

パンデミックによってインドで引き起こされた別の現象は、エドテックスタートアップ業界における統合だ。Byju’sは生徒にコーディング技術を教える創業18カ月のスタートアップWhiteHat Jr.を3億ドル(約316億円)で買収した(未訳記事)。

Byju’sが他にもいくつかの企業と話し合いを進めていることについては、TechCrunchはすでにレポートした。ここにはインド企業のDoubtnutが含まれる(未訳記事)。同社のアプリでは生徒が数学の問題の写真を撮り、その解き方をステップバイステップで提供する。

M&Aに関してByju’sが語ったことは次の通りだ。「この部門の長期的なポテンシャルはかつてなく高まっている。当社は既存のユーザーベースあるいは新しいマーケットで獲得し得る新規の顧客に強固なプロダクトの構成要素を加えることができる企業を探している。または、新たなマーケット、特に英語が使用されているマーケットにおいてすぐさま事業を展開できるようディストリビューションで貢献してくれる企業が欲しい」。

「今後数社の買収を発表する。数社について真剣に検討している」とも付け加えた。レヴィーンドラン氏は「最も株に価値を置いている」ため、今後の買収はまたも全額現金払いとなる見込みだ。

IPO、資金調達、そして海外展開

Byju’sは少なくとも今後2年は上場を考えていない、とレヴィーンドラン氏は話した。「当社は強固なビジネス基盤を持っている。高成長と持続可能な成長の正しいバランスを見つけることができ、かなりの短期間で非常に収益性の高いモデルを構築した。しかし上場について真剣に考えていない」と述べた。

Byju’sに出資している投資家もまた急いでいないようだ。「一部の初期投資家にエグジットを与えるために上場する必要はない。というのも、事業そのものが十分な現金を生み出すからだ。投資家の大半が過去のラウンドで投資した額の金をすでに手にした」と同氏は語った。

Byju’sは今年、7億ドル(約740億円)超を調達した。レヴィーンドラン氏になぜ資金を調達するのか尋ねた。「調達した主な資本の使い方という点において、当社はかなり資本効率がいい。最初の5年間で主要資本のうち3億5000万ドル(約370億円)に満たない額を使った。これは当社がいかに効率的にモデルを展開してきたかを示している」と述べた。

「最近の資金調達の大半は、完全現金払いの買収のような無機的成長の費用を賄っている。当社はこれを強固なビジネスモデルの追加に使っている。当社は必要だからと資金を調達したことはない。常に適切なパートナーを加えるためだ。直近では、長期的で忍耐強い投資家を追加した」と同氏は話した。Byju’sは現在少なくとも投資会社2社と話し合いを進めていて一連の資金調達の動きはまだ終わっていないようだ。

海外事業の拡大については、レヴィーンドラン氏はいくつかの英語圏マーケットの子供を対象にしたデジタル学習アプリを立ち上げる計画だと述べた。オーストラリアやニュージーランドを含む複数のマーケットの顧客向けにWhiteHat Jr.が数学を提供するとのことだ。

またTechCrunchは、インドにおけるまだ黒字化を達成していない他のスタートアップ大企業についてどのように考えているか、インドのエドテック分野に新規参入の余地はあるか、などについても話を聞いた。完全インタビューは以下のビデオで閲覧できる。

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カテゴリー:EdTech

タグ:Byju’s インド Disrupt 2020

画像クレジット:MANJUNATH KIRAN / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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