インド政府が「不正行為の蔓延」の苦情に対処するためより厳しい電子商取引ルールを提案

インドは現地時間6月21日に提案したeコマースプラットフォーム上のフラッシュセールに対する禁止令により、そのアフィリエイトをセラー(売り手)として掲げることができなくなる。これにより、この南アジア(インド)の市場はルールがより厳しくなり、AmazonやWalmartのFlipkartの、世界で2番目に大きい市場における今後の見通しが危うくなった。

インドの消費者問題・食料・公共配給省が公開したその提案が登場した「今」というタイミングは、実店舗で営業しているインドの小売業者が不平の声を高め、AmazonとFlipkartのこの国における拡張策にともなう操業が公正でない、とする懸念を表明した時期と一致する。

同省は提案の中で、eコマース企業がインドでフラッシュセールを開催することを認めるべきではないとしている。このフラッシュセールは、米国のブラックフライデーやサイバーマンデーのようなもので、インドの祝祭日シーズンに非常に人気がある。フラッシュセールの期間中は、ブランドが商品を大幅に値引きするため、eコマース企業は伝統的に顧客の注文が最も急増する。

「一部のeコマース事業者は、『バック・トゥ・バック』や『フラッシュ』販売に手を染め、消費者の選択を制限している。これは、プラットフォーム上で販売するある販売者が在庫や注文の履行能力を持たず、プラットフォームが管理する別の販売者に『フラッシュまたはバック・トゥー・バック』注文を出すだけのものだ。このような行為は、公平な競争を妨げ、最終的には消費者の選択を制限し、価格を上昇させることになる」と同省は声明で述べている。

またインド政府は最近のITに関するルールで、コンプライアンス最高責任者(CCO)の任命と、1日24時間1週7日の警察との連絡担当を置くことを提案している。もちろんその下にはコンプライアンス担当の社員たちがいて注文のコンプライアンスを確保し、また苦情受付担当部門が、eコマースプラットフォームに対する消費者の苦情に対処しなければならない。

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「これにより、法律および規則の規定の効果的な遵守が確保され、電子商取引事業者の苦情処理メカニズムが強化される」とした上で、新たな提案では、すべてのeコマース事業者に対して「身元確認のため、または施行中の法律に基づく犯罪の防止、発見、調査、起訴のため、あるいはサイバーセキュリティインシデントのため」に、72時間以内に政府機関に情報を提供するよう求めていると同省は述べている。

新たな提案では、AmazonやFlipkartといったeコマース企業が自社 / プライベートブランドを運営することも禁止にする可能性がある。新提案では、eコマース企業に対し、顧客に直接販売する販売業者として、自社のプラットフォーム上に関連当事者や関連当事者を一切掲載しないようにすることを求めている。「eコマースの主体が自ら行うことができないようなことが、関連当事者や関連企業によって行われないようにする」と提案書には書かれている。

インドでは、eコマース企業が在庫を持ったり、商品を直接消費者に販売したりすることは認められていない。これを回避するために、eコマース企業は在庫を保有する現地企業との合弁事業を行っている。

インドの事業に65億ドル(約7200億円)以上を投資しているAmazonは、提案されているポリシーを検討していると述べたが、Walmartが160億ドル(約1兆7700億円)で手に入れたFlipkartからはコメントがない。

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現地時間6月21日の法廷審問において、Flipkartの弁護士は、販売者が製品価格を下げた場合、プラットフォーム上で販売者が商品価格を下げれば料金を下げると提案することには何の問題もないと述べた。

消費者問題・食料・公共配給省は「電子商取引のエコシステムにおいて、不正行為や不公正な取引方法が蔓延しているとの苦情が複数寄せられている」ことを受けて、今回の提案を行い、今後15日間にわたって業界からのフィードバックを求める予定であると述べている。

さらに新たな提案では、eコマース企業に対して、プラットフォーム上の商品を原産国に基づいて識別する仕組みを導入し、「国産品への公平な機会を確保する」ための代替案を出すよう求めている。

この発表とほぼ同時期にFlipkartは、30億ドル(約3300億円)という巨額な調達と上場の検討を進めている。AmazonとFlipkartの両社はまた、インドにおける反トラストの調査の対象になっている。

これはインド政府が近年行った2度目の大規模な修正提案だ。2018年にもインド政府はeコマース企業に対するより厳しいルールを提案し、それが2019年に施行されたときには、AmazonとFlipkartは大急ぎで数十万の商品を彼らの店頭から外し、アフィリエイト企業への投資をさらに間接的にした。

本日の提案の数カ月前には、ロイター通信が企業の文書を引用して、Amazonはインドで少数のセラーを特に優遇し、それらのセラーとの結びつきを不正に表現し、彼らを使ってこの国の外国投資の規則を迂回していると報じた

この時点で、インドの数千万にもおよぶ実店舗の業界団体であるThe Confederation of All India Tradersがインド政府に、インドにおけるAmazonの全面的禁止を陳情した。これとほぼ同時期に、インド商業省はこの問題を検討中だと発表している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドeコマースフラッシュセールAmazonFlipkartWalmart

画像クレジット:NOAH SEELAM/AFP Photo/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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